通学路
それから二週間が過ぎた朝、今日は珍しく朝食を作っていない。今日から昴君と同じ高校に通うことになったので、朝食は怜治さんが作ってくれているのだ。
制服に着替えて鏡の前に立ち、クルリと一回まわってみる。制服は特にダサいわけでも、可愛いわけでもない。けれど、念入りにチェックした。いつまで居られるかわからないけど、第一印象は良く見せたい。
昴君と怜治さんと共に朝食をすまし、家を出ると冷たい風が頬を撫でた。流石にもう十一月だ。いつの間にか、洋服を二枚三枚着るのが当たり前になっていた。
真新しい制服のせいか、目に入る物全てが新鮮に感じて、ついついよそ見をしてしまう。
「ねぇ」
前を歩いていた昴君が振り返って声を掛けてきた。昴君の方を見ようと顔を上げると、目の前にあった電柱に思いきりぶつかってしまった。
「危ないよ、って言おうとしたんだけど……遅かったね」
「……っ! 先に言ってよ!」
私はぶつけた額を押さえ、少しだけ恨めしい調子で言った。
「よそ見してた君を置いていかなかっただけありがたいと思いなよ。それに君はどうせ痛みを感じないし、怪我もしないんだから別に問題ないでしょ」
確かに昴君の言っている事は間違ってはいない。間違ってはいないけど、他に言い方ってものがあると思う。
昴君の言葉は――お前はこの世に居るべき人間じゃなない、と突き付けているようで――私の心をチクリと刺した。
「何ボケーッとしてんの? 通学路分からないんだから、ちゃんとついて来ないと迷子になるよ」
昴君の棘のある言葉に我に返る。昴君の嫌みにもだいぶ慣れてはきた。しかしこんな性格の昴君、友達は居るんだろうか?
怜治さんは昴君と一緒だから心配はないと言っていたけど、逆に心配になって来た。