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約束の場所

作者: 浅井 純

いつもあの場所で君が持っていた。

でも君はもうあの場所にはいない――…。



今日も学校のチャイムが鳴る。

あけるのは同じドア。

入るのは同じ教室。

いつも喋ったりするのは同じ友達。

何一つ変わったことはなかった。


君に出逢うまでは…


今日も同じ道を通って帰るはずだった。

でも今日はそんなスッキリした気分じゃなかった。

だって今日は失恋したから…。

だから今日はちょっとどっかへ行こうと思った。



そしていかにも人が来なさそうな公園へと来た。

この際人がいないほうが良いと思ったからだ。

もしかしたら号泣してしまうからとか予想してたり…。

公園の地面に転がり少し涼んだ。

「ここめっちゃ気持ちい〜」

と思わず言葉にだしてしまうほど心地良かった。

すると思わず涙が一粒…

予想的中。あたし絶対未来は100年後の未来予測できるかも。

なんて…ごまかしても涙は止まらないか…。

すると太陽のひかりが一瞬で消えた。

「お〜い、何泣いてんの??」

「!??」

いきなり男の顔が目の前に…

「驚きすぎ」

いや、普通に驚かなきゃ人間じゃねぇ。

ドアップだよ!!顔が…見知らぬ人の顔が!!!!

つか泣いてる人をほっとくのが普通だろ。ほっとけよ。

デリカシーというものは君の頭にないのかね。

「驚くよ!!つかあんたに関係ないじゃん!!あっち行ってよ!!」

「…。」

ふふふ。私がすぐに真実を話すと思ったか。まぁなんにしろ、

あたしは口が堅いので見知らぬ人に話すほど暇じゃないし。

「いや、普通に公園で寝転がって泣いてる人みたら気になるでしょ。」

確かにそうだ。でも家にいたらバレるし…。

「うっさい!!構わないで!!」

こーゆー時にこの言葉…ドラマとか見といてよかったー。

「あっそ」

そしてこの男はこの場から去る。それが普通…だったはずなのに。

なぜ去らない!??おかしい…あたしの知識は完璧だったはずなのに…

「早く家に帰れば!!なんでここにいんのよ!!」

「なんでって…ここ俺がいつもいる場所だからだよ。ここにいると落ち着くし。」

「今はあたしがいるの!!はい!どっかいって!!!」

「俺の場所奪うなよ。」

といいながら、行った。

あいつ文句言いながらいったな…。てか、あたし完全に嫌な奴じゃん!!

いつもここにいるんだよねっ!??明日また来て謝らきゃ…。

「あーもー!!あたしって本当にバカー!!!!」

って、こんなんだからフラれたのかな!??やばい…今本当に崖っぷち。




いつもと同じ学校のチャイムが鳴る。

あたしは昨日行った場所へと足を運ぶ。

そして10分程度でその場所に着いた。

「まだ来てないのか…遅い気がする。ってあたしが早いのか??」

まぁ来るんだしそこら辺にでも座っておくか。

静かな公園…こう見ると本当に人がいないなぁって思ったりして。

いつも喋る人がいるのに今はいないって変な感じ。帰り道はいつも友達と楽しく喋って帰っていたのに…

と思いながらため息をつく。


足音が近づいてきた。

もしかしたらと思い、振り向いた。

「何してんだ?まさか俺の場所をまた奪うつもりか!?」

彼は後ずさりした。

こいつ…本当にムカつく。

「奪ったりしないよ!!その…昨日奪っちゃったから謝りに…」

「ふーん」

彼は考えながらそう言った。

ふーんって何よ!こっちも予定潰して来てやったのに!!来て損した!!!

すると、あることに気がついた。

「あんたっ…この制服…あたしの学校のっ…!!」

口をパクパクしながら驚いた。

何で!?同じ学校なの!?こんなイケメン君見たことないしっ!!

「あれ?知らない?B組なんだけど」

彼はきょとんとした目で言った。

「B組!?名前は!?」

「んー…そうだなぁ、そっちが教えてくれたら教える!」

彼はニヤニヤしながら言った。

なるほど、何とも脅しっぽい答え…まぁこの際いっか。

「あたしの名前はゆい、漢字で“優衣”!!」

優衣は大声で言った。

「俺の名前はつばさ、漢字は…ご想像におまかせしまっす!!」

彼…つばさは笑いながら言った。

つばさ?そんな奴同じ学年にいたっけ?

「つばさ何て奴知らないわよ?」

優衣は首を傾げながら言った。

「あれ?俺ちょい有名だって聞いたんだけど…何か存在感薄っ!!」

つばさはショックを受けたらしくその場に寝転がった。

つばさって言っても…あっ!!!思い出した…ありえないっぽいけど、間違いない…有名でイケメンとは!

「あの超モテ男のつばさね!?フルネーム“近藤 翼”!!!今超あんた人気よ!?」

優衣は叫んだ。

「詳しいご説明ありがとう…。」

つばさは苦笑いして言った。

ふと思うけど、あたし…そのイケメン君にひどい事言っちゃってたんだ!!!

「あっ…の…本当にごめん!!場所とか奪っちゃったり生意気言ったり…」

優衣は手を合わせながら頭を下げた。

「そうだ!じゃ、毎日この公園来なよ!そしたら許す」

つばさは何か企んでいる様子だ。

「お断りします」

優衣はニコッと笑って言った。

誰がこんな人がいない公園何かに来るもんですか!冗談にもほどがあるわよ。

「そんじゃ、辛いときとか来なよ。相談のるからさっ!条件付いてるからいいだろっ!?」

つばさはニカッと笑った。すると、優衣は笑いをこらえられず、思わず笑った。

「あははは!!あたし相談なんてしないし、それ以前に口堅いし!!相談なんて…あははは…はは…は…」

優衣の目から涙が一粒。その涙が溢れてきて…。

「ちょっ…優衣?」

つばさは心配そうに言った。

つばさを見てると少しずつだけど、分かってきた…この涙は悲しくて流れているんじゃない…嬉しくて流れているものだって…つばさを見てるとわかる。あたしは…どんなに悲しい事や、辛い事でも一人で抱えて生きてきたんだ。だから人に話す事なんて無かった。そんな事も言われた事無かった…。だから、その一言でこんな溢れる涙を流している。嬉しくて、嬉しくて…笑い泣きしちゃうくらい、嬉しかったんだ。

「ねぇ…あたし…つばさには…相談…してもいいかな?」

泣きながら由緒は言った。

「うん…」

つばさは笑って言った。その笑顔につられ、

「ありがとう」

優衣は静かに微笑んだ。



そして、フラれた事をつばさに話した。正直笑われると思った。だけど、つばさはこう言ったくれた、

「あーわかる、俺も中3の頃フラれたし…」

「本当に?つばさみたいなイケメン君が?」

優衣はつばさをからかうように言った。

「だーかーら!!そんな事言うなって!」

つばさは頬を赤くしながら、いった。

どうしてだろう…つばさといると、心が楽になってく。つばさといると楽しいし、落ちつく。友達みたいなものだった。

空は夕日で茜色に染まっていた。

「それじゃ、あたし帰るね」

「俺もそろそろ帰ろかなー」

茜色に染まった空を見て言った。そして優衣も空を見ながら、

「あたしら何時間話してたっけ??初め空見たとき、また青かったよ」

優衣はけらけらと笑いながらつばさに言った。

こんな奴に何時間もかけるとは…あたしも鈍ったものだなぁ。そして、例のイケメン君はあたしの3倍ぐらい鈍感だろう。

「そうだねぇ、2時間ぐらい話してたかも!!」

つばさは嬉しそうだった。

嬉しそうによく言えるなー。あたし友達とかの約束あったんだけど…まぁ過ぎちゃったものは仕方ないか。にしてもイケメンのつばさ君笑顔が子供だなぁ。今は笑顔になったら大人っぽい感じのが理想のタイプが多いんだよ、ふふふ…。

「あ、そうそう!!やっぱ毎日ここに来いよ!!」

つばさは大声で言った。それに対して優衣は息を吸い込み、

「だーれが行くもんですか!!!」

優衣は今までに言ったことのない声で叫んだ。

もう腹たった!!号泣してたのがバカみたい!!もう相談何てしないもんね!!

「もう一つ、学校では俺と話すの禁止ね!!」

つばさはニカッと笑った。

「誰があんたと喋るか!!喋るのは今日限りにしっ…」

優衣は口を押さえて言葉を止めた。

やばい…今ここで言うとやばいじゃん。あいつの事だから、女子とかに行っちゃって…それであたし嫌われちゃう!!

「どうした??もしかして俺と話したい??」

つばさは両手を腰にやって言った。

もう我慢できない…家でたっぷりこの日のために激怒するのを恐れて牛乳1パック飲んだのに…こんなん我慢できるもんですか!!!

「喋りたくないわよ!!一生!!あんたムカつくし、自信過剰??って言うのかな、まぁそんな感じでいやなの!!だからもう、この公園にも来ないし…一生あんたと話さないっ!!」

優衣は鋭い目でつばさを見ながら言った。

こいつのどこがモテんのよ!!いいのは顔だけっ!!たったそれだけじゃん!!皆男見る目なさすぎ!!そして…友達もこいつの事好きって言ってたなぁ。

「…ごめん」

つばさがポツリと小声で言った。

「あっ…こっちこそ怒鳴ってごめん…でっ、でも!話す気ないのは本当だからっ!!」

優衣はオロオロしながら言った。

あー…激怒しちゃだめだって…相手イケメン君なんだから…。何でこうゆう男って面倒くさいんかなー…いっそあたし男になりたい。

「でも、いつでも待ってるから辛い時とかあったら来なよ。まぁ話したくなかったらいいけどね。後、ひとつ…俺あんたと話したいわけじゃないから」

つばさはニヤニヤと笑いながら優衣に背を向けた。

え??どうゆう事??あたし…が自信過剰??だったの???もしかしてあたしの友達の中なんじゃ…って思うとあたしバカだ。あいつはあたしじゃなくて、友達に近づくためだったってワケ??あたしダシにされてんじゃん…いつもなら怒鳴ってるけど、今は怒る気すらない。あー涙でそう、なんでかなー…あたしあいつの事好きじゃないのになー…。でも何であいつにフラれた事話したの?何であたし…あいつの一言で泣いちゃったの??でも最後にあいつに…つばさに言いたかったんだ…

「待って!!そのっ…あんた!!じゃなくって…つばさ!!!!」

優衣は叫んだ。するとつばさは振り返り、

「何??本当に俺と話したいわけ?」

つばさは笑いながら言った。その問いに優衣は、

「話したいよっ!!!あたしっ、あんたに話して気持ちが楽になったし…何より楽しかった!!だから、毎日はこれないけど…できるだけ来るから相談にのってくれるっ!??」

優衣は大声でつばさに言った。

今のあたしメチャクチャじゃん。話したくないっ!!話したいっ!!どっちなのよーもう…。

「俺もそう言ってくれるの待ってた」

つばさは頬を真っ赤にしながら言った。

つばさもメチャクチャらしい。話したいわけじゃない。話したい。二人ともゴチャゴチャだけど、答えは同じだった。

「そういうことなら男がいうもんでしょーが!!!何であたしが言ってんのよっ!!」

優衣はつばさに指をさし言った。

もう!!変なこと言ってどうする!!

「ははっ!優衣も十分男みたいなもんじゃん」

つばさは手を腰に当て言った。

「なっ…」

優衣は口をもごもごして言うのをやめた。

やっぱりあたし女としてじゃなくって、友達としてなんだ。何かガッカリ。…って何あたしガッカリすることある!?何かあたし、つばさの事好きみたいじゃん。

「何??ビンゴ?」

つばさは自分の顔に指をさした。

「ビンゴじゃなくて、アウト!!!!!」

優衣は笑いながら、つばさの頭にグーで殴った。

「痛っ!!おい、殴るなんて反則!」

つばさを手を頭にあて言った。

ふふふ…あたしこれでも空手習ってたんだからね、弱かったけど。

「あたしに男とか言った罰ですぅ〜」

何とも低レベルなあたし、そして何とも中レベルのつばさ。

「まぁいいけど、暴力振るとモテないんだよ」

つばさはニヤニヤして優衣の耳元で言った。

「うぅ〜〜〜っっ!!」

優衣は顔を真っ赤した。

何この心がドキドキ感!!前の彼氏んときはなかったのにっ…そうか…耳元で言われたからだ。失礼なことを耳元で…。

「図星??」

つばさはニコッと笑って優衣をからかった。

「別にっ…別にモテたい何て言ってないもん!!!!」

優衣はもう一発つばさの頭にグーで殴った。

「そうっすか…」

つばさは苦笑いした。

ん〜痛そう…やっぱ空手した経験はいかせるのですねっ!

「はぁ…時間ヤバいからそろそろ帰らしてもらうわ。ばいばい少年君」

「は〜い、ばいばい」

二人とも手を振って言った。





あたしは毎日あるところに通っている。彼と毎日そこに来るという約束をしているからだ。その場所とは人の気配など全くしない、小さな公園。あたしはその小さな公園をこう呼んでいる。

『約束の場所』


今日も学校のチャイム。下校中にある人物を見かけた。その人は…

「つばさっ!!!」

優衣はその人物の背中を思いっきり叩いた。

「痛い。毎日下校中にこうするのやめてくれる?俺の背中真っ赤なんだけど。」

つばさは手で背中を押さえた。

「だって面白くないじゃん」

「そうゆう問題かよ…」

ある人物この人、つばさ。つばさとは学校にいるときも、話していいと許可を得てこうやって話していた。恋人とかじゃなくって相談相手&友達だった。


ある場所へとたどり着いた。そこは…『約束の場所』

二人共地面に寝転がり空を眺めていた。

「今日は何かありましたか??優衣ちゃん」

つばさは優衣の方へと顔を向けた。

「ちゃん付けやめろって何回言ったらわかるの!??これからあんたへのあだ名イケメン君にしていいのかな〜?」

優衣は脅すように言った。

「うっ…脅すなんて卑怯なマネすんなよ!!低レベルのおこちゃま!!」

その言葉に優衣は顔をひきつらせ、

「何よ!!中レベルのでくのぼう!!」

こんなに仲良くなったのも、あの日があったから。二人が出会った2日目に本当のこと言えたから、こんなにも言いあえるようになった。本当に今は悩み事も少ししかなくって幸せだけど…問題はあたしの気持ちだ。向こうは絶対あたしの事は友達って思ってるけど…あたしはそうじゃない。あたしは…友達じゃなくって好きな人として見てるけど、叶わぬ恋なのは知ってる。だけど…。

「どうした?ボケっとして」

「いっいや…何にも…」

優衣は慌てて言った。

「俺、お前に話さなきゃいけないことがあるんだ」

つばさは深刻な顔で言った。

「な、何??」

優衣は苦笑いしながら言った。

何よ。深刻そーな顔して…そういや、一回噂でつばさが彼女いるとか聞いたことある。確かその名前が…

「俺…亜季って子と付き合ってるんだ」

つばさは照れくさそうにいった。

そうだ…亜季って子が彼女だとか…あの噂本当だったんだ。しかも照れくさそうな顔して言わないでよ。そんなにその子が好きなの?あたし今まで両思いだって勘違いしてた…だから、あの2日目のときから毎日ここへ来て喋ったりしてるのに。

「あっそ」

優衣はそっけない返事をした。

あたしは確かにつばさが好きだけど、でも今はムカつく。その亜季って子も…つばさも…何かあたしすごい残酷じゃん。

「あっそって何だよ。何かもっと良かったじゃんとか言おうよ」

つばさはムスッとした顔で優衣に言った。

良かった?何が?

「嫌だ。何で一々そんな事で喜ばなきゃいけないのよっ!!!!!」

優衣は立ち上がって言った。

すると、誰かの声が聞こえてきた、

「つばさ君!!!やっぱりここにいた!!!」

その人とは…亜季…という、つばさの彼女さん。

「あー亜季ちゃん、また後で行くから今はちょっと無理」

つばさは申し訳なさそうにいった。

「行けばいいじゃない、あたしと話すよりその子と話したら?」

優衣はまたそっけないことを言った。

何であたしを優先するの?期待させないでよ。

「えっ、でもまだ話が」

つばさが慌てて言った。

「そんなの聞きたくない!!!はやくその子とどっか行って!!!!!」

優衣はつばさに背を向けた。

「何だよ!!!せっかく話そうと思ってたことなのに…お前がどっか行けよ!!!!」

つばさは怒鳴った。

嘘…。つばさが怒ってる…何をしても怒られなかったのに…今まであたしが怒ってばっかだったのに…もうわけわかんない。

「どっか行くよ!!どっか行けばいいんでしょ!!!!!つばさのバカ!!!」

優衣はかばんを地面に叩きつけ、その『約束の場所』を去った。



家に帰るとすぐに自分の部屋へと入った。

「今頃つばさとあの子イチャイチャしてんだろうなぁ…」

優衣は天井を見て言った。

携帯につばさのメールアドレス消しとこ…ってかばん放り投げちゃったんだ。取りに行かなきゃ!!あとメモ帳とか交換日記とかあるんだった!!


『約束の場所』へ優衣は辿り着いた。優衣は急ぎ足でかばんを取りに行こうと足を動かした。が、すぐに足を止めた。そこには、つばさがいた。

「な…んでいるの?亜季ちゃんは?」

優衣は驚きのあまり途切れ途切れに答えた。

「別れちゃった」

つばさがフッて笑った。

「どうして??」

優衣は聞いた。

どうして別れたの?もしかしてあたしのせい?あたしがいたから??

「俺がフッた」

つばさは空を見ながら言った。

はぁ…??フッた??何考えてんの!?つばさって本当にわけわかんない…あたしがフラれた話聞いたとき何とも思わなかったの?あの子きっと今頃泣いてる…。

「何でフッてんのよ!亜季ちゃん可哀想じゃん!!!!!!!!」

優衣はつばさの頭をグーで殴った。

「だって他に好きな人いるんだもん」

つばさがボソッと小声でいった。

じゃあなんで付き合ってたの?その好きな人って誰?亜季ちゃんは遊びだったの?いっぱい聞きたいけど、声に出ない…。

「好きな人って誰??」

優衣は精一杯の一言を発した。

これしか言えない、もし…もしも少しでも希望があるなら…それに賭けてみたい。これが最後。これで諦めるから。

「低レベルでおこちゃまで暴力的な優衣ちゃん」

つばさは優衣の方を見て言った。

「それってあたし??」

優衣はきょとんとしながら言った。

何かの言葉にひっかかるけど、優衣ってあたしの名前だよね?

「そうだよ」

つばさはニコッと笑った。

うそ…そんじゃあたしとつばさって両思いだったんだ…まさにドラマか漫画のストーリーでしょ。こんな時そうゆうふうになるのか…。

「そう…なんだ」

優衣は精一杯に答えた。

「そうなんだじゃねぇよ。返事くれないの?冷たいなぁ」

つばさは声を震わせて言った。

つばさは軽く言ってるけど…手も声も震えてんじゃん。

「返事は…あたしも…同じ…」

優衣は顔を真っ赤にしながら答えた。

あたし普通に好きって言えばいいのに、何でこんなに遠まわしに言っちゃってんだ。もう頭グルグルで顔めちゃ真っ赤。

「優衣」

つばさが言った。

「何?もしかして嘘じゃないでしょーね」

優衣が疑いながら言った。

「嘘じゃないよ!!どんだけ疑り深いんだよ〜」

つばさは笑いながら言った。

本当なんだ…何か嬉しいかも…

「それじゃあ、よろしくお願いします…」

「よろしく」

二人が言ったときの空は茜色に染まっていた。




学校のチャイム。

今日はつばさは休みだから『約束の場所』へは行かない。

もちろん向かう先はつばさの家だ。

急いでつばさの家に向かった。

10分程度でたどり着いた。

つばさの家のインターホンを押し、ピンポーンと鳴る。

ドアの鍵が開く音がした。ドアの隙間に顔をだしたのはつばさだった。

「入って」

つばさは咳をコンコンしながら言った。

「おじゃましまーす」

優衣は恐る恐る言った。

つばさの家はとっても広くて豪邸…なにより部屋が凄く綺麗でピカピカしている。

「ちょっとお茶入れるから持って」

「あっいいよ!!あたし入れるからっ!!病人は座るか寝るかのどっちにしなさい!」

優衣はつばさの背中を押した。

「ありがとう」

つばさは笑って言った。

それにしても広い…初めてつばさの家来たときは腰がヤバかったっけ??何かもうお屋敷みたいだからな…。

「つばさは何か飲む?病人はいらないか」

優衣は冷蔵庫をパタッとしめた。

「優衣のそのお茶ついでに貰うー!!」

つばさが優衣のお茶を横取りした。

「あー!!あたしのお茶〜返せっ!」

優衣はつばさが奪ったお茶を奪い返した。

「お前なぁ〜病人をいたわる気持ちがないのか!?」

つばさは脅すように言った。

そういえば、初めて来たときも言われたけど…もう手にはのらないのさっ!!

「ない!!」

と優衣は言った後にお茶を飲み干した。

でも親とかいないのかなぁ〜前来たときはつばさと付き合ってなかったから緊張してないけど…何か今緊張する。

「優衣本当に容赦ないな〜」

つばさは自分のベッドに寝転がった。

「当たり前!!」

優衣は手を腰に当て言った。

もう帰ろうかなぁ…今7時だしそろそろお母さんとかに激怒されてしまう。

「つばさ、あたしもう帰るね。お母さんに怒られるし」

優衣は玄関へと向かった。

「はいは〜い、それじゃ明日には風邪治しとくね〜」

つばさは手を振りながら言った。

そして優衣も手を振り返し、自分の家へと帰って行った。




今日はなんだか気分がいい。それは本当に一日で風邪を治し、学校に来ていたからだ。帰り道、つばさを見かけ、

「本当に学校来たねっ!!」

優衣が嬉しそうに言った。

「あぁ。あんくらいの風邪ちょろいちょろい!」

つばさが胸を張って言った。

まぁ何にせよ来てよかった。今日は絶対『約束の場所』行くんだもんねっ!!どうしてもあの場所に行きたい。昨日はつばさの治療してたし!!

「あーあ、昨日残念だったなぁ〜優衣が帰ったあとにケーキあったのに!」

つばさが優衣を見て言った。

「ちょっ何それ!!!ケーキあたしにも頂戴よ!」

優衣がつばさを叩きながら言った。

「だって帰ったじゃん〜帰ってなかったら良いことあったのになぁ〜」

つばさが優衣の頭にでこぴんをして言った。

「残しとぐらいいいじゃん!!!よし、じゃあ今日はケーキおごってもらうぞっ」

優衣が手をグーにして上へ挙げた。

ふふ、そんな手であたしを見下そうなんて無駄無駄!!

「何だよそれ〜金が飛ぶ〜」

つばさはサイフをぶらぶらしながら言った。

「飛べばいいの!!どうせ何も買うもんないでしょ?」

優衣は流し目でつばさを見た。

「うっ…それはそうだけど…」

戸惑うつばさに、

「よし、じゃあ一緒にケーキ食べよっ!!あたしもお金出すからっ!」

優衣はそう言い、後ろ向きでつばさを引っ張りながら歩いていると…後ろから車が猛スピードで優衣の方へ向ってきた。それを見てつばさは優衣をひっぱりはずみで優衣のいた場所へと行った。そして…車はブレーキをかけたが止めれなかった。






お葬式――…たくさんの人が入ってきた。あたしはあまりの勢いで気持ちがついていかない…どうしてだろう?なぜあたしここにいるの?これは誰のお葬式?お母さん??お父さん??違う。家族よりも、もっと大切な人。

近藤 翼 

誰かに言われても死んだなんて思えない。

誰かが泣いてても死んだなんて思わない。

だってケーキ買いに行こうとしただけだよ?あたしのせい?あたしのせいで…つばさ死んじゃった?死んだ?死んでなんかない…今だってきっと隣に…いるはずなのに。どうして隣にいないの?いつもなら、

「大丈夫、俺がいるから」

とか声かけてくれるくせに。今何でいないのよ。どうしていないのよ。あたしが引っ張ったから?そうか…あたしのせいなんだ…。

こんなに悲しいのに涙が出ないのはどうして?

こんなに苦しいのに涙が出ないのはどうして?

こんなに辛いのに涙が出ないなんておかしいね。

きっと答えは『約束の場所』にある…



そこは人がいない小さな公園。緑一面に広がっていて、寝転びたくなるほどのところ。そこは『約束の場所』つばさとあたしの約束。毎日この『約束の場所』で会う約束。今日もまたつばさは来るよね。

でも、1時間経っても来ない。どうしてだろう?でも今になって涙が一粒。やっと答えがわかった。つばさはあたしが死なせた…。あたしは人殺しなんだって…。あの名前を呼べば帰ってくるかな?

「つばさ…つばさ…つばさ……」

何度呼んでも帰ってこないね。やっぱりつばさは死んだ…死んじゃったんだ…。本当に死んじゃったんだね…もうあの人には会えない。

会いたい

会いたい

会いたい

こんなことなら、早く出会ってもっと一緒に話せばよかった。

もうあたしの心から出てくるのは後悔ばっかだよ…。

どうして?どうして?どうして?神様はやっぱりいじわるなんだね。どうしてもあの頃に戻りたい。戻れるなら死んだって構わないから…。

本当に会えないの?どれだけ心で叫んだって泣いたってつばさは戻ってこないのは知ってる…でも、もう一度この『約束の場所』で話したかった。

もう一度、もう一度、もう一度…

どんなに唱えたって時間が戻るわけじゃない。これはあたしが招いたんだから…あたしのせいなんだ。



つばさ…ごめんね。

本当はもっと生きたかったよね?

本当はもっと話たかったよね?

本当はもっと幸せになりたかったよね?

そんな思いもあたしが消しちゃった。あたしがつばさをメチャクチャにしたんだ――…。


あたし、2日目のこと絶対忘れない。

あの茜色に染まったきれいな空で約束したことも…

今までの思い出も…

全部背負いながらつばさの分まで生きるから…精一杯生きる…

だから、嫌だと思うけど…こんなあたしを見守っててください。



これがあたしとあなたの最後の約束。






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― 新着の感想 ―
[一言] いわゆるケータイ小説に大きな影響を受けている作品だと思います。 私はそういった類の作品を今まで読み通したことが無いので、興味深く読めました。壮大な恋の物語を少ない語彙と語数で表現することで現…
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