好きなのは君だけ
「隼人はさ、サッカー選手になりたいんだよね?」
「なんだよ唐突に……。それよりも九条に」
「やっぱりサッカーの知識のある彼女の方がうれしいんじゃないの?」
「……それ、九条が言ってたのか」
隼人は深く溜息を吐いた。それと同時に瞳が鋭くなる。
「あのな、俺は別に詩織に手伝ってもらって夢を叶えたいなんて思ってない。
別に手伝ってくれるならそれはそれで嬉しいけどさ、
詩織には詩織の思う様にして欲しいから……そんな事気にすんな!」
「ホントに、いいの?」
「そんなに俺の言葉が信用できないのかよ?」
「そんなつもりじゃ……」
少しだけ強くなる隼人の語尾に私は曖昧な否定を返す。
隼人が信用できないなんて事じゃない。でも、何か一つでも私よりすずらんちゃんの方が魅力的だと思うような要素があって欲しくないのも事実。
「本当の事言ってね、隼人」
「ん?」
「自分の趣味をきちんと理解してくれる彼女と自分の趣味に興味を示してくれない彼女、どっちが良い?」
隼人が望むのなら私は死に物狂いでサッカーの勉強をする。せめてすずらんちゃんに劣らないくらいには。
「詩織……お前なぁ」
隼人のグレーの瞳が揺れた。
グッと力を込めて右手を掴まれる。
「隼人?」
「詩織は、俺の事を理解してくれない彼女なんかじゃない。ちゃんと考えてくれてるだろ、こんな風に今だって」
無意識なんだと思う。私の腕を掴む力よりが強くなる。
「俺は彼女が欲しくて詩織に告白したわけじゃない。ただ詩織が好きだったからなんだよ」




