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1、ネオ時代小説とそれを取り巻く状況

 ネオ時代小説。

 最近、この言葉を小耳に挟んだ方も多いのではないでしょうか。時代小説・歴史小説の世界において起こっているとされる一大潮流ですね。直接的には和田竜(敬称略、これから名前の出る方は皆名前に敬称をつけませんのでご了承ください)の『のぼうの城』の大ヒットによって認知された、キャラクターの造形やプロットを現代的な感覚に近づけた歴史・時代小説群のことです。他にも、天野澄希や富樫倫太郎といった歴史小説家や、最近では冲方丁や万城目学、三谷幸喜などの他分野からの参入によって盛り上がりを見せている(とされている)分野です。

 さて、最初に旗幟を鮮明にさせておきますが、筆者、この「ネオ時代小説」という動きはどんどん推進されていくべきものだと思っています。

 が、この動きに反発する動きも結構あります。ある有名な歴史小説の先生などは、「今年の抱負はなんですか」と聞かれて「え、ネオ時代小説を軒並みぶっ潰すことだけど?」と笑顔で答えたという逸話もあります。また、ライターさんや書評家の中にもネオ時代小説に疑問を呈する人がいます。なんといいますか、歴史小説、時代小説の世界にあっては、「歴史小説ってえのはな」とか、「時代小説っていうのはこうあるべきなんだよ」という意見が結構見受けられるのです。

 まあ、確かに歴史小説や時代小説というのは現代小説とは異なり、かつてあった事実を書く小説です。なので、普通の小説とは違う面が多々あります。

 それが証拠に、大抵、ネオ時代小説に疑問を呈する方の御意見をまとめると、


①ネオ時代小説は歴史的事実を無視しがちだからあかん

②ネオ時代小説は歴史学の成果をまるで取り入れないからあかん

③ネオ時代小説は『当時の人々の心』を書かないからあかん


 と、一般文芸とはちょっとポイントの違う批評が載っていたりします。

 でもなあ、と筆者は思うのですよね。

 歴史小説にしろ、時代小説にしろ、あくまで小説なんですけど、と。

 それにですね、これらのネオ時代小説をディスるご意見って、今まで日本で書かれてきた歴史小説、時代小説にも当てはまることだよなあ、としか思えないのですよ。ありていな思いを言えば、ネオ時代小説をディスってる人たちって、そもそも歴史小説とか時代小説のことを知らないんじゃないか? とか思っちゃうわけです。

 というわけで、今回は、ネオ時代小説をディスる皆様への反論という切り口から、歴史小説、時代小説とはなんなのか、というメタァな話に突っ込んでいく企画となっております。よろしければお付き合い下さい。


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