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秘密の隠れ家

私立・海月かいげつ高校。特進クラスとスポーツ選抜クラスがあり、どちらのクラスも非常に優秀な成績を収めている、全国指折りのエリート校である。


そんな学校で、何かが起きようとしていた。


キーンコーンカーンコーン

「起立、礼」


先程まで静まり返っていた教室内に、一斉に活気が生まれる。部活や家の用事などで、教室を早々に出て行く人々。教室に残り、友達とたわいも無い話をしては笑い合う人々。


ある1人の男は、前者である。足早に教室を立ち去り、目的地へと向かう。すれ違う人々には目もくれず、ただ足を動かす。


ガラッ


その男は美術室へ、ではなく美術室の隣の隣、校舎内最北端に位置するその教室へ足を踏み入れた。


そこは、昔は美術室として使われていた場所だった。だが校舎を建て替えた際に、現在の美術室が作られ、古びたその教室はもはや誰の目にもくれずに忘れ去られていた。


男は旧美術室に入ると、部屋の中央に立てられたキャンバスの元へと歩く。


机の上に置かれた絵の具やパレットなどに目をやると、男は一息つき、筆を手に取った。


その部屋には男の動作一つ一つの音が響いていた。筆をキャンバスに軽やかに走らせ、時には校舎の壁に沿って走る運動部の姿を眺めながら、静かな時間が流れていた。


……はずだった。


ガラ、ビシャン!


突然、そんな音が鳴り響いた。


男が音のした方に目をやると、扉にもたれ掛かった美しい女がこちらを見ていた。海月高校の制服を着ている。


「…何か用ですか?」


男が尋ねた。するとその女は、怪しげな笑みを浮かべて言った。


「校舎の最北端、誰もいないはずの教室で男の幽霊を見た。」

「…は?」


女は男を意に介さず、続けた。


「これは陸上部の生徒複数名がした目撃証言です。」


男は女の意図が分からずに、ただ女を見ていた。

女はふっと笑った。


「2年2組、佐藤晴大。君がこの幽霊の正体、でしょ?」

「……はい?」


女は男の方へと歩み寄り、男と向かい合う形で、キャンバスの前に立った。女の艶のある黒髪、全てを吸い込んでしまいそうな黒い瞳、そして透明感のある白い肌。その容貌は、到底一般人には見えなかった。


「あ、あの。何が言いたいんですか。」


男を支配していたのは、1人だけの時間を邪魔されたというちょっとした怒りと、何が起こるか想像のつかない恐怖、そして少しの好奇心。


「ここさぁ、ちょっと埃っぽいけど割と綺麗だし、持ってこいの場所だと思うんだよね。」

「……何に?」


女は男の目を見つめて言った。

「秘密の隠れ家…に!」

「さくらキャンバス!」を少し変えてみました。タイトルはいつか変えようと思っています。

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