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「言うのが恥ずかしくて…」
顔を手で隠し頬を赤くする。
「だ、だって! 女の子は男の子のことを好きになるんでしょ!? こんなの恥ずかしくて言えないよ…」
風邪を引いて寝てたとは思えないほど元気にあたふた動いている。
ワンピースの裾を掴んだり、布団を叩いたり、髪をくしゃくしゃしたり慌てているリナを横目に言ってやる。
「イオさんから聞いたのその話じゃない…」
ぴたりと動きが止まる。数秒の硬直の後リナがしゃべり出した。
「え、え、じゃあイオさんと出会ったのが風俗だってことも? そのままワンナイトしたことも? 私が道行く人襲わないように男が来るの宿屋で働かせたことも? アオイが寝てる時何度も襲おうとしたことも?」
「全部知らない。てか何最後の」
「えぇぇぇ!」
「私が聞いたのはリナに親がいないってこと…だけ」
内容が内容だからオブラートに包んで言おうと思っていたことを言ってしまった。するとリナの目はぱちくり開いて見つめ合う。
え? 襲われる?
「親か…いないよ。うん、いない。でもいいんだ。アオイがいるしイオさんもいるし気にしてない!」
「そっか」
ぎこちない笑顔になってしまった。それをリナも察した。
「あ、アオイ! 一緒にお風呂入ろ!」
「なんで!? 襲うの!?」
「違うよー入ろかなって思っただけ。そういう時あるでしょー」
「んーまあねぇ」
「じゃあいこっ」
手を引っ張られ階段をおり、いつも入る小さいお風呂じゃなくて大浴場の方に行く。今日は誰も入らないらしい。
脱衣所で服を脱ぎ、置いてあるタオルを風呂の扉の前にかけておき入る。
リナは自分のトリートメントと洗顔クリームを持ってきていた。
「それどこで買ったの?」
「いつも行くお店があるんだ。明日一緒に買いに行く?」
「うん! 給料入ったしね〜」
扉を開けると熱気が顔にかかる。それと同時に温泉とわかるにおいがしてきた。
熱い空気と冷たいタイルがちょうどいい。
体を洗うためシャワーの元へ向かうと誰かが1つシャワーを使っている。
後ろ姿からわかるセクシーさ、胸が腹のラインをはみ出している。
「あれー?」
リナが口を開く。
「イオさんじゃないですかー? その体」
「あら? 2人ともお揃いで。アオイちゃんはさっきぶり」
「さっきぶりですね…」
なんでいるのー!? リナは体で判断しないでー!?
この状況、体を重ねたものが2人、そこに交わる未経験な私。
襲われるのでは…?