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いちさんの話

「実は僕、幽霊やテレパシー等の研究をしているんです」

 いちさんを含め、私達四人は1つのテーブルを囲むように座り直した。私の横に昴君。向かいにはいちさん、その隣に怜治さん。

「だから、本物の幽霊である詩織に会ってみたかったんです!」

 紅潮させた頬に手を当て、溜息を吐くその姿は古い映画に出てくる未亡人の様に色っぽかった。それだけに話している内容のマニアックさが残念だ。

「でも、私そんなに普通の人と変わりませんよ……」

「何を言うんですか!」

 想像だにしなかった大声に、私はビクッと身を震わせた。隣で昴君も耳を塞いでいる。

「痛みを感じない、血も出ない。それのどこが普通の人間ですか!」

「うるさいよ。少し落ち着いたら?」

 いちさんは椅子に座り直すと、自らの熱を放出するかのようにゆっくりと息を吐いた。

「すみません、興奮して取り乱してしまいました。――幽霊について僕が知る限りの事を話しましょう。まず、詩織さんがそうであるように、痛みを感じなかったり、怪我をしないということは幽霊にはよくあることです」

 真剣な眼差しを向けられ、私は一瞬呼吸をするのを忘れた。昴君も怜治さんも、

真面目ないちさんの説明を黙ってい聞いている。時計のアナログ音がやけに大きく感じる。

「しかし、幽霊でも怪我をしたりすることもあります。それは幽霊として最も避けなければならない、恐ろしいことが原因です。――そう言えば」

 いちさんは目の前にあるコーヒーの入った器に視線を落とした。

「なんですか?」

「詩織さんはどうして自分がこの世に戻って来て、こうして一人の人間であるかのように生活しているのか、考えた事はありますか?」

「え――」

 考えたこともなかった。自分が今ここに居る理由。

 私の思考に予想が付いたらしいいちさんは、お得意のククッとのどを鳴らす笑い方で笑った。

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