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詩織

 赤い髪の彼とは思ったよりもすぐに再会した。

 昼休み後のすぐの授業の開始チャイムが鳴った時だった。

 ざわめきの中、教室のドアが開いた。数人の生徒が気付いたようで、扉の方を見る。とは言っても生徒達は先生が入って来たと思って見たのだろうけど。

 入って来た人物こそが昼休みに屋上で出会った彼だった。

 とても目立つ髪色。堂々とした立ち振る舞い。私の目を引くには十分すぎた。

 スタスタと近くまで歩いてきたと思ったら、なんと、彼は私の隣の席についた。その席は朝から空いている席だった。

 当たり前だが、こんなに目立つ彼が隣に居て気付かないわけがない。

「……うちのクラスだったんだな」

「はい。今日、転校してきて……。貴方こそ同じクラスだったんですね」

「そうみたいだな。そういやお前、名前は?」

「え――?」

 おかしい。さっき彼は私の名前を言っていたはずなのに。

 ともあれ正式に自己紹介をした覚えはない。何かの勘違いだったのかと思い直し、

「……西園寺、詩織です」

 と小さな声で言った。

 とりあえず、今日この学校で自己紹介した時の名前を名乗る。すると、彼は屋上で見た時と同じ表情になった。

「詩織……? 嘘だろ……」

 嘘とは失礼な。しかし、そんな軽口をたたく気にはなれない。

 切なくそうで、寂しそうで、悲しそうな、穏やかな負の感情をない交ぜにしたような彼の顔を見ていられなくなって、思わず抱きしめたくなった。

 しかし、教室。

 やっとの事でその衝動を抑えて、軽く肩をポンッポンッと叩いた。

 私の行動に少し驚いたらしく、ピクッと小さく肩を震わした。

「どうかした?」

「い、いや、何でもない。知り合いと同じ名前だったからびっくりしただけだ」

「詩織って名前の人は結構いると思いますけど?」

「……それだけなら、な」

 彼は無理に笑った。

 きっと私が心配そうに見ていたせいだろう。

「そいつ、顔もお前にそっくりなんだ」

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