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6話 部屋で

 コンコン


「おい、タク。入るぞ」

「ん? 百鬼なきりか。開いてるぞ」

「おう。邪魔するぜ」



 時刻は夕方の6時。まだまだ明るいが気温からして日本に似ているんだろうなぁ……とかタクが考えていたらそこに修兵が湧いた。



「あと少しでさっき言ってた夕食会が始まるらしいぜ」

「そうか」

「……なあ、お前は何のために殺し屋なんてやっていたんだ?」

「唐突だな」

「こんな時でもないと聞けそうにないからな」

「ふむ……まあ、あれだ。俺は生まれる前からそういう運命だった、と言うしかないな」



 そう言うタクの顔は相変わらずの無表情ではあるが、修兵はどことなく寂しさと怒りが含まれているように感じた。タクも修兵が気付いたことに気付いているが、無視して続ける。



「大前提として、俺は純粋な人間ではない。いや、一応は人間の遺伝子が元となっているから種族的には人間なのかもしれないが」

「……どういうことだ? というかお前は本当に日本で生まれたのか?」

「後者に関してはイエスだ。前者の質問に関しては詳しくは教えられない。1つだけ言えるのは、どこにでも外道はいるってことだな」



 そこまで聞いた……否、聞いてしまった修兵は何も言うことが出来なくなってしまった。正直に言うと、そこまで重い話ではないと、精々が大切な人が死んだから程度だと、そう高をくくっていた。

 それならばそれは間違いだとハッキリ言うことができた。修兵もそういうクチだからだ。だが生まれる前からというフレーズを聞いた時点で自分よりも深い闇を抱えていることは直感で分かっていた。

 それでもこれは想定外すぎる、と内心では呻いているのだがタクはそれを見抜いてなお気にしない。



「まあ、そこらへんの事情もあって異世界とかいう突飛な事態でも、動揺とかは最小限に留められているんだけどな」

「……軽率に聞いて、悪かった」

「うん? 別に気にしてない。むしろこれを聞いてしまった百鬼の方が心配だな。日本に帰れたとしても命を狙われるかもしれない」

「……マジか」



 かなり曖昧な情報しか聞いていないのに死の危険が伴うってどういうことだと、げんなりしてしまう百鬼。後悔はしていないが、もっと上手くやればよかったと思ってしまうのは仕方ない。



「そろそろ始まるだろうし行くか?」

「ああ、そうだな……」




~~~~~~~~~~




「料理……昼も思ったけど微妙だったな……」



 夕食会も終わり、風呂にも入った後の時間。ちなみに昼食は部屋で1人寂しく(タクは微塵もそんな風に思ってはいないが)済ませた。

 この世界の食文化は微妙、の一言だ。パンは酵母が合っていないのか何なのか、灰色でボソッとした柔らかいものだし、肉は熟成の概念が存在しないのか微妙だった。

 そう言えば夕食会で王族が自己紹介をしていた。王の名はアルファル=C=アウスレーゼだ。女王は体調が優れなかったらしく、夕食会には出席していなかった。


 コンコン


 と、何はともあれ食事改革をするべきか? と真剣に悩んでいたら誰かが訪ねてきた。時刻は大体21時だ。こんな時間に誰だよ…と思いつつもドアを開けるとそこには――



「こんばんは、タク様」



 ――何故かウルがいた。それも寝間着姿で、湯上りなのかどことなくホカホカしている。



「……何しに来たんだ」

「つれませんね。ですが、これはタク様にとってかなり重要な話なのです。どうか聞いてくれませんか?」

「…わかった。入れ」



 仕方ない、と言わんばかりの態度で招き入れるタク。それに思わず苦笑しつつも部屋に入るウル。その手には水晶玉っぽい何かを持っている。



「それで? 俺にとって重要な話ってなんだ?」

「それはですね――」



 そこからしばらく語られる、タクにとって都合の悪い数々の情報。それでもタクの無表情は相変わらず。何故なら、最初に百鬼を吹っ飛ばしたときから分かっていたことだが、自分を見る奴らが全員不思議そうな目だったからだ。むしろここで聞いて納得できたと言える。


 こうして腹に一物抱えた夜の会話は終わり、ウルは部屋から出て行った。その手に水晶玉はなかった――




~~~~~~~~~~




 翌朝。起きてすぐに勇者全員が王からすぐに来てほしいと言われ、王の私室に集まっていた。



「何かあったのか?」

「さあ? オレに聞かれてもな」

「なんか騎士達が騒がしかったわよ?」

「それだけでは何も分かりませんわ」

「でも、呼ばれた理由と繋がっていると思いますよ?」

「俺もそう思う」



 そうしている間にも王は、忙しく出入りしている騎士達から報告を聞いては地図のようなものに印を付けている。どうやらそれは城内の間取り図のようだ。

 そこから2時間ほど経ち、いい加減勇者達も焦れてきた頃。



「陛下! 見つかりました!」

「なんだと! どこにあった!?」

「それが、その……」

「どうした? 早く言え」



 騎士の1人が何かを見つけたようだ。だがタクをチラチラと見るだけでその先を言おうとしない。王もその視線に気付いて、タクを見る。



「どういうことだ? 早く先を言え!」

「はっ! 勇者であられるクツキ・タチバナ様の部屋にて発見しました!」



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