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3話 謁見

 所変わらず、王城の廊下。



「というかあれか? ここにいるのは全員学生なのか? 因みに俺は16歳だぞ」



 そう話しながらタクはおもむろに腰から拳銃を抜き出した。日本人組がタクの年齢を聞いてギョッとして、タクが取り出した物を見てさらにギョッとした。



「ちょっ!? 貴方それって!」

「てかお前年下だったのかよ!!」

「へぇ……タクって年下だったんだ」

「そ、そこじゃないでしょう? タクさん、それは一体?」

「ん? 見ての通り拳銃だが?」

「……何故、そんなものを持っているのですか?」

「そりゃ俺の仕事に必要なものだからな。簡単に言えば仕事道具だ」



 その言葉を受けて微妙な顔をする4人。拳銃が必要な仕事など警察関係か非合法な組織しかないのだから当然だ。しかも公務員は年齢が決まっているために、自然とタクは非合法の仕事をしていたことになる。

 しかしまだ少ししか話してはいないものの、タクが危険な存在でないことはわかっているし、仲間はこの5人しかいないのでタク1人が抜けるのも勘弁願いたいところなのだ。

 それにそもそも4人を繋げたのが形はどうあれタクであり、この状況でパニックを起こさずに平常でいられるのも、登場の仕方が強烈過ぎて塗り替えられた感が強い。つまりこの4人はタクに多かれ少なかれ感謝していた。



「……どのような仕事か聞いても?」

「殺し屋だよ。暗殺専門のな」

「「「「………………」」」」



 あっさりと答えるタクにやはり微妙な表情の4人。嫌悪感がないわけではないのだが、先の理由があるために糾弾するとかはちょっと憚られる。それに根本的な部分で、そうしないと生きていけなかった、とか言われると困るのは4人なのだ。

 因みに、何故タクが拳銃を取り出したのかというと、単に使った分の弾の補充を忘れていたことを今思い出したからに過ぎない。タクとしては、この4人と仲違いしても別段困ることなどないからだ。



「まあ、人殺しを嫌悪するのは十分に理解している。でもな――」



 そこで一度切り、周囲の……それこそ案内している騎士や神官たちの視線まで集めてから言葉を放つ。



「――人殺し以上の屑なんて世界にはいくらでもいるからな?」



 その言葉に含まれた重みに、そしてなによりタクの目を見て、全員が押し黙る。

 タクの瞳には、冷たい焔が揺らめいていた。普段の無感情な部分から考えると驚くほど自分を表に出していると言えるだろう。

 微妙に雰囲気が暗くなってしまった一行だが、そんなことに関係なく謁見の間へと進んで行き、とうとう無駄にデカく無駄に豪華な扉の前に着いた。



「この扉の先にはこの国の重鎮たちが揃っている。いくら勇者と言えどもあまり失礼なことはしない方がいいぞ」

「それを言うなら服装とかはどうなんだ?」



 騎士の1人が親切にもそう忠告してくれるが、タクがバッサリと切り捨てる。それもそのはずで、タクは夜戦用の黒装束だし樹は私服で、他はただの学生服だ。これが失礼じゃないのなら何が失礼に当たるのか分からない。



「いや、勇者たちに限るが、それが正装という扱いになるらしいぞ? 俺が見る限りでもかなり上質な服のようだしな」

「……そうか。それならいい」



 今の一言でこの世界の、最低でも服に関する技術は低いということを理解し、内心でウンザリするタク。たしかに制服は結構いい値段するし、タクや樹だってかなりいいものを着ている。だが正装に匹敵するかと言われれば微妙なところだろう。制服は使えなくもないが。



「さて、心の準備はいいか? ……勇者一行、到着しました!」



 騎士が大声で扉の向こうに伝えると、扉が音もなくゆっくりと開いていく。そこはやはりというか、そこまで金をつぎ込む必要があるのか? と聞きたくなるほどに豪華絢爛な空間だった。実際にタクは呆れた雰囲気を出している。表情は変わっていないのに器用なものだ。



「よく来てくれたな、勇者たちよ」

「え? 来なくてもよかったのか?」

「「「「………………」」」」



 微妙な沈黙が謁見の間を襲う。



「い、いや…そういうわけでは――」

「――俺ってさ、無駄が嫌いなんだよね。だから様式美とか、歴史とか、そういうのを持ち出されるのが凄く……ウザい」

「ハッキリ言いますわね!?」

「西園寺のツッコミもキレがいいな」

「余計なお世話ですわ!!」



 なんとも気の抜ける会話に日本人組から緊張感が消え去る。そこで初めて自分たちが緊張していたことに気付き、またタクに感謝しなければ、と内心で思っていたのはここだけの話だ。


 こうして、普通はガッチガチの固い謁見がとても緩い空気で始まるのであった。



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