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ページ49 も、もう無理っ

「青井さんこれを──」


 改めて席についた青井さんにオレはある物を渡した。


「これは魔石だね。昨夜の怪物から出たのかい?」


「はい、何かに使えるかもしれないので調べてもらえないでしょうか」


「それは助かるよ。東日本支部ではいくつか見つかっているが、まだ何もわかってないんだ」


 まあオレが持っていても仕方ないしね。

 きっと信用したという証にもなるさ。


「それとさっきの話で一点気になってることがあるんです」


 オレもまだ確信は持てていない。

 けど、伝えて置いて損はないだろう。


「実はオレも初めはゲームの世界からモンスターが現れたと思ってたんです」


「というと?」


 オレはこれまでにわかったマナダウンやノエルの精霊石にまつわる話や、UIユーザーインターフェースが出なかったことを伝えた。


 ゲームにはなかった仕様やアイテムの存在。

 そして、ゲームでは当たり前に使えたモノが使えなくなっている事実。

 これらが何を示しているのかはまだわからない。


「なるほど、ゲームとの差異か。とても興味深い話だ……」


 背もたれにもたれ掛かり腕を組んだ青井さんが眉に皺を寄せた。


「うん、冒険者でなければ気付けない点だね。ありがとう、報告しておくよ」


「よろしくお願いします」


 素直にこちらからも手札を明かしたことで、青井さんも一息つけたよう。

 協力者になると決めたことだし、使えるものはどんどん使っていこう。

 期待しているよ青井くん。


「では、僕からはこれを──」


 そう言って青井さんが取り出したのは、黒い布だった。

 それを見たノエルが深刻そうな顔で告げる。


「食べ物、なの?」


「お前は布まで食う気かよ」


 だがまあそのおかげで場の雰囲気が少し和やかになった。


「もぉノエル、さっき食べたばっかりでしょ」


「あはは、後で今朝の残りが無いか聞いておくよ」


「やったーなの! マコトはやっぱりいい人なの!」


「うちのバカがすみません……」


「大丈夫大丈夫、それじゃ説明を続けるよ」


 ノエルが気を遣ったのかと思ったオレがバカでした。


「この腕章はゼロの協力者と認められた人に支給される物で、No.4という数字は、君達が日本で四番目の協力者またはチーム──この場合はパーティかな、ということを示している。大事なものだから無くさないでくれよ」


 腕章には日章のマークを挟む形で『ZERO』、そして『NO.4』という黄色い刺繍が施されていた。


 それぞれ受け取って左腕に取り付ける。

 安全ピンに戸惑っていたノエルの分は佐伯さんが付けてくれた。


「日本では四番目だが、西日本では最初の協力者だ。これからよろしく頼むよ」


「「「はい」」なの」


 オレがゲームをプレイしていた当時で、総プレイヤー数は一万人を超えていたことを考えると、そのあまりに少ない数に頭が痛くなった。


 そして、青井さんがにこやかに告げたのだ。


「早速で悪いけど、準備が出来次第ヘリで君達の学校へ移動するから」


「え……?」






  ◆ ◇ ◆






 喉の奥がイガイガする。


 頭上からは腹に響く騒音。

 そして足元の装甲からは、二射目の矢が当たる音が響いた。

 ここは赤神学園の上空、ホバリングするヘリの中だ。


「これ以上は危険です。一旦浮上します!」


 ヘッドセットから篠崎(しのさき)さんの声が聞こえてきた。


 篠崎さんというのは、青井さんの後ろに立っていた渋メンで、もう一人のジャガイモ顔が菊池(きくち)さんというらしい。


 押し寄せて来る高度上昇に伴う気圧の変化にオレは咄嗟に口元を抑えた。

 も、もう無理っ。


「先に降り、ます……うっ」


 直後、腹から喉にかけて熱い物が競り上がってきた。


「待つんだッ! 一人であの数はいくらゲームの力があると言っても──」


「ジャドウ、ヴォーグゥ……」


 口ごもった声でスキルの発動し、身体が黒い霧と化して胡散する。

 後には付けていたヘッドセットだけがその場に残り、一同は騒然とした。


「えっ」


「ユウトが消えたの!」


「これはまた……」


 佐伯さんとノエルが身体を乗り出して驚愕し、青井が眉をひそめた。


「今、影歩行(シャドウウォーク)って……」


「ああ、僕にもそう聞こえたよ。確か……ウォーク系のスキルというのは極一部の冒険者にだけ与えられるユニークスキル、だったかな?」


「はい。職業(クラス)別で獲得経験値上位三位のみが使うことが出来るユニークスキルです。でも、1万人以上居るプレイヤーの中で上位三位に入るなんて……」


「あんなスキル、聞いたことないの」


 目下で胃物をぶちまける、残念な少年を見守りながら三人は語る。


 影歩行(シャドウウォーク)

 実体の無い影となり、影から影へと五秒間移動することが出来る。

 移動距離は通常の移動速度に比例し、一日使用限界五回。


「で、でも……そんなことあるわけないんですよ!」


「というと?」


「受験勉強のために一年前に引退したはずの影山くんが、今も上位三位に入っているわけがないんです!」


「なっ──。それは本当かい!?」


「はい、本人が言ってましたから」


「これはどういう……」


 職業(クラス)別で獲得経験値上位三位のみが使うことを許されたスキル。

 青井はその理由を三つほど思い描いた。


 一つは、影山が佐伯に嘘をついた可能性。

 実は引退せずにゲームを続けていた場合だ。


 二つ目は、以前に取得した者が今になって使えるようになった可能性。

 これは影山からの報告で、ゲームだった頃と違う点があるとわかったからこその発想である。


 だがそのどちらもが都合の良過ぎる解釈だった。


 彼らが通う高校の偏差値がどの程度か、青井は知っている。

 勉強の片手間程度で上位を取れるほどランキングは甘くはない。


 そして二つ目は考えた先から否定していた。

 九州で回った者の中に、別の職業(クラス)で上位三位に入ったことのある有望株が居たからだ。


 彼は現実世界で十年ほど職に就いておらず、体系も酷い有様だった。

 その上、母親から泣きながら連れて行かないでくれと懇願されたのだ。あれは本当に苦い失態だった。だがその時に渋々情報だけは得ていた。


 そして、残された最後の可能性。

 佐伯に告げたことが真実で、一年前の影山のレベルが現在も上位三位に食い込んでいるというもの。


 しかし、その可能性こそ一番あり得ないのだ。

 ゲーム開始から、二年しか運営されていないゲームである。

 引退後一年も経っているにも拘らず、未だに上位三位に食い込んでいるとでも言うのか……。


「僕はもしかして、とんでもない大当たりを引いてしまったのかもしれない」


 青井は身体の身震いを感じながら目下の行く末を静かに見守った。

 そして、話の内容に途中から付いていけなかったノエルが、ふと窓の外の景色に眉に皺を寄せのである。


「あれは……」

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