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新任先生と わたし

作者: 桜田桂馬

色白の若い男性教師は、私たち女子生徒の前で新任の挨拶をしはじめた。


『この9月より、君達三年生の生物を担当します。

名前は今井志朗。出身は大阪八尾市。

趣味は読書とソーシャルダンス・・・』


ここまで言い終わると、新任先生は急に話が続かなくなり、顔色が変わった。

首から上が真っ赤になっている。


『・・・君たち・・・暑いのは分かるが、態度は良くない・・・』


『やめなさい・・・大人をからかうのは・・・』


先生は明らかに動揺している。

黒板ばかり見て、生徒の私たちを見ようとしない。


わたしは、教科書で顔を隠した横から先生を覗きながら小声でこう言った。

「先生は暑いから可哀想、もっと風を送ろうよ、みんな!」


クラスの最前列からパタパタとスカートの音がする。

二列目からも、三列目からも。

示し合わせた筋書き通りだった。


次々とその音が大きくなっていく。

パタパタ パタパタ ・・・・ ・・・・

大胆に足を開いた者、ほとんど開かない者、下着がちらちらする。


 

先生は気を取り直し、教室の一番後ろの掲示板に目をやり、こう言った。


『(ならぬ堪忍、するが堪忍)・・・

 起立!!全員!立てぇー!!』


わたしたちは、先生の気合いに驚き、全員立ち上がってしまった。



シーンと静まり返る教室。



『着席!!!』


先生の鋭い声が教室に響く。

みんなあっけにとられストンと椅子に座る。



『誰だね、この首謀者は?』


先生はくぐもった声色に変わり、ゆっくりした口調で言った。

先ほどと打って変わった低い声が

俯いて押し黙る生徒の頭から降り注ぐ。


『心当たりの者は、後で職員室に来なさい』






『はい!立ってください!』


突然の お願い口調の言葉。


しかもさっきと異なり軽い明るい声で。

気が抜けた私たちは全員立ち上がってしまった。


先生は生徒を見まわす。


わたしのところで一瞬視線が止まった気がした。

わたしは本を胸元に押さえつけている。



先生は、丁寧に生徒に一礼し、こう言った。

『もう、わかりました。職員室に来なくてよろしい。


歓迎してくれて、ありがとう!


この9月より、君達三年生の生物を担当します。

名前は今井志朗

出身は大阪八尾市

趣味は読書とソーシャルダンス


・・・それに、心理学』

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