第5話 初めての戦闘①
少女はこちらを認識すると、ふらふらと危なっかしく走りながら家の中へ入っていき、倒れてしまった。そしてオオカミはその後を追う。
ポッ、ポルターガイストぉ!!
そうはさせるかと少女とオオカミを隔てるように扉を閉めるが、抵抗虚しく蹴破られてしまう。
糸が切れた人形のように起き上がらない少女のもとに、オオカミは舌舐めずりをしながら一歩一歩近づいてゆく。
毛が青くて一本の角が付いているあたり、見るからに普通のオオカミではない。
[ポルターガイスト]でさっきから小石を当てているが、誰が投げているのかとキョロキョロするばかりで、ダメージが通っている様子はない。焼け石に水だ。やばい、勝てないかもしれない…
作戦を立てるためにも、とりあえず[鑑定]を行う。
<種族名称…情報不足により取得出来ませんでした。これにより、この種族名称をオオカミと設定します>
<オオカミの物質情報、生体情報を取得しました>
<オオカミの遺伝子情報を取得しました>
<オオカミに関する文章のメモ機能が解放されました>
違う!私が今知りたいのはそういうことじゃないんだ!…と言おうとしたが、いや、これは意外と使えるかもしれない。
取得した情報を開示すると、オオカミらしきモンスターの身体の構造に関する情報が分かる。どこにどう血管が通っているのか、どこに心臓があるのか…つまり、弱点が丸わかりなのだ。
そこで私はとある作戦を思いついてしまった。何も正々堂々戦う必要などないのだ。少し、いや大分エグいが、武士道精神なんてイヌにでも食わせておけ。
[鑑定]で認識したオオカミの心臓に[家具創造]で小石を作り、人為的に血管を詰まらせ心筋梗塞を引き起こす。こうすれば、最小魔力でほぼ確実にオオカミを倒すことができる。…想像してみるとかなり恐ろしいな。
だが、迷っている余裕はない![家具創造]!
<指定された位置は相手の魔力制御範囲内です。…[家具創造]に失敗しました>
小石を作ろうと私の命令に沿って集まっていた魔力は、何か別のもっと大きな命令、魔力によって離散した。体内での魔力の操作は、その体の主が絶対的に有利で、他人がどうこうしようと思ったら絶大な魔力差がないといけないようだ。なるほど、だから火魔法とかも相手の体内で発火させずに外側からぶつけるのね。
ってやばい、やばい!これがダメだったらどうしたらいいんだ!せめて相手のステータスが分かれば…!
そうだ、そうだよ、こんな時のための[鑑定]だよ!ここで相手のステータスが分かれば、無駄に凄いのに使えない、なんて言ったこと謝るから!もはや私にはこれしかないんだ![鑑定]![鑑定]!
私は祈るようにひたすら[鑑定]を打ち続けた。その対象はオオカミという器から、もっと奥のなにか、根源的なものに迫り…
<魂に刻まれた情報を読み取りますか?>
え?なにか大がかりそうなものが始まった… 答えはもちろん、YESだけど。
<…成功しました。情報を開示します。>
₩ロσว₩:σ<₩●!┃
>[]/@*├㎞ ▶₩σÜ/tmga6
⑭㈠ⅳⅶⅩ$Б™♣ ┃㎞УНШ
чроИПЖЁРП ФЙЕКБМЛИЁ
σУНП ЖЕоЕКИМ
<オオカミのステータスがメモされました>
えっえっ……ええ!?
とりあえず、鑑定は成功しましたと言わんばかりに、私の頭に記号のようなものが浮かび上がった。これは…文字か?
地球にいた頃には見たことのないものだったから、恐らくはこっちの世界の文字なのだろう。少しも読めない。
有言実行、ひとまず、使えないと言ったことは謝ろう。
そして、なるほど、やっぱり使えない子じゃないか!!
…あれ?もしや[鑑定]がだめな子なのではなく、その使い手が悪いのか…?
…いや、考えるのはよそう。
それよりも今は目の前のオオカミだ。
[ポルターガイスト]で小石をぶつけることによる時間稼ぎもそろそろ意味をなさなくなってきているしね。
今一度この絶望的な状況を整理してみよう。
オオカミが今すぐにでも、起きる気配のない少女に喰らい付いてしまいそうだ。[ポルターガイスト]は圧倒的な火力不足で意味をなさず、[家具創造]は上手くいかず、[鑑定]に至ってはこの有様だ。[魔王城の意思]とかのよく分からないスキルは使えない。
他に、他になにかこの状況を打破出来るようなスキルはないのか…!
そうだ、そういえばあるじゃないか、それ以外のスキルが!一つだけ!
獲得したばかりで上手く使えるか不安だが、もう作戦も立ててしまった。この作戦で行くしかない…!
昨日はバレンタインでしたね!
私はバレンタインの前日、超大変でした…
夜遅くまで塾があったせいで、夜中の1時にクッキー焼いてました(´;ω;`)眠い…