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第19話「嘘と実績」

※セスクの持つ特性に【リーダーシップ】と、【軍の申し子】を追加しました。



 木人(ドライアド)達にボコボコにされた俺だったが、どれだけ攻撃しても死なない俺に流石に疲れてしまったようで、やがて攻撃は止んだ。


 そして、俺は何とか死にかけながらも敵でないことを釈明し、一応信じてもらうことができた。


 ボコボコにされた傷も賢者が回復魔法で治癒してくれた。


 今は、里の中にある住居に通され、賢者とセスクの2人と話している所だ。


 

 ちなみに木人の里(トレンティア)の住居は、大木の中に空洞が出来ており、それがそのまま家となっている。


 そんな木の家が立ち並ぶ里の景色は、非常にファンタジックで絶景だった。


 そう。

 だから、俺の病気が発動してしまうのも無理はない。


 ぐふふふふふ。



「…?! ま、またニヤけている?!

 貴様何を企んでいるのだ?!」



 俺のニヤケ顔に不信感を(あらわ)にした英雄セスク。

 まあ、無理もないだろう。


 いきなり姿を現した男が、ヴォルデスの呪いの武具を3つとも所持しており、なおかつ理由もなく唐突に笑い出すのだ。


 怪しすぎるというものだ。


 いやはや、セスクはついさっきまで死闘を演じていたというのに、休む間もなく心労をかけては悪い。


 安心させてやるとするか。



 俺はニヤリと気色の悪い笑みを顔に貼り付けて、自信満々に言ってやった。




「…ククク。

 ただの病気だ。気にするな。」

「…病気だと?いったい何の…?」

「……お主、さては【厨二患者】じゃな?」



 お?

 流石は賢者ピット・アルボルンといったところか。

 俺が【厨二患者】であると分かったらしい。





「ククク。いかにも!

 俺はたしかに【厨二患者】である。

 分かったら、ひれ伏せぃ!!」

「…可哀想に。

 きっと、無理矢理にこんな職業を選ばされたのじゃろうて。

 何か深い事情があるのやもしれぬ。」

「…その、【厨二患者】とかいう職業を選ぶと、皆こうなってしまうのですか?」

「…うむ。職業ランクを上げる毎に獲得する【特性】によって、どんどん精神がおかしくなるそうじゃ。

 ちょうど今の此奴の状態は【厨二患者】について文献に書いてあったものと一致する。」

「ククク!

 さすが賢者だ!!

 よく知っているなぁ?!

 だが、ひとつ違うことがあるぞぉ?!!」

「…なんじゃ?」

「俺は【厨二患者】になる前からこうだ!!」

「……」

「……」



 まるで捨て犬に向けるような、俺を憐れむ視線。



「ククク。

 高尚な厨二魂を理解するのは

 貴様らにはまだ早かったか!

 せいぜい厨二について俺からよく学ぶのだなあ!?

 フゥーッハッハッハッハアァア!!!」

「…超魔(スーパーマジック)連弾(ガトリング)(アイス)

「げぼぼぼぼぼぼ!!!

 …や、やめて!!

 やめてくださぼぼぼぼぞぼほごはぉっ!!!」



 また、賢者の経験値が入った。


 これだから厨二はやめられぬ!!



「フゥーッハッハッハッぼぼほごごぎがぁあ!!!」


 また、賢者の経験値…(省略)


     ・

     ・

     ・




「つまり、お主には存在ごと消える能力があって、

 その能力を使って『ヴォルデスの呪いの武具』を

 3つとも回収したと…。そういうことじゃな?」

「はい、そういうことです。」

「…そんな能力があったというのか…。」


 やっと、まともに話すようになった俺は2人に今回の経緯について説明していた。


 裏技については俺の【特有(ユニーク)特性】ということにしといた。


 特有(ユニーク)特性というのは、世界で1人だけしか持っていない特性のことだ。


 ミモザが持っていた【特性共有】も特有(ユニーク)特性だな。



「…なら、これだけ攻撃を受けても

 死なないのはどういうことだ?」

「それも特有(ユニーク)特性ですよ。

 【不死】の能力です。」

「…なんだと?!

 特有(ユニーク)特性を2つも持っているとは…」

「…うむ。歴史上でも稀に見る稀有な存在じゃの。

 じゃが、実際に呪いの武具を持って

 気配もなく突然に目の前に現れたのじゃ。

 しかも、どれだけ攻撃しても死なん。

 信じるしかあるまい…。」



 2人は驚いていたが、ついさっき目の前で証拠を見せつけられたので、認めるしかないといった様子だ。



「…して、お主はなぜ謎と危険の森(ミスティリスク)

 呪いの武具を回収に来たのじゃ?」



 来た。

 本題である。



「はい。

 私が呪いの武具を回収し、木人の里(トレンティア)に参った目的は2つあります。」

「…ふむ。それはなんじゃ?」

「1つは、賢者ピット・アルボルン様に

 新たな【特性】を与えて頂くことです。

 何の手土産もなしにお願いするのでは、

 虫が良すぎると思い、森の呪いを解くお手伝いを

 させて頂きました。

 …まあ、そのせいで戦争が起こる

 きっかけを作ってしまい、

 里を危険に晒してしまいましたが…。

 その点は、私の責任です。

 申し訳ありませんでした。」



 俺は自分の目的を正直に話す。


 そして、自分の行動によって里を危険に晒した事について認め、謝罪する。

 


『謝るべき事をキチンと謝る。』


 うむ。それでこそ厨二というものだ。



「…なるほど。

 そういうことじゃったか。

 ……ソージ殿、頭を上げなされ。」



 俺はお言葉に甘えて、顔を上げる。



「たしかに、お主の行動で戦争が起こる所じゃったが、

 実際には、その戦いもお主の手によって防がれた。

 そして、残った結果は『森の呪いが解かれた』。

 それも、誰一人死者をださずにじゃ!

 …我々はお主に感謝こそすれ、責めてなどおらぬよ。」

「…?!」



 賢者の暖かい言葉。

 それに、英雄も同意した。



「その通りだ。

 危険を犯さずして、前進は出来ない。

 我々もいずれは奴らと戦うつもりだったんだ。

 ソージ殿の働きで、それが少し早くなっただけのこと。

 …それも、()()()()()()()()()()だ。」

「……」


 

 英雄は少し遠い目をしながら、賢者が言ったことを繰り返し強調するように言った。


 もしかしたら、100年前に散って行った仲間たちのことを思っているのかもしれない。

 

 彼は壮絶な犠牲を払って屍将ヴォルデスを討ったからこそ、犠牲なしに勝利することがどれほど価値あることなのか知っているのだろう。



「…そういうわけじゃ。

 ワシとしては、特性の付与どころか、

 もっと大きな礼をしたいと思っておるくらいじゃ。」

「…はは。

 ありがとうございます。」



 う、うむ。

 こうも真摯に来られると調子狂うな。



「…ただ、今日は魔力を使いすぎたからの。

 特性の付与は、また明日で良いかの?

 ふぉふぉふぉふぉ。」

「はい!もちろんです!!」



 それはそうだろう!

 俺に向けて、あれだけ大魔法をぶっ放しまくったんだからな!!


 フゥーッハッハッハッハアァア!!!



「…で、もう一つの目的というのは何じゃ?」



 続いて二つ目の目的について問われた。



「はい。

 …しばらくの間、精鋭部隊のミモザさんを

 お借りできないでしょうか?」

「…なぜ、ミモザを?」



 反応したのはセスクの方だった。

 彼の問いに俺は用意しておいた言葉を並べていく。



「賢者様なら神聖大魔王国(エルモラール)

 魔王クルエルが、屍王の呪いに

 掛かっていることをご存知でしょう?」



 そう、これである。


 実は『狂気の魔王クルエル』が恐ろしいまでの狂気に満ちているのは、彼が屍人族の8人の屍王の1人『呪會王(じゅかいおう)マレ』の闇魔法による呪いの影響下にあるためだ。



 実はクルエルは元々魔人族至上主義ではあったのだが、争いは好まず、平和的手段で魔人族の繁栄の為に尽力した賢王であった。


 ところが、500年ほど前に立て続けに試練が訪れた。


 突然の病に妻が亡くなり、唯一の跡取りは事故死。


 信頼する親友であり相談役の宰相は罠に嵌められ失脚。


 最後に残された肉親である愛する1人娘さえ不治の病を患ってしまった。


 クルエルは、その娘を治療する代価として呪會王マレと契約を交わしてしまったのだ。


 すべて、呪會王によって仕組まれた事だとも知らずに。



 それ以降、クルエルは狂気の魔王と変わり果て、武力によって魔人族の栄光を手にするため、幾度も戦争を起こし、ついには3ヶ月後に世界中に影響を与えるほどの戦争を巻き起こすわけである。



 だから、その戦争を止める為には、魔王クルエルに掛けられた呪いを解く必要があるのだが、これは生半可な事ではない。



 「屍将」クラスのヴォルデスの呪いの武具でさえ、解除するにはB級クラスの聖職者が数人がかりで数時間をかけてやっと解呪出来るのだ。



 ちなみに、俺が持ち込んだヴォルデスの武具は、すでに木人の里(トレンティア)の聖職者が集まり解呪に取り掛かってくれているが、まだまだ掛かりそうである。



 すでに術者が死んでから100年も経った呪いでそれほど強力なのだ。



 まして『屍王』クラスとなれば、さらにその上を行くだろう。



 屍王は、約一万年前からこの世界に君臨して来たメガトラオムの絶対強者。


 個人で太刀打ちできるのはそれ以前の古代七勇者か、龍王、鬼王くらいのものだろう。



 それほどの存在。


 しかも、ヴォルデスとは違い今なお生きている。



 そんな呪會王の呪いを解くには、相当な力が必要だった。



 だが、しかし、不可能というわけではなかった。



 なぜなら、こちらには『隠しキャラ』がいる。



 『悪魔の眷属』である屍人族に対して、圧倒的な力を発揮する【特性】・【称号】を併せ持つエルフ修道士———フィン・フィルディンである。


 聖職者を数人用意した上で、彼が持つ特性をミモザの能力で共有すれば、クルエルに掛けられた呪いも解呪出来るだろう。



 そういうわけで、俺はミモザを必要としていたわけである。



「……どこでそれを?」


 

 賢者は何故俺がクルエルの呪いについて知っているのか聞いて来た。


 これはごく限られた人物しか知っていないことなのだ。



「偶然、私が旅している時に、

 魔王の暗部『黒蜘蛛』に襲われたのです。

 その際に、彼らが話しているのを聞きました。

 おそらく私が既に死んでいると思い、

 油断して極秘情報を仲間内で話していたのだと思います。

 ですが、私は【不死】の特有(ユニーク)特性で死んでおらず

 そのことを知りました。」

「…なるほど。」



 黒蜘蛛に襲われたことは事実。

 それに合わせてついさっきでっち上げた【特有(ユニーク)特性】の話を付け加えて、嘘に真実味を持たせていく。



「彼らは私を容赦なく殺そうとしましたが、

 この姿を消す特有(ユニーク)特性で逃げ延びることが出来ました。」

「…ふむ。それで、どうしてミモザを?」

「はい。

 実はその時にもう一つ聞いてしまったのです。

 魔王クルエルが3ヶ月後にこれまでの比ではない、

 大規模な戦争を計画しているということを。」

「…なんじゃと?!それは真か?!」



 驚く賢者と英雄。

 俺は淡々と話を続ける。



「ええ。

 それで、私は必死で戦争を止める手段を探し始めました。

 そして、そのためには魔王クルエルに掛けられている呪いを解くしかないと思ったのです。

 しかし、呪會王の呪いを解くのは容易な事ではありません。

 それから、私はどうすれば呪いを解くことが出来るか、毎日のように思案し、そして天に祈っておりました。…すると天啓があったのです。」



 流れるように真実の中に嘘を混ぜる。

 

 内心ドキドキしているが、バレない為には堂々としていることが重要だ。


 大丈夫、俺の読みでは勝算がある。



「…なんという天啓じゃ?」

「はい。

 木人の里(トレンティア)のミモザという者を仲間にしなさいと。

 彼女の存在が解呪に役立つとの思し召しです。」

「…ふむ。

 たしかにミモザの【特性共有】の力は強力じゃが。」

「…にわかには信じられない話ですね。」



 むむ。

 鈍い反応だ…。

 天啓があったという嘘は怪しかっただろうか…?



「…信じて頂けないでしょうか?」



 俺が恐る恐る尋ねると、セスクが答えた。



「いや、すまない、そういう訳じゃないんだ。

 ただ、突然の話で驚いてしまってな。

 気を悪くしないでくれ。

 ソージ殿は実際にヴォルデスの武具を

 全て回収してここまでやって来てくれた

 それで十分に信頼できるよ。」

「…うむ。

 この100年間、ここまで来てくれた者などおらんかった。

 もしかしたら、呪いを解こうとして死んだ者はおったかも知れぬが…。

 お主は、そんな危険さえ顧みずにワシらの元に来てくれたのだ。

 信頼するには十分すぎる()()じゃよ。」

「…あ、ありがとうございます。」




 2人は、そう言って俺のことを信じてくれた。

 本当は嘘も混ざっている。


 だが、騙すつもりでついた嘘ではない。


 だって、制作者などと(ホントのこと)話したところで誰が信じるというのか。



 戦争を止める為の仕方のないデマだ。



 だが、賢者と英雄という並外れた名声を誇る2人が俺のことを認め、信じてくれた。


 そのことが、どうしようもなく嬉しくて、俺は例のアレを発動するのだった。



「クク。ククク。

 クゥーハッハッハッハアァアア!!!

 賢者ピット・アルボルン!

 英雄セスク・ウットポッドよ!!

 この100年という年月の間!

 呪われた森に閉じ込められ、されど腐らず!!

 来るべき解放の時を信じ、忍耐して来たその労苦!!

 実に、見事であった!!!」

「…?!

 アルボルン様、ソージ殿のこの病はどうにかならんのですか?」

「…仕方ないのう。

 ほれ、『眠れ(スリープ)』」

「キサマラのその…zzz…zzz…」

「賢者様!!ありがとうございます!!」

「セスクよ、

 森の呪いが解かれた時より嬉しそうじゃの…。」

「ええ!とっても嬉しいです!!」

「…ひとまず、ソージ殿を寝床に運ぶかのう。」



 こうして、俺は賢者から新しい【特性】を増やしてもらうことと、ミモザを借り受けることの許可を貰ったのだった。


 

 ちなみに、賢者や英雄、精鋭部隊の経験値が1割入ったことで俺の【厨二患者】は、〔初級:Lv.71〕→〔中級:Lv.5〕まで上がった。


 さらに【厨二患者】〔初級〕を終えたことで新たな特性が加わった。


 それは、【なりきり男】である。



 その詳細は以下の通り。




—————





【なりきり男】

 自分を想像上の何者かであると思い込む男。


(効果)

 現実(物理攻撃)耐性が低下する。





—————




 ククク。

 素晴らしい!

 実に素晴らしいぞ!!


 フゥーッハッハッハッハアァア!!!







 つづく











————




※補足(獲得経験値について)


 賢者の経験値は約25万。

 英雄セスクの経験値は約15万。

 精鋭部隊の経験値は1人約1万。


 この1割をそれぞれ獲得。

 賢者からは計4回経験値を貰っています。


 ちなみに屍人隊長は約8万(短剣を肩に食らった時に経験値を獲得しました)。


 バジリスクが40万くらいでした。参考までに。






 

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