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第5話「急速なレベルアップ」

※今日は2話更新しています。良ければ前話からお読みください!


※主人公がゲームを作り上げた年を西暦2047年としました。その点だけ第一話を修正しています。

 薬草によって、ある程度回復することが出来た俺は、まず、できるだけ安全だと思える場所まで移動した。


 ただ、薬草は傷をかなり癒してくれたのだが、全快とまではいかなかった。

 だから、薬草を見つけるたびに使ってみたが、結局ある程度以上は回復しなかった。

 ゲームなら薬草をいくつか使えば体力を全快させられるし、そもそもゲームに怪我などないのだが、この世界はどうやら違うらしい。


 そんなわけで、やっとの思いで少し動けるようになったくらいの体では、さすがに走ることはできず、一歩ずつゆっくりと進むしかなかった。

 それでも、少しでも早く黒蜘蛛の奴らの手の届かない場所まで行きたかったので、休まず体を動かし続けた。


 そうして地道に進み、ある程度安全だと思えた所で、俺は力尽きて大地に突っ伏すと、〔ステルスモード〕をオンにしたまま思いっきり爆睡した。


 昨夜、殺されかけてから緊張しきりで逃亡して来たのだ。

 疲労は半端じゃなかった。

 実際には〔ステルスモード〕なら、森の中にいても安全なのだが、黒蜘蛛の奴らがいるかも知れない所で眠るなんてとても出来なかった。



 次に目を覚ました時には、ちょうど朝日が登り始めた頃だった。

 一体どれくらい寝たのかも分からない。



「———それにしても‥‥ホントに転生したのか。」



 俺は、朝日に照らされ、非現実的なまでに鮮やかに彩られたこの世界を眺めながら感傷に浸る。


 これが、自分で作ったメガトラオムの世界なのだ。

 ゲームを作成していく途中、PCの画面越しに見るだけでも大興奮ものだった。

 それを今は、直接この目で見ることが出来ている。



「…ふふふ。ぐふふふふはははあぁあげほ!げほっ!!」



 俺は歓喜に震え、負傷中であることも忘れて気色の悪い笑い声を上げてしまったため、傷口が疼いてしまった。

 しかし、それも無理もない。


 ただでさえ楽しみにしていたゲームを、画面越しにでなく、直に体験するのだ。

 これからの冒険が楽しみで仕方ない。



 もちろん、疑問もキリがないほどあった。


 元の世界には戻れるのか?

 現実の世界での俺は今どうなっているのか?

 ゲームの中で死んだらどうなるのか?

 そもそも、ここはゲームの中なのか、それともゲームによく似た実在する異世界なのか?


 分からないことは山積みだ。

 しかし、ハッキリしていることは現実に今、俺がメガトラオムの世界に生きているということだ。


 どうせ俺は独り身の冴えないおっさん。

 一人っ子で育ち、両親も既に亡くなっている。

 元の世界に未練もない。


 強いて言うなら、ゲームが完成するのを楽しみに待ってくれていた親友が1人だけいたのだが、あいつは俺がどれだけファンタジー世界に憧れていたか知っている。

 そんなあいつなら、きっと俺が転生できたことを喜んでくれるだろう。

 だから、心置きなくこの世界(メガトラオム)を楽しむことができる。


 

 わくわくと。

 年甲斐もなく気持ちが高ぶる。

 

 ゆったりと生活し、ファンタジー世界を満喫するもよし。

 冒険者として名を馳せ、最強を目指すもよし。

 はたまた新国家を建国し、国王となるもよし。


 もちろん、俺の答えは決まっている。



「——全部やるぞ。

 当然だ、この俺を誰だと思っている?

 この世界(メガトラオム)の制作者だぞ?!」


 

 テンションが上がりきっていた俺は、またしても厨二病全開で叫んだ。




「クゥハハハハー!!

 俺は!

 この世界を!!

 遊び尽く(プレイ)してやる!!」








 

 


 この世界でありとあらゆることを楽しんでいくと決めた俺は、ひとまず隣国のバリエッタ王国に向かうことにした。


 なにせ今いる所は、まだ魔王クルエルが治める神聖大魔王国(エルモラール)の支配領域を抜けていない。

 いつ黒蜘蛛の連中が襲ってくるか分かったものではないのだ。

 ステルスモードがあるとはいえ、一刻も早くここから離れたい。


 そんなわけで、俺は早速移動を始めた。



 ついでに、歩きながら検証をすることにした。


 まずは、《ステータス》だ。


 これは、頭の中で念じれば簡単に見ることができた。






 《 ステータス 》


【花村想実】

 人族,男 , 43歳

 国 :無国籍

 所属:無所属

 職業:無職〔 - :Lv.1〕


【ライセンス】

 なし


【既修職】

 なし


【特性】

 なし


【称号】

 《生還者》






 これが、ステータスだ。

 まず名前と年齢だが、元の世界と同じものものになっている。

 ステータスには載ってないが、容姿もだ。


 しかし、俺には昔からメガトラオムをプレイする時はコレと決めていた名前と容姿(アバター)があった。


 名前は【ソージ】で、容姿(アバター)は【17歳の自分】の姿。


 名前には特別な理由があるわけではない。

 強いて言えば、いつもゲームをする時は【ソージ】の名前でプレイして来たから、本名だと落ち着かないというくらいだ。

 

 しかし、容姿アバターはこだわりがある。


 俺は17歳の時にファンタジー世界に憧れ、ゲームを作ると決心した。

 あの時、夢見た俺が、そのままの姿で夢の世界を冒険する。

 そんなことに厨二病オヤジの俺はロマンを感じるのだ。


 幸いにして、名前、容姿、年齢は裏ワザで変えることができる。

 俺は早速、裏ワザの暗号を唱え、それらを変更した。

 




 【ソージ】

 人族,男 , 17歳



 

 無事に変更できた。


 ところで、ゲームの中なら名前や容姿を変えても、周囲の人間は何の違和感も持たず関わり続けた。

 リアルならあり得ないことだが、それがゲームだ。


 しかし、この世界では果たしてどうだろうか?


 もしも、名前と容姿(アバター)を変える前と後で俺のことを同じ人間として認識出来なかったら…。

 そうなれば、黒蜘蛛の目を欺くことができるので、安心なのだが。


 それから、もう一つ。

 年齢を変えるという点も疑問がある。

 これまた、ゲームでは裏ワザで年齢を変えたところで、ステータスに表示される年齢が変わるだけで、特に何の変化もなかった。


 だが、今は17歳に変更した瞬間に、若い活力が漲ってきた。


 これは、単にステータス上に表示されるだけではなくて、年齢の実質が肉体に反映されているということ。


 ならば、この裏ワザを使えば不老になれるのか?

 〔チュートリアルモード〕と合わせれば『不老不死』ってことになるぞ?

 そんなのトンデモ性能じゃないか。


 試しに年齢設定を3歳にたり、80歳にしたりしてみたが、やっぱりそれに応じて、体の活力が変化した。


 やはり、影響があるようだ。


 ただし、年齢を変えても見た目は、老人になったり、赤子になったりはせず、あくまでも内側から感じる活力に変化があったという感じだ。


 見た目は年齢の設定ではなく、アバターの変更でできるからかもしれない。


 本当に不老不死なのかは分からないが、この点もいずれ検証しようと思う。



 さて、ステータスで何より俺が驚いたのは【称号】の欄に《生還者》が記載されていることだ。


 【称号】というのは普通、ダンジョンを攻略したり、国に貢献したりして得られるものだから、転生したばかりの俺が持っているはずはない。

 しかし確かに記載されている。


 疑問に思った俺は《生還者》の詳細を確認した。


 




 《生還者》

 絶望的な状況から生還した者


 (効果)

 ・格上との戦闘時、すばやさが上がる。

 ・戦闘状態に入りさえすれば、勝利せずに逃げても1割の経験値を獲得できる。


 (獲得条件)

 圧倒的な格上と対戦し、生き延びること。






「…そうか!

 あぁ、そうだった。

 こんなの作ったな!思い出した!!」



 つまり、こういうことだ。


 俺はこの世界に来てすぐネトに殺されかけ、裏ワザを使って生き延びた。

 それが、()()()()()()()()()()()()()()()()とこの世界に判断されたのだろう。

 


 しかし、戦わずに経験値を獲得できるというのは素晴らしい。

 一気にレベルを上げることが出来るじゃないか。



「ふはっ!ふはハハハ!!

 さすが、俺だ!

 素晴らしい【称号】を用意していたものだ!!」



 もちろん、《生還者》を獲得できたのは、全くの偶然なのだが、そんなことはお構いなしに俺は高笑いした。


 そうと分かれば善は急げである。

 俺はバリエッタ王国に向かう道中、4,5匹の魔狼ワーグの小さな群れを見つけたので、早速試してみることにした。


 ちなみに魔狼ワーグの強さは、単体でD級冒険者のパーティが適正ランクである。

 今俺が見つけた小さな群れなら、C級の冒険者パーティでないと厳しいだろう。


 対して、今の俺は無職のLv.1。

 雑魚もいいとこである。


 しかし、問題ない。

 俺は()()()()()()()のだから。


 

 俺は〔ステルスモード〕のまま、魔狼ワーグから数メートルの距離まで近寄る。

 

 見事な黒い毛並みに、俺の肩くらいまである大きな体と獰猛な顔つき。

 俺は自分の作った世界の魔物に思わず見惚れ、少し感動してしまう。


 しかし、すぐに集中しなおすと〔ステルスモード〕を解除した。



 スッ、と。

 突然に俺の姿が現れる。


 魔狼ワーグは音もなく現れた俺に、まだ気づいていない。


 次の瞬間、俺は小石を拾い上げると負傷中の体に無理のない程度に力を込めて、魔狼ワーグに投げつけた。



 「グゥウア!!」




 魔狼ワーグにダメージはほとんどないが、それでいい。

 そこにいた5匹の魔狼ワーグが一斉にこっちを睨みつけ、敵意を剥き出してきた。


 剥き出しの殺意に俺は一瞬怯んでしまう。


 しかし、魔狼ワーグたちも、あまりに突然の襲撃だったため俺を警戒し、不用意に飛び込んでくることをしない。

 それが、幸いした。


 俺は気を取り直すと、すぐにつぶやいた。



 「〔ur stealth mode sh 005〕」



 ふっ、と。

 その場から俺が消える。


 

 「グゥア?!」



 魔狼ワーグ達は困惑した声を上げるが、俺はお構いなしに逃げ去った。


 随分と離れ、十分に安全を確認してから俺は〔ステルスモード〕を解除した。




 『経験値1016を獲得しました。』

 『【無職】Lv.1→Lv.68に上がりました。』




 「よし!成功だ!!」



 上手くいった。

 一気にレベルが68まで上がった。

 初期職である【無職】は、レベルが上がりやすいとはいえ凄まじい。


 本来ならスライムや、魔鼠ラッドなど、弱い魔物を地道に狩ってレベルを上げなければいけない。

 しかし、魔狼ワーグの経験値なら1割でも、それより遥かに早い。

 しかも、運良く5体もいたから、実質魔狼(ワーグ)半体分だ。


 これなら、一気に強くなれそうだ。



「フゥーッハッハッハァアッ!!!

 この俺様が、最強になる日は近いっ!!!」



 相変わらずのキチガイっぷりを発揮しながら、俺はバリエッタ王国を目指すのだった。


 



 

 



 つづく



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