5話・平原の真ん中で
そして…ドレッド平原の中央に到着。
ここは、見渡しが最高で。
頭上にはすぐ、黄金に輝く太陽があった。
彼ら(レオ一行)は、馬車を一旦停止させてから。
ひとまず、一間の休息をとる。
レオとフレイは、馬車に残り。
ウラドは、居心地の悪さを感じて…
馬車から、ひとまず降りることにした。
そんな彼に続いて、シェムハザ(聖職者)も下車する。
惨めな残りモノ(ウラド)は、芝生の上に座ると。
汚れた懐から「裁縫箱」を取り出した。
箱の中から、針と糸を取り出し。
「とある物」の制作にかかる…
ウラドの手には「一つの人形」…
とっても小さな「兎の人形」。
この人形は、掌サイズの微々たるモノだが。
不器用な彼が精魂込めて、作り続けた力作だった。
彼は、フレイが「兎が好き」と知っており。
せめてものプレゼントに…と。
暇が空き次第、糸と針を、必死に動かした。
そして、このとき…兎の人形が「完成」。
難しい作業が、やっと終わり。
ウラドは一息つくように、柔らかな芝生を見渡した。
すると、彼の足元にて「白色」が一つ。
一輪の「白い花」が…緑の地にて揺れていた。
ウラドは、ソレ(白い花)に気づくと。
珍しいな…と思いながら、孤独な花を摘み取った。
そして、その花を、胸のポッケに納めたとき。
「おーい、ウラドーシェムハザー」
勇者の元気で清々しい声が、離れた二人を呼ぶ。
「出発だ!マシュルクに帰ろうっ」
勇敢なるリーダーの「出発の合図」。
その隣には、美少女の彼女さん(フレイ)…
リーダーからの号令が下り、ウラドは支度を済ませる。
さっさと、裁縫箱をしまってから…
もう一人…出遅れた聖職者の元へ。
平原の中央にて、優雅に立つ…エルフの聖職者。
長い髪の毛を、穏やかな風に乗せ。
その瞳で、黄金の太陽を傍観していた。
一体、彼が何を思っているのか?
正直ウラドには、どうでも良かった…
「呼ばれてるぞ、急ごう」
何気なく、彼の背に、呼びかけたとき。
エルフの聖職者は、こちらへ振り返り。
黄金の太陽を背に…ニタリと笑った。
「ここは、最高だな」
「主の…シュタハスの息吹を、感じられる」
そして、このとき。
対峙する二人の横を、のんびりとした風が通過してゆく。