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異端の勇者に終末を  作者: Edamame
第一章 死せる少年は異世界へ
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第5話 魔物の足跡

「つまり…アシュバルの都の主な産業は、鉱山資源なんですか?」

「あぁ、そうなるね。あまり都市的でないアシュバルがこの国で有名になったのは、この国有数の鉱山を抱えているからなんだ。」


 エートはイスプに、この街『アシュバル』の事について教わっていた。


「人口は少なくて、まだまだ発展してないけどその内ー」


 突如、イスプの話を遮るかのように激しく玄関の戸がノックされる。


「イスプ殿!!イスプ殿!!いらっしゃいますか!?」


 イスプは椅子から腰を上げると、玄関へと向かい、戸を開けた。

声の主は若い兵士の男。どうやらこの街の治安維持隊の一人らしかった。


「なにかな兵士さん?私が何かしたかね?」


 男を少しからかうように言ったが、男はそれどころでは無いような様子だ。


「イスプ殿!!今朝方、何か異常はありませんでしたか!?」

「異常?………いや、特に無かったと思うが?」

「そうですか、どうも!!」


男はそれだけ確認すると、屋敷を飛び出た。


「ちょっとまってくれ、何かあったのかね?」


男は振り返ると、半ば叫ぶように言った。


「ここの近くで……」


「魔物に人が殺されてたんですよ!!」


 イスプは椅子に掛けていた上着を掴むと素早くそれを着る。


「イスプさん?……どうしたんですか?」

「私も、はっきりとはわからないが、近くで魔物が人を殺したらしいんだ」


魔物。この世界の脅威となる生物。


「私は少し様子を確認してくる」

「エート君。君も行くかい?」

「……はい。行きます」


 エートは、少し躊躇ったが、それ以上に自分の知らない異なる存在に対する興味の方が強かった。


「ナターシャ。留守を頼んだ」

「承知いたしました」

「さぁ、エート君。行こうか」



屋敷を出て街道に出ると、人だかりがあった。


「かなり近いな」


イスプの屋敷からは直線距離で100m程だった。


「あぁ、すまない通してくれ」


人だかりの中をイスプが先頭になり進んでいく。


「うっ………」


エートは立ち止まると、口元を押さえた。


「これは酷いな……」


 そこにあったのは、折り重なった3体の異様な屍体。

 屍体は一様に皮膚が溶け、奇妙な粘液に包まれており、個人の表情は勿論のこと、男女の区別さえつかなくなっている。剥き出しの筋肉組織も、非常に脆くなっているらしく、骨が体からはみ出ている。


「魔物は討伐したのか?」

「まだ、見つかってもいねぇらしいぜ」


 周りの野次馬達は屍体の惨状よりも魔物の行方を危惧する。


「エート君。魔物の事は本で読んだかね?」

「………はい……よ…みました…」

「恐らく、この犯人は下等魔生物体だろう」


 下等魔生物体。下等にも関わらず、これ程の惨状を生み出す魔物。


「……イスプさんは…この魔物が何なのか…わかるんですか………?」

「あぁ」


イスプは屍体を見つめながら返事をした。


「エート君」

「一旦、家に戻ろう」



屋敷に戻ると、イスプは分厚い本を机に持ってきた。

本には、[魔生物体種別記録]と記されている。

イスプはあるページを開いた。


「………こいつだな」

「エート君。これを見てくれ」


 そこには、"粘生蟲(スライム)"という魔物について書かれていた。

 粘生蟲(スライム)は下等魔生物体に属する魔物で、アメーバのような原生生物に似た挿絵がエートの目を引いた。


「このスライムという魔物は、体組織が強力な消化液で、触れた物を何でも分解するんだ」


 皮膚の溶けた3体の屍体。彼らはスライムに分解され、栄養素の脱け殻と成り果てたのだ。


「こいつは、下等魔生物体の中でも特に厄介な部類でね、多分。討伐も駆逐も困難になるだろうね」


イスプは目元を少しだけしかめる。


「スライムには、知性はあるのですか?」

「いい質問だ、エート君」


 イスプはページを捲ると、矢印のついたスライム図を指さしながら説明した。


「こいつらは、大きさによって知性を増すんだ。」

「栄養を確保し、大きくなれば大きくなるほど知性を増していく」

「……そんな生物がいるなんて……」


 体長に比例して知性を獲得する生物。少なくとも通常の生物では考えられない特性。


「まだ驚くのは早いぞ」


イスプは先程の下の解説を見ながら言う。


「こいつらはある程度の大きさになると増殖するんだ」

「増殖?」

「あぁ。大体、人の子供並の大きさになると、半分ずつにわかれる」


 分裂する大型捕食生物。このスライムという魔物は、元の世界では間違いなく最強の生物だろう………もう一度言う。元の世界では。


「今回は最低でも3人喰ってるから、あと5人ぐらい喰わないかぎりは増殖しないだろうね」


 エートはイスプが説明した奇異な生物について思考を巡らした。

 この生物…スライムは、強力な消化液の影響で物理的な攻撃はほとんど効かないだろう。

その上、下手に攻撃するとそれを消化し、養分として吸収される恐れもある。

……全くもって恐ろしい性質を持つ生物だ。

が、エートには考えがあった。


 まず、スライムの体組織。

 スライムの体組織はあらゆる物を消化する強力な物質。

 だが、逆に言えば、消化液の盾を失ってしまえば、ただの貧弱な原生生物に過ぎない。

もう一つは、増殖方法。

 情報によればスライムの繁殖方法は半分にわかれることによる増殖。すなわち分裂。これに近い繁殖形態をとる生物は、単細胞生物。

単細胞生物は、染色体のデオキシリボ核酸に基づき分裂する。

つまり、分裂するスライムにも、(コア)がある可能性が高い。

 核を失った細胞は、ほとんどの場合は死滅する。

スライムも、恐らくは。


「……イスプさん」

「ん?どうした?」

「何か…瓶を貸していただけますか?」

「瓶?何に使うんだい?」


 遺体に関係するため少々気が引けるが、致し方あるまい。


「思いついたんです」


「この魔物を殺す方法を」

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