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5話 魔力操作

「さて、まずは魔力の扱いですね。皆さん、手を出してください」



 場所は変わって城の中庭。そこに勇者5人とウル、それに何人かの騎士と魔法使いっぽい人間が集まっていた。



「……これが魔力というものです。わかりますか?」

「気とは違うのか……」

「「「「………………はぁ……」」」」

「なんで息ピッタリになってんだよ?」



 ウルが手渡してきた不思議な光。それが魔力というものらしく、頑張って操作出来るようにしようと思っていた矢先にタクのセリフである。極々普通に“気”とか言っているが、それって魔力より難しくないのか? と思ったのが約4名いたのは仕方ない。

 因みに王国側は“気”の存在すら知らない。



「で、これをどうすればいいんだ?」

「あ、はい。その光をこのように……体の各所に移動させてみてください」



 動かせとか言われてもただの光をどうやって動かすんだよと、修兵がそう言おうとした瞬間、



「これは……キツイな……! 精神を直接削られている気分だ」



 タクが苦戦しながらも光を動かし始めた。これにはウル含め、王国サイドの人間が驚愕して、後の世までタクが語り継がれていく発端になったのだが今は関係ないか。タク達は知る由もないが、この光を移動させるという訓練法は上級者が行うものなのだ。それをあっさりとクリアしてしまうタクもタクだが、何を急いでいるのか、これをやらせる王家も王家だった。

 しかし、いくらツラそうにやっているとはいえ、周囲から見れば簡単にやってしまったように見えなくもないタクに、異議申し立てしたい人物もいた。もちろん他の勇者たちだ。



「なんで出来るんだよ!」

「おかしいですわ! 貴方何者なんですの!?」

「はぁ…うるさい…はぁ……ダメだ、今はこれくらいが限界だな……」



 が、タクは全く取り合わない。それどころか――



「…これからの予定ってあるのか?」

「え、あ、はい。夕食会がありますが、他は特にありませんね。強いて言えばこの訓練でしょうか」

「じゃあどこか休める場所はあるか?」

「? 勇者様たちには個室が用意されているのでそこなら休めるかと……」

「なら案内してくれ。もう動きたくないくらいに疲れた」



 ――騎士に案内されて、非常に重い足取りで中庭から出て行ってしまった。



「魔力ってそんなに疲れるものなのかしら?」

「わかりませんね。ですが、ああ見えて並々ならぬ集中力を必要とするのかもしれません」

「ああ……確かにそれなら納得できるかも。タクって言動(表面)と思考(内面)が全く違う気がするのよね」

「まあ、気とか言われると一概にどうとは言えませんけどね」



 そう言ってお互いに苦笑する樹と黒羽。中々に鋭いことを言っている。実を言うと、あの魔力操作は素人がやった場合、気絶するほどの精神的疲労が襲い掛かるのだ。それに疲れただけで耐えきるタクもおかしいのだが。




~~~~~~~~~~




「ふぅ…あの王女は面倒だな。間違っても近づきたくない」



 タクは宛がわれた部屋で1人、ぼやいていた。部屋は10畳ほどで簡素でありながら品のある家具が置かれている。だが時代が違うために、布関係は全てごわごわしているし、あると便利な家電の類もあるわけがない。



「にしても魔力か……気配とは別に隠さなくちゃいけないな……」



 こっちも面倒だ。そう呟きながらこれからのことについて考える。



(思えば俺ってかなり手遅れな存在だよな。異世界なんて非常識なことに巻き込まれているのに結構すぐに適応したし……それもこれも俺自身・・・が原因なのはわかっているが……。

 それより、急務なのが銃弾の作成だ。マガジン1本12発入りで、これが10本ある。だけどあの仕事で計41発使って、王女への牽制に1発使った。もともと銃に入っていた12発を合わせて計算しても残りは90発しかない。この世界にどういう脅威があるのかは知らないが、些か心許ない数だ。

 それにメンテナンスもしないといけないのだから銃に頼りすぎるのは危ない、か。せめて弾が安定して供給できるまでは出来る限り使用を避けるしかないな。

 だとすると……まあ大体の武器は使えるからそっちは気にしなくてもいい。だが魔法のある世界で効果的な魔法が使えないのはかなりネックだな。もうそこは諦めて物理で殴ろう)



 最後の思考から分かるかと思うが、タクは俗に言うオタク知識も持っている。というのもタクは職業柄、色々な場所へ潜入しなくてはならなかったのだが、そのために普通の16歳ではありえない量の知識と経験をその身に詰め込んでいる。主に金持ちに受けの良い音楽関係・調理・美術系が多いのは事実だ……が、ある標的が日本のアニメにご執心という変なヤツだったので、そこからは定期的にそういう知識も集めている。だから自分の格好が中二病と言われるものだということも自覚している。が、それを気にするほど薄い皮を被ってはいない。



(ハッキリ言って王国の支援とかあまり受けたくないんだよな……余計なしがらみが増えるだけにしか感じない。いっそのこと逃げるか? 最初からそれも1つの手段として考えていたが、本格的に実行する必要があるかもしれないな。

 だけどそれにも問題が山積みなんだよ……まず第一に俺はこの世界の情勢に詳しくない。というかどんな国があって、そこにどんな特徴があるのかすら知らないからな……。

 そもそもこの国のことを知らないという体たらく。これじゃあ操り人形にされても文句が言えないぞ。あの王女のことだ、それぐらいはお手の物だろう。

 あの4人は……俺には関係ないか。王女相手じゃ使えないし、あんな素人を連れて逃げ出せるほど王国もバカではないだろう。

 なら、今日の夜にでもここを出ないとマズイな。王女だって意のままに操れない俺を排除しようと動くはずだし……だけどこの世界で勇者がどういう扱いを受けるのか、それ以前に民間に認知されているのかが気になるが……)



 タクはやはり面倒だ…と呟き、魔力操作の練習をするのであった。

 どうでもいいが恐ろしくタフな奴である。




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