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爪なき鷹1  作者: 与太郎の与太話
爆発期
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5.03 共同幸福へ

 ノルトライン又はズィーベンが私の意識が飛んでいる睡眠時にサキュバスみたいに搾り取っているんじゃないかと割と真面目に思ったので、寝たふりをして経過観察をすることにした。観察しようとする以前から思い当たることがあった。二人とも誘惑気味というより頻繁に抱き着いてくるし、夢精の頻度が若干多い気がする。寝たふりをしながら思いにふけっていた。人を生むことは人を殺すことよりも罪深いと考え悲劇の様に私は思い成した。だから、今まで女性から好意を告白されても、ずっと無視し続けた。その人から怨まれようと善いことだと思っていた。規律的に統制された社会の中で、身体を拘束され、時間を拘束され、食料を確保する時間以上に労働を強いて、小さな失敗でも糾弾されることが起き、偶然の進化では追いつけないような文明の発展の中で記憶を拘束され限界まで思考を巡らせ、不幸に満ちた現代社会で人生を送らす人間を生み出す行為に加担するわけにはいかないと思っていた。反出生主義の考えと同時に小説『人類の子供たち』の一説を思い出す。

「人類に子供が全く生まれなくなり、20年以上が過ぎた。人類の後継者が見込めないこの社会では、悲観主義が蔓延した。多くの人は、自分たちが去った後には全てが失われるのだと理解すると、いかなる喜びも儚いものに感じた。思いやりのある公正な社会への関心が薄れて民主主義が崩壊し、自然界への関心も消えて科学的進歩はほぼ停止した。人々は、いなくなった快活な子供たちの面影を空しく希求した」

 思い出した瞬間、私の腹の上にあった腕を、覚めないように配慮して退ける、とろけるような優しい手の感触が私の腕を包んだ。思わず目を開けてしまったが、暗くて顔を判別することが出来ない。面影からしてズィーベンであろうか。腕の力が働いたのか、強張った感触が原因なのか、私の目が明いているのが見えたのか、どうやら寝たふりということに向こうは気付いたようである、気まずくなりながら手を放してゆっくりと去っていった。この時間帯なら眠りは深く、何かされても起きないかもしれない。今日は定住をしようと決めた最初の日だが、これからは木製グライダーで一日中飛び回ったりしない。私は今夜の出来事に、いなくなった快活な子供たちの面影を空しく希求した人々を重ねた。人を生むことを悲劇だと考えていたが、人を生むことはごく自然のことで、悲劇ではない、と僅かながらに、だが確実に思うようになっていた。恐らくは息の詰まるような現代社会から離れ、自然と共に生きる人々が美しく感じてしまったからだろう。

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