第6話 初めての戦闘②
「グォォォ!!」
下からの小石アッパーで捕食を邪魔され、オオカミは怒りに咆哮をあげる。先程よりずっと、ダメージにもならないがいつどこから来るのかも分からない小石に、オオカミのイライラは、はちきれんばかりに膨れ上がっていた。
「ガタッ」
先程の咆哮に驚いたのか、床下で物音がする。
続いてカサカサ、となにか小動物が動き回るような音。突如止む小石。しめた、とオオカミは思った。
所詮は怯え隠れながら攻撃を当てるだけの弱者。今までは正体不明の攻撃に手が出せなかったが、相手の位置が分かってしまえばこちらのものだ。もはや袋の中のネズミも同然、ひとひねりで潰してくれよう…
…とでも思ったか、馬鹿め、そいつは罠だ!!
この物音はつい先程手に入れたスキル[土操作]だ。これを使って床下の土を操作し、音を出しながら動かしている。前世でたまに、布の下でおもちゃを動かして猫をじゃらしていたが、イメージとしてはあれに似ている。
音を目で追うオオカミを見ていると、猫と遊んだ時を思い出して懐かしくなる。まあ、今は人ひとりの命がかかっているから、遊んでいる余裕はないんだけどね。
そして、ふと止まった所に、攻撃を加えようとオオカミが口を大きく開く。その口の中に魔力がどんどん集まっていき、やがて白く光り輝くエネルギー球となる。
「ガァッ!」
エネルギー球は床で爆発し、木製の床が焼け剥がれて大きな穴が開いた。熱い、と思った直後、この世界に来て初めての「痛み」が襲ってきた。
[魔力の流れと属性を観測。通常スキル:魔破砲です]
[通常スキル:魔破砲に関する情報のメモ機能が解放されました]
ぃっっだぁぁぁ!!!!痛い、痛い!転んだ時の痛さの比じゃない!まぁ、地面まで貫通しているのだから、そりゃそうか!
しかし!!ここまではおおむね計画通りだ!
空いた穴からは、地面が露出している。そこをオオカミが踏みしめ…そして、再び足を上げることは叶わなかった。
「キャウゥン!?」
露出した地面は底なし沼のようにズブズブとオオカミの足を呑み込んでゆき、全て入り切った所で今度は固まって締め付け、離すことを許さない。
残り少ない魔力を振り絞って[土操作]を全力行使した結果だ。これでもう、1歩も動けず、少女を襲うことなど到底出来ないだろう!
ふはははは、ふははは、はは…
…で、どうすればいいんだ?
いや、動きを止めたはいいが、オオカミを倒すことも、ずっとこのままキープし続けることもできない。そしてオオカミはというと、脱出しようともがき続けており、いまこの瞬間にも出てきてしまいそうだ。魔力が残り少ないせいである。
これはもしや…詰んだ?私の今までの努力は無駄だったというのか!?
「ЖПЙσЕНо!!」
突如、弱々しいが、耳障りのよい福音が鳴り響く。
そして光の矢がオオカミの心臓を貫き、そのまま動かなくなった。
光の矢が放たれた方を見ると、そこには目を覚ました少女が手を伸ばしていた。