10話・白衣の男
ユラユラと歪む視界の中…
自分の部屋に戻る(逃げる)べく。
ウラドはひたすら、暗黒の廊下を歩いた。
エルフの少女の生首…
あの空虚な視線が、理性の裏側までへばりつき。
おぞましい恐怖により。
腹の中が、グルグルと回り悲鳴を上げる。
それでも、あと少しで、部屋に戻れる…そう、思った矢先。
一人の男が、臆病者の到着を待っていた。
男の姿は、この辺では、見慣れない服装で。
「白衣」に「眼鏡」と…
どこかの研究者である事は、察しがついた。
「白衣の男」は、薄ら笑いを貼り付けながら。
こちらに向かって、ゆっくりと歩み寄ってくる。
「やあ、ごきげんよう」
ユラリと、ウラドの前に立つ男。
「きみは、特別なようだね」
そう、不可解な台詞を吐きながら。
白衣の中から「とある物」を取り出した。
そして、ソレを魔法使い(ウラド)に手渡す。
渡されたのは「一粒の薬」。
飴玉のように小さい…一粒の薬。
「最後の一個だ…好きにしたまえ」
謎の言葉だけを言い残して…白衣の男は、この廊下から立ち去ってゆく。
こんな状況では、まともな思考などできず。
相手(白衣の男)に、言われるがまま…「薬」を受け取ってしまった。
だが、それよりも、自分の部屋へ…
今は一秒でも早く、この悪夢から覚めたい。




