表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『追放された俺は、自分の価値を証明したい』  作者: 逆位相


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/5

第一話 「役立たずはもういらない」

 雨が降っていた。


 石畳を叩く雨音が、酒場の喧騒をぼやけさせている。


 俺――レイン・アルヴァスは、安酒の入った木杯を乱暴に置いた。


「……クソが」


 吐き捨てるように呟く。


 視線の先では、濡れたマントを羽織った冒険者たちが笑っていた。


 きっと俺のことも笑っている。


 “追放された役立たず”。


 今ごろ、そんな噂でも流れているに違いない。


「おかわりは?」


 店主の老婆が無愛想に言う。


「ああ」


 銅貨を数枚置く。


 残金は、もうほとんど残っていない。


 これまで稼いだ金の大半はパーティーの共有資金に回していた。最前線で剣を振るうだけの連中と違って、俺はちゃんと全体を見ていたからな。


 回復薬の管理。

 食料の配分。

 魔物の行動分析。

 戦況把握。


 パーティーがここまで上り詰めたのは、間違いなく俺の支援があったからだ。


 なのに――。


『レイン。お前は今日でパーティーを抜けろ』


 数時間前の言葉が脳裏によみがえる。


 英雄パーティー《銀翼の剣》。


 王都でも名の知れたAランクパーティー。


 そのリーダーである剣士カイルは、まるで当然のことのようにそう言った。


『……は?』


 意味が分からなかった。


 いや、今でも分からない。


『最近の依頼、お前のミスが多すぎる』


『何度も話したよな』


『このままじゃ、誰か死ぬ』


 まるで全部俺が悪いみたいな言い方だった。


 確かに、最近は少し噛み合っていなかった。


 前衛の突撃タイミングがズレていたし、後衛の魔術師セシルも指示への反応が遅かった。


 それなのに、なぜか責任は全部俺に向く。


『俺の指示が悪いって言いたいのか?』


『そういう話じゃない』


『じゃあ何だよ』


『……お前、自分が何回勝手に動いたか分かってるか?』


 勝手に動いた?


 あれは状況判断だ。


 現場で柔軟に動いただけだろうが。


 だいたい、俺がフォローしなければ崩れていた場面だって何度もあった。


 だがカイルは疲れた顔で首を振った。


『もう限界なんだ』


 その言葉だけは、妙にはっきり覚えている。


「限界、ねぇ……」


 鼻で笑う。


 限界だったのは向こうだろ。


 俺の支援を理解できない程度の連中だったってだけだ。


 実際、あいつらは俺に頼りきりだった。


 ダンジョン攻略ルートを考えていたのも俺。

 荷物管理をしていたのも俺。

 戦闘中に細かく状況を見ていたのも俺。


 剣を振るうだけなら猿でもできる。


 だが、パーティー全体を動かす頭脳は必要だ。


 それを理解していたのは、たぶん俺だけだった。


「……見てろよ」


 木杯を握る手に力が入る。


「あいつらは絶対後悔する」


 俺を追放したことを。


 俺がどれだけ重要だったかを。


 すぐに思い知ることになる。


 その時になって泣きついてきても、もう遅い。


 俺は、俺の価値を証明してやる。


 雨音は、まだ止まなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ