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爪なき鷹1  作者: 与太郎の与太話
発明期
3/48

1.01 99%の努力を無にする、1%のひらめき

 皆は夏の暑さで寝付けない時、どうするだろうか。私は大抵は考え事をする。今回考えることは、肩をすくめ、崩壊しかかった巨人の肩の上に立つ、という文明の継承者たちを救済する方法についてだ。

 人類は先人たちの知恵を継承するとき、苦悩が発生する。例えば、受験勉強や資格勉強などはその典型と言っていいだろう。知識の継承による苦悩の原因は、有限な気力・労力・時間を消費することで発生する。記憶力が知識の継承にかかる労力と時間の量を左右する。人類は、遺伝子変異によって大容量な脳を獲得した。脳の容量は、記憶力と関係がある。著しい理工学の発達で、IT機器を使った通信教育や効率的な学習方法を実践する人は溢れているが、脳の機能を向上する方法は普及しているとは言えず、依然として人類は偶然性の遺伝子変異によって得た脳で旧来の教育と大差ないことを続けている。私は、脳の機能を向上することを実現しようと考えた。

 方法はすでに構想していた。私の計画案は「BDNFをコードしたmRNA医薬を筋肉注射する」という方法だ。BDNFは脳神経を成長させるタンパク質でmRNA医薬はCOVID-19のワクチンと同様に標的タンパク質の遺伝情報をコードしたmRNAを投与し、標的タンパク質を合成する手法の事だ。これによって、脳は肥大化し、高性能化する事が出来るのだ。問題は、どうやってBDNFをコードしたmRNA医薬を入手するかという事だが、現状は私が思うよりずっと甘く、別に多額の資金が必要でもなく、博士号の資格がなくてもmRNA合成装置が手に入った。BDNFをコードしたmRNAを油脂に混在させ、動物実験の過程を省き、人間の身体の丈夫さを信じて、実験第一号の犠牲者は考案した私が実験台になった。効果は抜群で、頭蓋骨で脳の成長で内圧が上がり、「バキッ‼」だの「メキッ‼」だの音がしたが、健康上に問題はなく、記憶力が定性的に上がっていると感じた。

 しかし、この技術を社会に公表する気はない。医師免許を持たずに医療行為を行ったとして違法医療行為として罰金100万円になるし、わたしたちは世間を沸かせる新しいものを切望するが、すぐそれらに無関心になってしまう。昨日の奇跡は、今日のよくある出来事なので、公表しても、虚しさが残るだけ。せっかくなので、これからはこの発達した頭脳を使って、発明をすることにする。

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