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知らない天井。よく異世界転生ものであるやつだ。クラスのオタク女子たちが話していたのを聞いたことがある。気になって電子書籍で買ってみるも、何だこの幻想話と思っていた。
「今度はどこだろ…」
先程のいかにも高級そうな外壁から何まで光り輝いている部屋とはかけ離れた、ボロアパートのような部屋だった。そして私は1人で寝るには少しだけ大きいベッドに横たわっていた。
少しかための枕と薄い布団、寝転がるとギシッと音がなる。いつも使っているベッドとはかけ離れたものだ。
起き上がるのも面倒だったが寝たままでいるのもなと思いベッドに腰かけた。辺りを見渡す。
「ほんとボロいなぁ」
木でできた崩れそうで崩れない部屋。あるのはベッドと本棚だけ。狭い訳では無いが何も無い。設計ミスのような木がズレた場所があったのでそこから外を覗いた。晴天だ。そして下を見ると日本とは違う景色が広がっていた。中世ヨーロッパのような街並みだった。
「なにここ…」
呆れながら驚いているとドタドタと階段をかけ上る音がしてきた。私は咄嗟に隠れなければと思いベッドの下に入ろうとした。が、おしりつっかえて止まってしまった。
ガチャっと、いや、そんな扉みたいな音ではなくキーッと引きづる様な音を上げ誰かが入ってくる。
「お昼ご飯持ってきましたー!」
声だけでわかる、可愛い子が来たと。その子は私を見て
「な、何してるんですか…。エロ本でも隠してるんですか…?」
と蔑むように言ってきた。男子高校生がベッドの下にエロ本隠すような光景に思われたのだろうがただおしりが挟まって出れないだけです。
「と、とりあえず足引っ張ってくれない?」
声からして自分より年下と思われるその子にお願いした。情けない。家に帰ったら筋トレして痩せと、誓った。……家ってどこだ…。
「はぁ…引っ張りますよー」
持っていたお昼ご飯と思われるものが床に置かれ、足の前に立った。
ぐいっと容赦なく足首を持ち引っ張ってきた。太ももが木とこすれて痛い。絶対赤くなってる。
「あ、ありがとう…」
少し顔を赤くして恥ずかしがりながら礼を言う。まだ顔は見れない。
「いえいえ。あ、これお昼ご飯です!」
どうぞと言いながらおぼんごと床を滑らせ私の前に置いた。その時初めて彼女の顔を見た。
「このサラダは私が畑から取ってきた野菜を使って作ったんです。このスープは昨日から煮込んでるんですよ。このパンは…」
コース料理を食べる時みたいに説明し始めた。要は全部自分が作ったということで自慢しているのだ。それよりも私は気になることがあった。だから説明は聞いていなかった。
白い肌、白い歯、可愛らしい鼻にピンクがかった唇。大きな黒目に長いまつ毛。灰色を少し薄くしたような髪色、肩まであるボブのような…。顔は小さく、体は華奢で、手足なんか細くてワンピースがぶかぶかのようで、爪は潤っていて、胸は…ぺったんこで。
「…あ、この部屋もですね! 私がここに来て初めて作ったベッドがあるんですよ!…って聞いてます?」
いきなり美少女が胸を見ていた私の視界に入ってきた。心配そうにみる顔がとてつもなく可愛く、美しく、可愛く…。
「かわいい…」
「は? 何言ってんの?」
口が悪いようだけどそれがまたよかった。