テスト終了!
「お、終わったぁぁぁ」
菊田さくらはへろへろになりながら机に突っ伏していた。
「さくらがめっちゃくたくただぁ〜」
「どうしたの?」
菊田さくらの机の周りに2人の友人がやって来た。心配そうに菊田さくらを見守っている。2人は高校1年生のときからの友人で、菊田さくらと一緒にいることが多い。
「うん、こんなに頑張ったの初めてかも……」
菊田さくらは突っ伏したままでボソボソと呟いた。
「えぇ何それ自慢〜?いっつも頑張らないであれなのぉ??」
「ちょっと遥、意地悪言わないの。」
「ごめんごめん、ちょっとふざけてみた!ははは!」
そんな友人の会話を横目に、菊田さくらの頭の中は新宮あまねでいっぱいだった。
(やっぱり余裕だったのかなぁ……。あんまり自信ないんだけど……)
「はぁぁぁぁ」
菊田さくらは大きなため息を吐いた。
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「あ、やっぱりいた。」
新宮あまねが旧美術室の扉を開けると、そこにはキャンバスと向かい合っている佐藤晴大がいた。
「ああ新宮さん。」
「あいつは来てない??」
「あいつ?」
「菊田さくら。」
「あぁ来てませんね。」
佐藤晴大はそう答えると、再びキャンバスと睨めっこを始めた。新宮あまねは、その様子をぼうっと見つめる。
「佐藤くんは……いつもここにいるね。」
新宮あまねがボソッと呟いた。
佐藤晴大はキャンバスを見つめたまま、口を開いた。
「まぁ、そうですね。」
「部活……?」
佐藤晴大はふいに手の動きを止めた。
「いや、僕は帰宅部です。」
「え、じゃあ何で……」
佐藤晴大は少し遠くを見つめ、そして開き直ったように答えた。
「楽しいからです。これが1番楽しいから。」
そして一瞬暗い顔をしたかと思えば、すぐに見たことのない笑顔で話し出した。
「家じゃ絶対にこんなこと、できないので。」
新宮あまねにはその表情、声、動作、全てが偽りのように思えた。だが何を言うでもなく、ただ黙っていた。何を言うべきか、分からなかった。