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ショッピング

「じゃ、お疲れ。日曜日に」

 駐車場で島田がベレッタ片手に言った。

「ああ」

 私は愛車のエンジンをかけようとした。

「夜っちゃんと島ちゃん。B区の奴らが話したいって!!」

 津田沼が正面玄関から走ってきた。

 見ると、B区の連中がぞろぞろとやって来た。

 中には私たちが殺して、生き返った奴もちらほらと見える。

「どうした?」

 私はそう言うと車から降りて銃を抜いた。島田も車の窓を全開にしてベレッタを向ける。

「撃つな! 俺たちは丸腰だ!!」

 B区の連中のリーダーらしき男。そいつは程よい筋肉の男だ。が、こちらに両手を挙げて近づいてきた。

「なあ、お前たち貧乏人はハイブラウシティ・Bを無くすんだろ。パソコンもねえし……」

「ああ、それがどうした!!」

 島田が早速噛みついた。

 男は首をユルユルと振り、

「実は俺たちもパソコンを買っても、ノウハウの調節なんてできる奴なんていないんだ。勉強しても4年は掛かるっていうし……。頼む。俺たちの生活のためにもハイブラウシティ・Bを無くしてくれないか。貧乏人に頭を下げるのは屈辱だが……仕方がない。あんたたちなら何とかしてくれそうだしな」

 私は銃をしまい。

「ああ、解った。俺たちは生活を考えるだけでも、生きていくのが大変な生き物だし。お前たちのためじゃないけど……任せろ」

 島田も頷いてベレッタを引っ込めた。


「おはようッス。云話事町TVッス」

 美人のアナウンサーが神妙にカメラに頷き。

「今日は藤元の馬鹿が自転車事故を起こしたッス。仕事はしばらくお休みのようです。命知らずの夜鶴 公さん率いるA区の労働者たちが、今現在進行中のハイブラウシティ・Bを阻止しようとしているッス。私もハイブラウシティ・Bは(自分の仕事が無くなるから!!)阻止したいです。A区の人たちだけではなく、B区の人たちも・・・医者などのホワイトカラー、サラリーマンや作業員などのブルーカラーや、まさかのラーメン屋も仕事を失うと言われています。それでも需要を増やしていくという恐るべき計画。失業者は一体どれだけ(私も!!)出てくるんでしょうか?それに、どんな失業対策を講じるのでしょうか?このままでは、この国の人々は大変なことになってしまうと思えます。どうしても、機械に退場してもらうかしないと……」

 美人のアナウンサーは微笑むと、

「みんなで夜鶴 公さんを応援しましょう!! それではみなさん今日も良い一日を!!」


「そういえば公さん? 日曜日に島田さんたちとショッピングに行くそうですね? 私も行きたいです」

 晴美さんがキッチンでコンビニ弁当を食べながら言う。その顔は好奇心の塊だった。

「ああ。いいとも……てっ、言うか最初から誘うつもりだったのさ。晴美さんを」

 私はウインナーを頬張る。

 家では自炊出来る人がいない。いつもコンビニ弁当だ。だが、美味い。

「やったー! 私、行きます! 弥生さんも来て下さいますか?」

「ああ」

「やっほー! では、国会議事堂に行くのは来週がいいですね? 私と国会の反対勢力によって、父を失脚させないといけません」

 晴美さんが少し悲しく微笑む。

「そうするしか……ないの」

 晴美さんの顔に一筋の涙が流れる。

「大丈夫だよ。俺たちがいる。首相官邸にまで俺たちの弾丸は届くんだ。晴美さん一人が無理をすることはないよ」

「ええ」

 今まで尻尾を振っていたスケッシーが頭を垂れる。

「私の父の目的は一体?ハイブラウシティ・Bの裏には一体何があるの?昔、母さんが言った言葉が原因?」

 私は驚いた。

「あれ? 晴美さんはお母さんに会っているの?」

 晴美さんは少し考え込んで、悲しそうに言った。

「実は……私がすごく小さい時に一度だけ会いました。そして、病室の母が話してくれたんです。ほとんど、覚えていませんが…………。B区には宝石や金がある……って…………」

「宝石? お金になる金?……なのかな?」

 晴美さんは少し呼吸を整え、遠い記憶を辿る。

「ええ。私もそうだと思うんですけど、母はB区には宝石や金がある。それを父に探してほしい……っと、言ったんです。……それが母の最後の言葉だったんです」

「うーん」

 私は考えた。

 B区は今でも金持ちでいくらでも宝石や金がある。奈々川首相が血眼になってまで宝石や金を探そうとはしないだろう。すると、別の意味か……。

「うーむ……」

「公さん。もう今日は難しい話は終わりにして寝ましょ」

「ああ」


 日曜日。

 島田と弥生さんを愛車に乗せ、B区の云話事ショッピングモールへと向かう。私は小さい時におやじに連れて行ってもらった……はず。

「やっほー! 私、ショッピングは初めてです!」

 助手席の晴美さんはご機嫌だ。

「あっはー! 晴美さん。今日はさー。面白くていいものをたくさん買おうよ。そしたら、昼飯は高級中華飯店さ」

 島田が弥生の朝食のサンドイッチを頬張りながらノリノリだった。

「はい! 楽しんで買いましょう! お金は心配いりません! 私のお小遣いがあります!」

 晴美さんが弥生からサンドイッチを手渡され、それを口に運んでいる。

「公さん。今日は高い物も安いものも私に任せてください」

「ああ」

 私もサンドイッチを食べる。

 スライスされた胡瓜とマスタードの味のハーモニーだ。

「晴美さん。うちの旦那も私も色々と迷惑を掛けたわねー。今度はハイブラウシティ・Bだっけ? それをうちの旦那が粉砕してくれるわよ。それと、辛い時は私に言ってね。すぐにすっ飛んで行くから」

 弥生がサンドイッチを、みんなのお腹に見合った量を見積もって、渡してくれる。

「ありがとうございます。本当にありがとう……」

 晴美さんが笑った。

 私はウキウキ気分で、云話事ショッピングモールへと愛車をA区の小道からB区の大通に走らせた。

 後方に何台かの黒い普通自動車がつけていることは、今の私たちは知らない……。


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