あの・・私は悪役令嬢で既婚者なのですが・・・ヒロインさん早く助けてください!
「「「「リルベル嬢!(私 俺 僕)と結婚してください」」」」
私は今、王太子と次期宰相、次期騎士団長、次期公爵から求婚されてます。
うん、現実逃避したい。
私のどこがいいわけよ。
「私があなたを思う気持ちはこの中の誰よりも強いです!
もし、王妃になりたくなくて断っているのならば私と駆け落ちして平民として添い遂げることを誓いましょう。」
いや、あなたは王太子なんだよ・・
跡継ぎのいないこの国はどうするの・・
まさかとは思うけど国民全員を見殺しにするつもり?
あと、駆け落ちはよくないよ・・
私も駆け落ちして彼と結ばれたけど最後は経済的に子供をいい学校に行かせれなかったのよね・・
うん、駆け落ちはよくない!
駆け落ち だめ 絶対!!
「君が俺を選んでくれたらいつも君のことを一番に思い君の願いを必ず叶えると誓おう!侯爵家は君のことを大歓迎する!侯爵家の財産を使い贅沢もさせてやろう」
いや贅沢はだめだよ。
縁も全くない人が大切な財産を使っていいわけないでしょ・・
昔もボーナスもらって嬉しすぎて一回で使い果たしちゃったんだっけ・・・
侯爵家ってことはもしかしたら「私の息子をタブらかしたな!」ってシュウトメ問題にも発展しそう・・
贅沢 だめ 絶対!!
「俺と来てくれたら絶対に傷つけないことを誓う!それにうちのご飯は旨いぞ!ステーキに唐揚げに他にも色々あるぞ。だから俺と結婚してくれ!」
まあ貴方は次期騎士団長なんだから怪我はしないでしょうね。
でもあなたの言うご飯の栄養は・・
恐らくあなたの言う他にもの中には野菜や魚は入っていないのだろう。
前世でも好きなものしか食べなくて栄養失調になったんだよね・・・
栄養の偏り だめ 絶対!!
「義姉さん。僕と結婚してくれ!義姉さんが僕と結婚してくれたら仕事は全部僕がやるし義姉さん、いやリルベル嬢
昔から好きなんだ。結婚してくれ!」
うーん仕事の任せっきりはよくない。
それに昔からって・・まだ本当の兄弟だと思ってたときからってことだよね・・
そんなときから・・・
あの眼差しは親愛じゃなくて 愛 だったのね・・・
というか私は既婚者なんだって!!
不倫 だめ 絶対!!
「全てお断りします」
「「「「は?」」」」
「私は既婚者です!」
「「「「・・いやいやいや」」」」
「これで失礼します!」
私は走り出した。
本来であれば令嬢が走るのはタブーとされている。
けれどいまはそんなことを気にしている暇なんてない。
「「「「待ってください!!!!」」」」
待つわけないじゃん!!!
ある意味ホラーな絵面だよ。
だってある一人の女性を四人の男性が互いに視線で火花を出し合いながら追いかけてるんだよ。
しかも血相変えて。
怖くない?ねえ怖くない?
結婚してるのに結婚してって迫られてんだよ?
助けて!誰でもいいから。早く助けてください!
「お待ち下さい!お嬢様が困っております。」
そう言うと私を庇ってくれたのはメイドのモニフェだ。
ありがとう!モニフェ様!神様!仏様!
・・いやでもこうなったのもモニフェのせいだし・・
モニフェはこの乙女ゲーム
「ウエトリーシリーズ~国の人気者~」
のヒロインだ。
本当であれば私は悪役令嬢としていじめなければいけないが・・
平和主義の日本人が激カワな子をいじめなんてできると思いますか??
金髪にくりくりな青い瞳。
彼女の上目遣いをもろに喰らうと何秒か固まってしまうが最後にはもうあの子の虜。
く~私も転生するならあんな美少女がよかった~
ちなみに私は前世と相も変わらず黒目黒髪だ。
唯一の救いは前世から私の容姿は顔面偏差値がとても高いこの世界でも通用するものだったということ。
・・いや自慢じゃないからね。
だから冷たく接するという手段を取っていたのだが・・
ある日彼女がいじめを受けている所を目撃してしまった。
は?なんでそんなことできるの?
あり得んわーまじで。あり得んわー
権力を使い撃退すると・・なついてくれた。
なついてくれただけならまだよかったのだが何故か私のメイドになっている。
本当にどうしたものか・・
というか攻略対象もヒロインに落ちなかったとして何故悪役令嬢に落ちる?
魅力度としてはこんな感じだし
ヒロイン+100
普通の令嬢+10
悪役令嬢ー1000
どうして普通の令嬢に落ちず悪役令嬢に落ちる。
求婚されたとき一瞬「頭おかしいんじゃない!!」と叫びそうになってギリギリ耐えた自分を誰か褒めてほしい。
というか今はそんなことどうでもいい。
モニフェが足止めしてくれている間に逃げよう!
「ありがとうモニフェ。そのままで!」
走る~走る~。
頭の中であるBGMが流れたが気にせず走った。
私は城の外に向かってずっと走る。
「待ってください!リルベル嬢!」
目の前の階段を降りれば城の扉は目の前なのに・・・
恐らく私の手を掴んでいるのは次期騎士団長の彼だろう。
はーなーせー
私は彼に恨みを込めた視線を送るが彼が私を離してくれる気配はない。
少し力をいれて引っ張ってみてもびくともしない。
「離してください!」
そう言うと彼は素直に離してくれた。
私は降りる。
結構な高さの階段だから油断はできないができる限り早く。
やっと、やっと着いた!
城の外には馬車が用意されていた。
恐らく彼が用意してくれていたのだろう。
彼とはファイサン・フォン・スノスト皇帝。
これから私は帝国に嫁ぐことになる。
彼らは恐らく私が嫁ぐことを知っていたのだろう。
だからこそ嫁ぐ前に私に想いを伝えたのだと思う。
そんなことしても私は行くに決まっているのに・・
馬車に乗り込むとすぐに出発した。
外から誰かが呼ぶ声がする。
けれど私は振り返らない。
前を向いて生きていく。
私の前世からの旦那様と共に。