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2話・彼女と共に飛ぶ


 シェムハザが飛び、次の3番目。

魔術師の「ウラド」が、崖の天辺に立つ。

そして、震える眼差しで、下の景色を見下ろす。


 実のところ「ウラド」はかなりの「高度恐怖症」。

高い所に立つと、震えて動けなくなる、意気地なしだった。


 しかも、ウラドは、魔術を扱えず…

所詮「魔法使い」というのは。

このパーティーに、加わるための「肩書」でしかない。


 まさしく無能な男だが。

こうしてウラドが、彼ら(勇者一行)と、同行していられるのは…

勇者レオの寛大さと…

「幼馴染」という立場にあったからだ。


 装備だって貧弱。

ダボダボなズボンに、長袖のシャツ…そして、錆びだらけのアーマー。

もはや、新米一般兵が、マシに思えるレベル(酷さ)だ。


 雑魚ウラドは、崖の上に立ち。

ガタガタと…非力な手足を震わせた。


 やはり…「高いところ」だけは、どうしようもない。


 そう、諦めようとしたとき。

羽毛のような感触が、ウラドの手を包み込んだ。


 その暖かさ(感触)に惹かれるまま…ウラドは視線を流す。


 すると…ウラドの隣には、弓兵の「フレイ」がいた。

彼女は、この「パーティー」唯一の女性であり。

その腕っぷしは、かなりのモノで…重要な戦力だった。


 髪は長く滑らか、透き通るような「青髪」が印象的で…

水色の瞳を見ていると、時の流れさえも忘れてしまいそうだ。


 小さな背中には「光の弓矢」。

高度なエルフによる「弓兵の装備」を纏い。

軽装型の防具の表面は、青色の布製であった。

 

 フレイは、臆病者ウラドの手を、両手で包み込み。


「大丈夫…」


ブルーの瞳を緩ませて、温かな勇気を分けてあげた。


 この笑顔が、この声が…ウラドの感情を昂らせた。


彼女と話せる事が嬉しい…


彼女が笑っている事が嬉しい…


 そう…

無能なこのウラドは、フレイに想いを寄せていた。


 この「片想い」は、ずっと以前からで。

実らぬ想いだと…彼自身、独り勝手に諦めていた。


「諦めた」と言っても。

やはり、フレイから励まされると、勇気が湧いてくる。


 ゆえに、フレイの為になら…

ウラドはきっと、どんな「恐怖」にだって立ち向かえる。


「いこう」


優しいフレイの声と共に…その青髪が、崖の向こうへ飛んでゆく。

 その後に続くよう。

ウラドは、震える体を、宙へと放り投げた。



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