9.真面目にやるって決めた
ちょっと短めです。
学校に着くと、俺は、澪たちが来る前に移動をした。もうそろそろ4月が終わるが、まだ寒い。だけど、みんなと合流したら、それに甘えてしまうかもしれない。だから、4階の美術室に行く。実は昨日、担任の先生にお願いして、美術室を朝、解放してもらえることになった。
「おはようございます。」
「おはよう、七瀬君。席は好きなところを使って?」
「はい、ありがとうございます。」
「どういたしまして~!」
俺は適当に席を選んで、そこで準備を始める。すると、横でストン、という音がした。
「先生・・・・・・?」
「七瀬君、パソコンできそうだから、ちょっと作業を手伝ってもらおうと思って。」
「・・・・・・少しだけですよ?」
「ふふっ。優しいね。ありがとう。」
なんだろう。身長が低いから、ようちえ・・・・・・小学低学年のお願いを聞いている感じになってしまう。
「・・・・・・?どうしたの?」
「いえ、なんでもありません。俺はこっちで自分の勉強をやるので、やって欲しいときは言ってください。」
「うん、わかった。」
カタカタカタ、カタカタカタ。・・・・・・。
「?」
・・・・・・。
「どうしたのですか?」
「パワーポイント、私、わからないの。」
ポンコツだ・・・・・・!この先生、見かけ+ドジで子供って言われてるんじゃなくて、知識的な面でも学生と変わらないから子供って言われてるんじゃないか・・・・・・?
「先生、なら、俺が使い方を教えるので、頑張って覚えてください。」
「あ、ありがとう!」
なんでそんな子犬みたいに喜ぶんだ?どうやって職員になったのか、不思議だ。
「まず、この一枚目のスライドはできあがっているんですよね?」
「すらいど?」
そっから!?
「スライドっていうのはですね。この一枚のことです。」
「なるほど。終わってるわ。」
「なら、ここをこうやって・・・・・・。」
こうしているうちに、朝の予鈴が鳴った。
「ごめんね?朝、勉強しに来たのに。」
「いえ、構いませんよ。明日も美術室に来てもいいですか?」
「あっ、うん。大丈夫だよ。・・・・・・パワーポイントもお願いしていい?」
「はい、大丈夫です。そこまで焦って勉強しているわけでもないので。」
「・・・・・・?よ、よくわからないけど、ありがとう。これからよろしくね?」
「はい、よろしくお願いします。」
俺は、美術室で朝、先生にパワーポイントを教えることになったようだ。
「期待してるからね?七瀬先生っ♪」
・・・・・・こっちも隔離の対象に当てはまるのか?
「あまり期待はしないでくださいね?俺もそこまでできるわけではないですから。」
「そこまでって、どこまでできるの?」
「入学式で見たあのスライドくらいならできます。」
「すごいじゃない!」
「そんなことないですよ?」
「あっ、そうそう。気になることがあるんだけど。」
「何でしょうか?」
「私のこと、子供って思ってる?」
・・・・・・。
「そんなことはありませんよ?すみません、そろそろ間に合わなくなってしまいますので、失礼します。」
「あっ!逃げたな!!」
「違いますから。では、教室で。」
仕方ないじゃないか。・・・・・・子供のオーラが溢れているのだから。
姫川「七瀬君、頭いいし、優しいわね。それに、あのとき持ってきていた勉強導具、どうみても中1の内容じゃない。・・・・・・はず。私には理解できなかったけど。え?誰!?頭の中に声が・・・・・・?お前は誰だって?1年5組担任の姫川先生よ!」