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結婚式

「君が夜鶴くんか?そういえば、首相官邸で一度会っていたんだね。死んでいないのが意外だけど。」

 谷多部が手ぶらで静かに言う。その声が私に死を知らせる。

「自由な恋愛したっていいだろ?!」

 津田沼が緊張して叫んだ。

「そうだ。人は自由じゃなきゃ面白くない」

 田場さんが優しく言った。

 私と島田が目配せをした。

 意味は、奈々川さんと逃げるのには、一瞬か少ない時間で数体のノウハウを倒さなければならない。

 

 島田が嬉しそうに顔を紅潮した。

 眩暈が酷いのに、私の腕がベレッタを自然とノウハウに向けた。

 次の瞬間、ノウハウたちの発砲音と私たちの発砲音だけで、屋敷全体が振動した。

 私はあっという間に、五体のノウハウを倒し、津田沼の手榴弾が炸裂。田場さんと島田は銃を乱射した。

 奈々川さんが耳を塞いで地面に蹲った。

 重火器と重火器の火花で、谷多部の顔形が見える。

 人を見下した顔ではなく。人を人として見ていない。そんな感じの目だった。

「おらー! 次だ! 次だ!」

 吠える島田の胸に弾が当たった。

 津田沼は倒れた。

 田場さんは血を流して銃を撃った。

 ノウハウが全て地面に倒れると、谷多部はにっこりして、

「また、金がかかる」

 そう言って、車の方へと歩きだした。

 派手な黄色のスポーツカーだ。

 私と田場さんは奈々川さんと、死んでしまった津田沼と島田を抱えて、正門を破壊した黒のジープに乗った。

「これで、もう安心だな」

 額から血を流している田場さんが、無傷の私に二カッと笑った。


 病院

 白い空間には、ベットに二人の男が横たわっていた。

 目を瞑っている島田と津田沼の周りに私たちがいる。

「谷津くん。愛していたわ」

 弥生は車椅子から顔を覆って、島田のベットに顔を埋ずめた。嗚咽が室内に響き渡る。

「島田……」

 島田のベットの脇で、俯き加減な私の隣の奈々川さんも静かに泣いていた。

「津田沼。また俺の工場で働いてくれ。……頼む」

 田場さんは頭に包帯を巻いている。島田の隣のベットにいる津田沼の顔を覗いて呟いた。赤いモヒカン頭が今では弱弱しかった。

「どーもー!」

 藤元が元気よく病室に入って来て、通りすがりの看護婦さんに怒られる。

「藤元……二人を生きかえらしてくれ。頼む」

「おっっけー!!」

 早速、藤元は神社でお祓いをする棒を熱心に振り回した。島田と津田沼のベットへと近付きながら、何やらぶつぶつと言いだした。

 

 すると、見る見る島田と津田沼の体から生気が感じられてきた。

ゆっくりと目を開けた島田が起き上がると、弥生が両手で島田を抱きしめた。

「谷津くん!!」

 弥生は感激して車椅子から上半身を、島田のベットに投げ出して、島田を抱きしめた。

「弥生……。夜鶴…………何とかなったな」

 島田がポツリと言うと、欠伸をした。まるで、死者ではなく熟睡をしていたかのようだ。

「おはよう」

 津田沼も起き出した。

「藤元さん! ありがとうございました!!」

 感動した奈々川さんが、涙を拭きながらビックリするような大声を発した。

 弥生も涙に濡れた顔を藤本に向けて、微笑んでいた。

「凄いな」

 田場さんも感心して、寝ぼけている津田沼の肩を叩いている。

「たくさん死んだねー。いやー、それほどでも。あ! 今度は首相官邸に行かないといけないんだった」

 藤元が一息入れたいと言って、一階のコーヒーショップに行った。

「なんかさー。今、いつなんだ?」

 島田が弥生に言った。

「昨日から少し経って、今日は三日間後の水曜日の午後よ」

 弥生が優しく言った。

「じゃあ、結婚式はいつ?」

 島田の発言に津田沼も首を傾げて、私と奈々川さんに顔を向ける。

「うーん。早い方がいいと思うから……怪我が治ったらすぐにしたいんだけど、奈々川さん? いいかな?」

「ええ、いいですよ」

「やったー!!」

 私はふらふらの体を気にせずに大喜び。

 島田たちも拍手をしていた。

 病室には私たちしかいなかった……。


 結婚式場は晴れやかな白い色の建物。ここはB区でも有名な建物のようだ。お城のような外観をして、中は煌びやかな内装。中央の広い階段は、そのまま神父の笑顔へと繋がる。

「これより、新郎。新婦の契りを始める。病める時、楽しい時も、悔いる時も、逝くときも二人とだけの道を歩み……」

 私と奈々川さんは、真っ白のスーツとドレスを着ている。

 奈々川さんの手には雛菊のブーケ。

 島田たちは広い客席に着いている。

 島田たちは武器を巧妙に隠している。

 けれども、私たちは気にしない。これくらいのことでは……。

「新郎。新婦。誓いのキスを」

 私と奈々川さんがキスをした。


「やっほー! B区のど真ん中で結婚式を挙げたぞー!」

 島田だ。

 私たちはハネムーンでの云話事シーサイド……一度、奈々川さんを連れている。そこへと向かう。二人だけで……。

 白い華奢な車は、二人を乗せて、ゆっくりと結婚式場から走る。

 ブーケは津田沼が受け取った。

「おめでとー!」

 田場さんだ。

「夜っちゃん。俺…………幸せになる」

 ブーケを受けた津田沼が満面の笑みで言った?


 テレビ画面では云話事町TVがやっていた。

「おはようッス!! 久し振りっス!! 云話事町TVッス!!」

 いつもの住宅街を背に美人のアナウンサーが吠えた。

「昨日は大変だった! 藤元さんです!」

「ええ。大変だったですよ。本当に……」

 藤元がカメラのドアップを受ける。……少し鼻毛が伸びている。

「首相官邸に行ったら、みんな死んでて……本当にここが首相官邸なのかと、最初解らなかったですよ」

「たまには、ですけど、頑張ってくれたんですね。藤元さんに拍手を……」

 美人のアナウンサーが力強く拍手を送った。

「ところで……今日の天気は?」

 美人のアナウンサーは気を取り直して、マイクを藤元に向ける。

「今日は快晴にしたいですね。僕……疲れていますから……」

 藤元は両手を何度か叩く。

 すると、曇り空の雲があっという間に散って行った。

「みなさん! 今日は晴れるでしょう!」


 ここは、A区。

「公さん。スケッシーとラーメン屋へ行きますね」

 晴美さんだ。ここは、私の部屋。

「ああ、でも、一人じゃまだ危ない」

 私は晴美さんと手を取り合って、105号室を後にする。

 仕事も再開して、田場さんも大喜びだ。

 島田は相変わらずに、銃と弾薬をたくさん買って。

 津田沼も日の丸弁当片手に仕事に精をだす。

 戦争は起きずに。

いつもの日常だ。


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