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崑崙山への軌跡1

「洵玲、己が進むべき道を定めよ」


かつてこの東源郷の地にて戦が巻き起こった。

それは東源郷に存在する五国の一つ。金の『みょう』が巻き起こした五国大戦。


東源郷の世界には五行思想という絶対に欠かせない概念が存在していた。

それは万物の全てに宿る元素であり、根幹を織り成す要素。


木・火・土・金・水の五つの元素はお互いに影響を与え合うことにより

繁栄と同時に生者必衰の理、移ろい変化し循環していく、永久機関の世界を作り上げていた。

そして東源郷に存在する五つの国はそれぞれその五行思想に則た属性を宿し国同士における循環のシステムを作り上げていた。

だがそれゆえに五国の一つ、五行思想の一つが欠けることによって力の均衡が大きく崩れるという事態も存在した。


そして、それこそが五行思想の一つ、金の明が大戦を巻き起こした切っ掛けであると当時の人々は語った。

本来、金の明を抑えるべき役割を担う火の大国『ほう

そこに存在する帝が空白のままであり五行の一角を担うべき力を損なっていた為に

五行思想に存在する理の一つ『相剋』という相手を討ち滅ぼし天敵を担う国の空白に付け込み

金の明を統べる帝・太帝が五国統一のために戦に乗り出したとされる。

これが五国大戦と呼ばれるもの。


だが、正確にはそれは誤りであった。

明の帝である太帝が巻き起こした戦乱。それは五国統一のためでも五行思想という理そのものをなくそうとしたものでもない。

それは太古の戦乱。遥か古において勃発した開闢と無極の戦い。

その再来を防ごうとした当時の五帝の生き残りとして決断であった。


人々の間において突如として生まれる人ならざる力を有した人外の存在の誕生。

そしてそれら全て例外なく悪徳の塊のような悪逆非道の限りを尽くし、五国を統べる五帝にすら匹敵するほどの力の持ち主。

太帝のみはこの存在の目覚めに誰よりもいち早く気づいていた。

それこそが魔星と呼ばれし存在。

彼らは人の中に存在し、ある日突如として目覚める。

そして、彼らの目覚めはその神々でもある五人の伏魔の復活にすら繋がる。


かつての大戦において自分達は完全なる敗北を喫した。

彼ら伏魔と魔星が眠りについたのは偶然と奇跡が重なっただけ、いやあるいは自分たちが滅びるまでの時間、猶予を与えただけなのかもしれない。

ゆえに太帝が取った行動とはまさに修羅と呼ぶべき苦肉の策。

もう一度、彼ら魔星と伏魔に封印を施し、人の世が存続する未来を勝ちとること。


『太白封神』

それは東源郷の神々が扱うとされる宝具パオペエの中で最高位のランク『零式宝具』と呼ばれる宝具パオペエの一つ。

それは神を別次元に封印するほど強力な宝具であり、だがそれゆえにこの宝具を起動させるためには

ある条件を満たさなければならなかった。

それこそが大量の人の魂によって、神々を繋ぎ止めるというもの。

ゆえに太帝が取った行動とはまさしく修羅と呼ぶべき苦肉の策。

五国統一という旗印を掲げ、五国大戦を巻き起こし、その戦いで犠牲となった者達の魂を回収し

全ての伏魔・魔星達を封印するということ。

人の世を存続させるために人々を犠牲にするという矛盾。

その事に無論、太帝も気づいていた。だが、伏魔と魔星が復活を果たせば東源郷のみならず

全ての宇宙、森羅万象の世界全てが完全なる無へと帰する。

そこにあるのは再生のため無ではなく、文字通り永遠の無。

太帝は最後には自らの命を持って伏魔の封印を成し遂げようとする決意すら固め五国大戦を巻き起こした。


そして、当時そんな太帝の心情を全て知り理解し、付き従った明の四征将軍の一人“征前将軍”黄洵玲こうじゅんれいは太帝の意志に従い戦いを繰り広げながら、心のどこかで別の道を探し求めていた。

そんな彼に対してある日、太帝が言った言葉が己が道を定めよ、というものであった。


本当は洵玲じゅんれいにも分かっていた。

自分が進むべき道、進みたい道が何であったのか。

それは人を犠牲にすることなく、蘇った伏魔と魔星全てを討ち滅ぼす事。


だが、その道を決断出来るほど彼は強くも愚直でもなかった。

自分ではまるで手に届かない領域に存在する太帝様。

その太帝様と同じ五帝、そして、それを率いる三神全てが集ってもない勝利にすら届かなかった

規格外の存在にどうして自分ごときが挑めるだろうか。

戦いという土俵にすら上がることすら出来ぬ存在に抗う術など洵玲は持ち合わせてはいない。


付け加えておくが、彼は決して弱者などではない。

むしろ人という存在においては得難いほどの才能と能力、実力を兼ね備えた文字通り一騎当千の将である。

だが、それでも人という範疇を遥かに越える魔星には程遠い。

それを自覚出来るほどに洵玲は冷静な判断を下せる人物でもあった。

そんな洵玲に取って先の五国大戦におけるある出会いは彼のそれまでの考えを覆すものであった。


「この世界で俺が欲しいと思う全てを手に入れる。邪魔はさせねぇ、奪わせねぇ。それが……“誰であろうと”だ」


それはただひとり、人神であった帝・太帝に挑み勝利した一人の男が吐いた台詞。

彼もまた人ではない存在。この世に蘇った魔星、そのひとりであった。


彼の名はフェイ。天雄星の称号を冠する天星に位置する魔星。

だが復活したての彼は魔星としての記憶と力を失い、その状態で人の中で生きていた。

そうして人と交わり、人と共に生きる内に自らが欲しいと思ったものを純粋に手にし、それを自らの所有物として独占する感情を思い出す。

それはある意味で一つの悪徳の感情であったのだろうが、それでも自らが欲しいと願った所有物を独占すること、そしてそれを奪われることに対しては己が全力を持ってそれを排除する。

たとえそれが同じ魔星であろうとも、自らの神である伏魔が相手であっても、そうであった。


洵玲は自らが選択できなかったその道を、本来敵であるはずのその男がその選択を成し得たのを見て確信に至る。

これこそが自分達が選ぶべき道であったのだと。

たとえ勝てる見込みはゼロであろうとも、挑まなければ何も進みはしない、と。


五国大戦の終結。

太帝が敗れ去ると同時に各地に封印されていた伏魔と魔星が復活を果たす。

だがそれまでの太帝による太白封神による封印により『無極』の桓因ファニン を始め

『無限』の蚩尤シユウも再封印を施し、更には魔星達の生みの親である『混沌』の理を有する渾沌コントンですら、太帝がその命と引き換えに力の大半を封印することに成功した。


それは僅かな奇跡ではあったが、まだ人類側にも残された道と希望が存在していた。

そして今、蘇った百八の魔星達を前に人類側の希望を掛けたかつてない戦いが始まろうとしていた。

これはその希望を生み出し、育てるため、新たな道を選択した亡き太帝の三人の将軍達の物語。

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