12話・皆は一人のために
そして、このとき…
狂人(女)の爪が、ピタリ…と静止した。
爪のさきは、ウラドの眼球…数ミリ手前。
獲物の脳天を、貫く寸前だった。
だが、この一瞬…
「光の閃光」が、闇夜の廊下に輝き。
相手(獣人の女)の頭部を貫いていた。
殺戮の獣が、ピタリと静止してしまう。
グシャッ!リ…
哀れな肉の音と、獣人の女が倒れ。
闇夜の廊下に、緑色の波紋(血痕)が広がった。
「ウラド…ウラド!!」
彼が好きな…人の声。
声の方を見てみると。
そこには「青い髪」「ブルーの瞳」。
「フレイ」が、弓矢を手にして…こちらに駆け寄ってきていた。
どうやら、騒ぎに気づいて…助けに来てくれたらしい。
また、助けにきたのは、彼女だけでなく。
勇者レオも、彼女と共に、ウラドを救いにきた。
二人と合流した後。
レオ一行は「分かること」だけを整理する。
女の死体が、緑色の液体に染まり…
ソレ(女の死体)を見下ろしながら、ウラドは、震えるように言う。
「この人…錯乱してた…」
彼は、この女性『だけ』が化物になった…と。
都合よく、予想してみるものの。
そんな甘い考えを、レオが否定する。
「彼女だけじゃない」
「そこらから、悲鳴が聞こえてくるだろ?」
「街中で『暴動』が、起きてるんだ…」
確かに、彼の言う通り。
ウラドが起きたのも…外からの「悲鳴」が原因だった。
もしかしたら…
外にはもっと、錯乱した人間(狂人)がいるのかも。
この事態に、リーダーのレオが、とある提案をした。
「逃げよう。この街から、出るんだ」
三人で…この街から、一刻も早く脱出する。
彼の提案に、ウラドは賛成だった。
街が危険なら、すぐにだって逃げるべきだ…
その方が、フレイの安全だって…約束されるから。
「街から逃げる」と言うモノの…
レオもウラドも、「フレイの安全」を、頭の片隅に置いていた。
「それはできないわ…ダメよ」
だが、よりにもよって…
彼女自身が、二人の意見に反対した。
「シェムハザを、助けにいく」
「彼も、大切な仲間だから…」
確かに、フレイの言う通り。
あの聖職者だって、団員の一人だが。
このとき…ウラドだけは。
「シェムハザの救出」に、乗り切れなかった。
だが、その意志とは、逆に事が進み。
結局、レオ一行は「一人の団員」を救出するため…「図書館」を目指す。




