英雄と魔王は一心同体
「英雄神の加護を受けし者よ、お主に第37代目勇者の称号を与える」
何でこうなった
ショート・ブランチはごくごく普通の家に生まれた普通の人間であった
この世界では15歳になると神殿で加護を受けることになっている
ショートも今年15歳になったばかりであった
「ショート今日は神殿でご加護を授かる日なんだから早く起きなさーい」
「う~ん」
ショートはリリカ・ブランチの声で目を覚ました
朝の準備を終えてダイニングに向かう
「おはよう
「おはよう。とうとう今日でショートも大人の仲間入りなのね~」
「そうだね。良い加護が貰えると良いんだけど、できれば将来役に立つ薬系統のスキルが欲しいな」
神殿で授けられる加護は様々なものがある。剣の扱いがうまくなる剣神の加護、火系統の魔法が上手くなる火神の加護、他にも鍛冶や薬、建築などがある
「薬系統は確かに有用だけどもっと夢見て良いのよ
武道神とか魔導神とかの加護を授かったりしてね」
「嫌だよ。そんな加護を受けたりしたら戦わなくちゃいけなくなるじゃないか
僕は平和に暮らしたいだけなんだから」
「全く夢がないわね~」
「夢じゃあお金は稼げないからね。堅実第一だよ」
「はーあ。誰に似ちゃったのかしらね
ほら、時間に遅れるわよさっさと食べちゃいなさい」
確かにすぐ集合の時間だ。加護を受ける人は朝一に神殿前に集合になっていた
母親に急かされてご飯を食べる
「真面目な話だけどそんなに色々考えないで良いのよ。ご加護がどんなであれ優秀な人たちは沢山いるんだから
だから、気軽に行ってきなさい」
「分かってるよ。でも、夢を見るならやっぱり生産系がいいな
やっぱり危ないことは嫌だからね」
「ショートらしいわね」
そんな話をしながらご飯を食べ終わり出掛ける準備を終える
「じゃあ行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
外は快晴、うん、実に良い日じゃないか
清々しい気持ちで集合場所に向かう
既にそこには何人もの人がいた
おそらく皆今日祝福を受ける人たちなのだろう
祝福は15才になると貰えるのではなく15になる年に貰える
つまりまだ14でも貰えると言うことだ
ちなみにショートは既に誕生日が過ぎているので15才になっている
「今日ご加護を受ける人はこっちに集まってくださーい」
神官の服を着た人が呼び掛けている。全員がその声にしたがって移動を始めた
「えー、皆さん聞いてください。今年はご加護を受ける人が多く一日では終わりません
なので二日間で行いたいと思います
日付と時間、場所が書かれた紙を渡すのでそこに行ってください」
一人ずつ紙を貰っていく
でも、まさか二日間かかるとは思わなかった
確かに今年は例年の二倍ぐらいの人がいるので時間がかかるとは思っていたが
「はい、君はこれね。すごいね君が今日の最後だよ」
「ありがとうございます。ではまた時間になったらお伺いしますね」
どうやら今日の最後になってしまったようだ。それまではどこかで暇潰しするか
「ありがとうございましたー」
一人の女の子が神殿から出てきた。どうやらすでに加護を受けたようだ。どんな加護を受けたのだろうか
ちょっと聞いてみるか
「すいません。もう加護を受けたんですか?」
「そうですよ。私は裁縫神の加護を授かったんです。あなたも今日ご加護を授かるんですか?」
「そうだよ。出来れば生産系の加護が欲しいんだ」
「生産系ですか?戦闘系の加護をもらえたほうが将来役に立ちそうじゃないですか?」
「嫌だよ。痛いのも怖いもの嫌いだしね。争いごとはしたくないしね」
「優しいんだね。いい加護がもらえることを祈ってるよ」
「ありがとう」
「じゃあ私はもう行くね」
「引き留めてごめんね」
「ばいばーい」
さて、また暇になってしまった。そうだあいつらに会いに行くか
ショートはいつのみんなで集まっている場所に向かう。そこには学校の友達であるリク、アベル、ユーリの三人がいた
「お、ショートも来たのか」
「加護がもらえるのが結構遅くなっちゃたからね。みんなはいつ加護がもらえるの?」
「俺は昼過ぎだ。リクはもう貰ってるユーリは明日らしい」
リクはもう既に貰っているようだ
「リクはどんな加護をもらったんだ?」
「俺は、弓神の加護だよ。冒険者になりたかったから良かったよ」
「そうか。リクは冒険者になりたかったんだね」
「俺の父さんが冒険者だからな。父さんを超える冒険者になることが俺の夢だからな全力でやってやる」
それからもくだらない話をしながら時間を潰した
「じゃあ俺はそろそろ行くわ」
「おー遂に加護を受けに行くんだな。いい加護がもらえるように祈ってるぜ」
「戦闘系なら一緒に冒険者やろうぜ」
「私も、いい加護がもらえるように祈ってるよ」
三人からエールを受けてから神殿に向かう
神殿の中にはほとんど人はいなかった
「おや、君が今日の最後みたいだね。時間もないしさっさと始めようか」
「そうですね。ではお願いします」
「では、こっちにきてくれるかな」
神官さんの後を追って女神像の前に来る
「君の名前は?」
「ショートです」
「それではショート。そこに膝をついて祈りをささげなさい。さすれば神のご加護が与えられるだろう」
ショートは女神像の前に膝まつき、祈りをささげた
祈りを捧げ始めるとショートの体がうっすらと光り始めた。そして光が少しずつ肩に集まり光がつよくなった
そして光が収まったり肩には不思議な模様の魔方陣があった
「な、これは。君、確かショートって言ったよね」
「はい。僕はショートですけど」
「ショート君、君には素晴らしいご加護が与えられた。その名も
英雄神の加護だ」
英雄神の加護
それは魔王に唯一対抗できる力である。魔族との争いの歴史は長く、二百年間も続いている。そして魔族の頂点に立つのが魔族の王、魔王である。
魔王の力はすさまじく普通のものでは歯が立たない。それに対抗できるのが英雄神の加護を授かった者というわけだ
そんな人類の希望が現れたとなるとどうなるか
「英雄神の加護を受けし者よ、お主に第37代目勇者の称号を与える」
当然こうなる
今ショートは謁見の間にいた。昨日英雄神の加護を授かった後「君は人類の希望だ。君なら魔王を倒せると信じているよ」というよくわからない信頼をされ、その日はそのまま帰ったのだが次の日の早朝王国騎士団という兵達によって王城へ招かれ謁見の間で勇者認定を受けている真っ最中である
「慎んでお受けいたします」
謁見の間に入る前に大臣と名乗る人に「王の前まで行き膝間付いて待て、そして王が称号を与えると仰ったらお前は「慎んでお受けいたします」と言うのだ良いな」と言われていたのでその通りに答える
しかし勇者か.....争い事は嫌いなんだけどな。まぁ絶対に戦うって決まった訳じゃないから大丈夫だな。魔族だって話し合えば分かってくれると思うし、そうであってほしい
情けない話だが僕は痛いのも怖いもの嫌なんだよな
ショートは昔から争い事が嫌いな子であった。どんな些細なことであっても争いというものを避けてきた
それはもう周りが引くほどに。なにせじゃんけんですらまともにやらないのである
そのせいで彼は自分の力に気づくことができないでいた。ショートは自分では気づいていないが昔から不思議な力のようなものがあった
福引きやくじ引きなどでは当然のように景品を貰い、家族で出掛けたときも道端に落ちていた石を蹴ったら寝ていたモンスターの口に入って知らないうちに窒息させ倒したことがある
本人が知らないだけでショートは天性の何かをもって生まれていた。その力が今回の加護に繋がったのかもしれない
「ショートよ、英雄神の加護を与えられし選ばれし者よ、その力を振るい魔王を倒すのだ」
ショートは余り乗り気ではない。それは『争い事が嫌い』という以外にもある
今まで36人の勇者が誕生している。しかしその全員が魔王退治から帰ってこなかったのだ
ドラゴンを片手で倒すほどの凄まじい力を扱えた勇者もいた。しかしそんな規格外とも言える存在でさえ帰ってこない
そんな事に争いが嫌いなショートがやる気を出せるだろうか。不可能である
しかしショートは周りの期待を裏切るまいと決意する
「わかりました。このショート・ブランチが必ず魔王を退治して参りましょう」
は~、僕は生きて戻ってこれるのかな?
そんな不安を抱きながら勇者認定は終わった
「凄いじゃない。英雄神の加護を貰える人なんてそうそういないんだから胸を張りなさいショート」
僕が勇者に正式に認定されてから母はずっとこんな感じだ。英雄神の加護という伝説の加護を授かったことがそんなに嬉しいのだろうか?
「ショート、明日にはもう出るの?」
「そうだね、王様たちが旅の準備を済ませてくれてるみたいなんだ。だから多分明日には行くかな」
「そうなの
ショート、よく聞きなさい。あなたは確かにすごい力を授かったわ、それは母さんも凄く嬉しい。でもね、それでショートが変わっちゃうのは嫌なの
いつも皆と仲が良くて、明るくて、笑顔で
母さんはそんなショートが好きよ。だからね魔族を殺さなきゃって思って欲しくないの
もちろん倒して欲しくない訳じゃないのよ。でも、必要のない命まで奪ってほしくはないな
こんなこと言ったらショートの重荷になるって分かってたんだけどね、どうしても言いたかったの
親の贔屓目かもしれないけど、私はあなたに特別な力があるって信じてるわ。皆で楽しく暮らせるような世界にしてね
それと......必ず帰ってきてね」
母さんはそう言うとそっと僕を抱き締めてくれた
「母さん」
「なに?」
「そんなこと分かってるよ。母さんに言われる前からね
僕は争い事が嫌いだ。痛いのも怖いもの嫌い
それはみんなか同じだと思うんだ。きっと魔族だって僕らを本気で殺し尽くそって思ってないと思うんだ
それなら平和的な解決も出来るかもしれないでしょ」
ショートは加護を受けてから迷っていた。自分に何が出来るのか、それが全くわからなかったのだ
しかし、母の言葉が切っ掛けになりショートは覚悟を決めた
「安心してよ母さん。僕は今まで、何をしたいのかなんて考えたこともなかったけど、今決まった
魔族との戦争を終わらせる。皆が笑顔で自由で楽しく暮らせるような世界にしてみせるよ
ありがとね母さん」
そして次の日、ショートは王城にいた
「ショートよ、お主の旅に我が娘を同行させよう」
「よろしくお願い致しますわ、ショート様」
王城へ到着して謁見の間にてすぐに言われた言葉がそれだった
「ちょ、ちょっと待ってください。僕を魔王討伐に行くんですよ。もし王女様の身にもしものことがあったら」
「安心せよ我が娘も強力な加護の使い手じゃ、能力値もランクAじゃしな」
能力値のランクとは、ギルドなどにある鑑定の水晶で確認できる大まかな強さである
「しかし、私はまだ未熟です。王女様をお連れするなど」
「ショートよ我が娘では不満か?」
「とんでもありません。王女様の武勇は知っております」
「では、問題なかろう」
何でこの王は王女様を連れていかせたがるんだろうか
「わかりました。王女様と共に必ずや魔王を倒して参ります」
「うむ、期待しておるぞ」
謁見の間から出た後、王様に用意してもらった馬車へ向かう
その馬車のは鎧を着た大柄の騎士がいた
「君が英雄ショート殿かい?」
「はい、英雄かどうかはわかりませんが僕がショートです。あなたは?」
「失礼した。わたしはショート殿を効率よく強くなれる場所へ案内する王国騎士団副団長のレイスだ。よろしくな」
大柄の男は騎士団副団長のようだ。強い人がついてきてくれるなら心強い
「レイスさんですね。わかりましたよろしくお願いします」
「よし。ならまずはお前の能力値を測りに行くぞ」
「わかりました。冒険者ギルドですか?」
「なんだ知っていたのか、なら話は早いこの推薦状を持っていけすぐに測ってくれるはずだ」
「はい。では行ってきます」
推薦状を受け取りギルドへ向かう
「すいません、能力値を測りたいんですが」
ギルドの受付に行き推薦状を渡しながら受付嬢に伝える
「はーい、ちょっと待ってくださいね。」
推薦状を確認した後受付の女性は奥に入ってき、鑑定器具である水晶を持ってきた
「それではそこに手を置いていただけますか?」
「わかりました」
その水晶に手を置くと水晶の中に文字が浮かびあがてきた
___________________________________________
ショート・ブランチ 15才 ランクS
使用可能スキル
鑑定眼・神剣・聖剣・縮地・天駆・気配察知・覇気・全魔法適正・全魔法耐性・身体強化・限界突破・言語理解・封印
使用不可能スキル
神眼・魔力鎧・魔力吸収・召喚
___________________________________________
「これは.....凄いですね。普通はスキルが五個あればいいほうなんですよ。やっぱり英雄様は違うんですね」
「あ、ありがとうございます」
偶々凄い加護を与えられただけで僕自身がすごいわけじゃないんだけどな。
「これだけの力をお持ちなら絶対魔王なんか楽勝ですよ。頑張ってくださいね」
「はい。僕にできることは全力でやらせてもらいます。応援してくださいね」
「応援していますよ。あ、あとこれをお持ちください」
渡されたのは一通の封筒だった
「これにはあなたの能力値が書いてあります。先ほどの推薦状にこれを持たせてくれと書かれていたので」
「そう...ですか。ありがとうございます。それでは失礼しますね」
お礼を言いギルドを出て馬車に向かう
「ショート殿戻ってきたか、どうだ?自分の力を目で見た感想は」
「どうですかね、まだ自覚がわかないんですよね。自分に英雄の力があるなんて」
「ダンジョンで戦ってみればわかるだろ」
「ダンジョンってあのモンスターがいるダンジョンですか?」
「そうだ。効率よく強くなるならダンジョンが最適だからな。プラン様が来たら早速行くから準備を済ませとけよ」
初めて王女様の名前を聞いたな
それから少しして王女様がやって来たのでレイスさんが御者席に座り僕と王女様が席についた
「では行きますよ」
「お願いします」
「安全走行でお願いしますね」
は~、とうとう出発してしまった。これからどんなことが起こるんだろう
「ショート様?」
「は、はい。何でしょうか王女様」
気を抜いていたので声をかけられて動揺してしまった
「そんなに固くならなくてもよろしいではないですか。これから共に戦う仲間なのです
プランでいいですよ、敬語もなしです。いいですね」
「えっと、でも王女様にそんな」
ぷくー
僕が何か言おうとした瞬間王女様は頬を膨らませていた
「い・い・で・す・ね」
有無を言わせない圧力をかけてきた
「.......はい。よろしくお願いしますね、プランさん」
「よろしい。こちらこそお願いしますショート様」
そっちは様付けなんだ。まぁいいけど
馬車が動き始め、だんだんと人気が無くなってきた
「プラン様そろそろ警戒地域に入ります」
「わかりましたわ。索敵は任せてくださいな」
「あのー、ここらって何かあるんですか?」
「ここら辺はですね、盗賊の出現地帯なんですよ。つい先日にも商会の馬車が襲われたんです
結構大きい盗賊グループなので警戒が必要なんですよ」
マジでか。何でこんな道と通ったんだろ
「ま、レイスもいますし大丈夫ですよ」
「お任せ下さい、何が来ようとも私の相手ではありませんよ」
ん~、なんだろう。こういう時って大体何か起こるものだよな
「プラン様、ショート殿隠れてください。盗賊です」
「大体40ぐらいいますよ。やれますか?」
「これぐらいなら余裕ですよ、ちゃんと隠れてくださいね」
「大丈夫なんですか?さすがにこの数はまずいのでは」
「そうですね、ちょっとまずいかもしれませんがもしもの時は私が出ますのでショート様はここにいてくださいね」
「え、あ、はい。その時はお願いします」
ズドーーーーーーーン
馬車の外では激戦が行なわれていた
「プラン様早く逃げてください。こいつらやばいです」
すでにレイスさんは満身創痍、全身傷だらけになっていた
「プランさん、ここで待っていてください」
ショートは馬車から飛び出す
「お前ら、いい加減にしろ!」
身体強化で全身を強化して突っ込む
「今度は子供かよ。おい、お前らやっちまえ」
オーーーーーー
レイスのおかげで盗賊は半分になっていた
「僕は争いは嫌いだ。全員剣を下げてほしい」
「は、なにふざけたこと言ってんだ。お前もそいつと同じようにしてやるよ」
忠告も虚しく盗賊は全員で切りかかってきた
しょうがないよな。やらないとこっちがやられる
「なら、全員倒してやるよ。<覇気>発動」
覇気は周りにいる生物を威圧し、動きを制限するスキルだ
「なんだこれ、体が動かない」
「俺もだ」
「くそ、なんだよこれ」
どうやらスキルの発動はせいこうしたようだ。よかった。ぶっつけ本番だったから心配だったがこれならだいじょうぶだろ
「これでわかっただろ、あなたたちでは僕には勝てません。投降してください」
「ばーか、効いてねー奴もいるんだよ。油断しすぎだ」
素早い奴が突っ込んできた
「油断なんかするわけないでしょ」
戦闘が始まってから<気配察知>を使い全敵の居場所を常に調べていたのですぐに反応する
そして鑑定眼を使い全員の力を調べ終わった
なんでいい加護を持ってるのに盗賊なんかやっているのだろう
突っ込んできたやつは脚神の加護を持っていた。このスピードはその脚力によるものか
「しねーー」
すごいなこれが英雄神の加護の力か、戦闘中にこんなに余裕が持てるなんてな
首を狙って放ってきた蹴りを屈んで躱す、そのまま相手の足をつかみ土魔法と氷魔法を使って拘束する
「傷つけたくない、そこで大人しくしててくれ」
こいつ以外にも動ける奴は三人か、二人は魔法系統だから何とかなるけどあと一人がやばいな
「やばいぞ、あいつがやられた」
「魔法で一気に片を付けるぞ」
二人同時に魔法を使ってきた、火と雷か、なら
大量の砂を作りそれを風魔法であたりにまき砂埃を発生させる。砂埃に遮られて火と雷の魔法はかき消される
「馬鹿な、あいつ何属性の魔法が使えるんだ」
「親分、やっちゃってください」
後ろに控えていたやばい奴が動き出した
「俺たちを無力化したぐらいで調子に乗るんじゃないぞ、親分にかかればお前なんか一こr」
えっ?
親分と呼ばれていた奴は魔法を使う二人の首を切り飛ばした
「仲間じゃないのか?」
「俺の仲間に弱者はいらんよ、お前は骨がありそうだ。存分に殺しあおうぞ」
ぷち
「ふざけんなよ。そんな自分勝手な理由で人を殺していいわけないだろ。お前だけは許さない絶対に」
「この世は弱肉強食だ弱ければ死ぬんだよ。そいつらはお前より弱い、だから死んだんだ」
「もういい黙れ!」
叫ぶと同時に<縮地>を使い相手に近づく、相手もこちらの動きに気づき裏拳を放ってくる
「争いは嫌いだけどあんただけはそうも言ってられないみたいだね」
裏拳を後に下がることにより避け<神剣><聖剣>を発動、この二つなら相手を気づ付けることなく無力化できる
「ほう、いい動きをするな。武神の加護を与えられた俺と対等にやれるとはな」
「痛めつけるのは僕の趣味ではありませんので一気にいきますよ」
「やれるものならやってみろ」
相手は武器、体術が強化される武神の加護持ち。なら、これで仕掛けるか
空間魔法を使い二人を囲むように箱状に空間を隔離する。そして氷魔法で温度を下げる
「これは....くそっそういうことか」
相手もこちらの意図に気付いたのか焦り始めた。しかし、もう遅い
魔法は発動された。仕切られた空間を-5℃にまで下げる魔法[空間氷結]
「貴様何者だ。こんな魔法を使える奴聞いたことないぞ」
殴りかかりながら聞いてくる、急激な変化に対応できてないのか動きが格段に遅くなっている
「僕は昨日英雄になったショート・ブランチだ」
二つの剣に雷魔法を纏わせて相手を切る。この剣は敵意を向けると切れるが仲間や切りたくないものは切れないようになっている
その性質を利用して傷つけないまま魔法で気絶させられる
「く..そ..が」
気絶する寸前にも悪態を吐きながら倒れる
「終わりましたよ、プランさん」
「え、ええ。そうね、お疲れさまでした
もう力を自由に扱えるんですね」
「僕もびっくりしました、まさかこんなに戦えるなんて」
実際自分が一番驚いている。戦闘が始まってからはひどく冷静に物事が判断できていた
「この人たちどうしましょうか?」
「ほっといて大丈夫ですよ。ここら辺はたまに兵士の巡回がありますから」
「そう...なんですか」
「それに、早く先に進みたいですしね」
「わかりました。では全員拘束しておきますね」
覇気によって動きを封じやれていた17人も気絶させる
「それでは行きましょう。いざ、魔王様討伐へ」
魔王...様?
なんでプランさんが魔王に様付けなんだろ
「ショート様は魔族領への行き方を知っていますか?」
「港町から船で行くとしか」
「一般的にはそうですね。でも、秘密の方法があるんです」
「秘密の方法ですか?」
そんなのがあるなら王様も教えてくれたらよかったのに
「すぐ、そこなんですよ。早くいきましょう」
プランさんは馬車をおり走り出した
「レイスさんも置いて行っていいんですか?」
「大丈夫ですよ、どうせそれぐらいでは死にませんから」
「その秘密の方法って近くなんですか?」
「すぐそこですよ、あの大きな木の中です」
指さした方向には10メートル程の高さの木があった
あんなところに入口があるならなんでもっと騒ぎにならないんだろ
「さぁ、行きますわよ」
プランさんは木の下にある裂け目から中に入った
口調が定まってない気がするんだが気のせいかな?
「プランさん待ってくださいよ」
後を追い裂け目に入る。そこには扉があった
「その扉がそうなんですか?」
「ええ、ここが秘密の方法。繋ぎの扉です
さ、行きますよ」
「待ってくださいよ」
呼ぶ止めたがもう既に扉をくぐっていた
扉の向こうに大きい気配があるから心配なんだけどな
「えーい、いつまでもここにいてももしょうがないよな」
覚悟を決めて扉をくぐる。そこには
「来たぞ。全員で捕らえろ」
大量の魔族が待ち構えていた
覇気を使って動きを封じる。しかし
「なるほどな。結構強いがまだあまい」
そこにいたほとんどに効果がなかった
魔族たちは一斉に動きをショートを囲む
「えっと、なんで俺は襲われてるんでしょうか」
「なにを、白々しい。我らを殺しに来たんだろう」
「あー、もしかして僕が英雄神の加護をもらったってことを」
「もちろん知っている」
「ですよねー。僕より先に来た人はどうしたんですか?」
「ライラか、あいつはお前をここに呼ぶためだけのただの駒だよ」
「そうですか、安心しました」
やっぱりプランさんは偽物だったか。薄々気づいてたからそこまで驚かないけどさ
「そろそろ、良いな。お前ら、こいつを捕らえろ」
さて、なら俺もやるか
<神剣><聖剣><縮地><天駆><気配察知><覇気><魔法><身体強化>を同時発動させる
21対1か、少々まずいな
天駆の効果で空中を駆けながら打開策を考える
「素晴らしい力だな」
相手の数人も宙を移動して追ってくる
「そりゃどうも、それに免じて今回は見逃してくれませんか?」
「ふざけたことを、お前は今ここで捕まるんだよ」
「捕まるって、なんでだよ。殺すんじゃないのか?」
「そんなこと誰も言ってないだろ、お前を捕まえて魔王様の前に突き出すんだよ」
なんだ。なら争わないでいいんだ
「わかった。大人しく捕まる
だから武器をしまってくれないか?」
すべてのスキルを解除して両手を上げる
「なんだと。お前達人間は俺たちを殺しつくそうって思ってるんじゃないのか?」
「そんなことないですよ。最低でも俺はみんなで仲良くしたいと思ってるんですから」
魔族の皆さんはポカーンと立ち尽くしてしまっている
「やっぱりあなたは他の方たちとは違うみたいですね。あなたたち、いつまで武器を出したままにするんですか?」
重そうな扉の奥から一人の女の人が入ってきた
「も、申し訳ございません。魔王様」
驚いた、まさかこんなところで魔王に会えるなんて
「あなたが今の英雄ですか?」
「英雄神の加護をもらっただけのただの一般人ですよ」
「なるほど、じゃあ質問を変えます
あなたは私たちの敵ですか?」
すごい圧力だな、潰されそうな威圧感。さすが魔王ってところか
「いいえ、僕は敵ではありません。情けない話ですが僕は痛いのも怖いもの嫌いですから
出来る事なら人族も魔族も全員楽しく暮らせる世界を作るのが僕の目標です」
魔王も目をしっかり見ながら答える
魔王は俯きプルプル震えている
怒らせちゃったかな、でも僕の本心だししょうがないよね
「その言葉に噓偽りわありませんね?」
「はい、もちろんです」
そう言うと魔王はバッと顔を上げて
「やっぱり、貴方は私の見込んだ人でした」
思い切り抱き着いてきた
「あ、あの、魔王さん?」
「素晴らしいです。あなたは本当に素晴らしいです。私たちはあなたのような人が現れるのを待っていたんです
やっと会えました」
魔王は僕に抱き着きながら泣いていた
「今までの人は私たちを殺すことを目標にしてる人しかいませんでした。だから、あなたのような人は貴重なんです。
今まで何人の者たちが命を落としてきたことか。今回の英雄があなたであったことを感謝します」
「僕はあなたたちと戦う気はありません。もう大丈夫ですよ。僕がみんなが平和に暮らせるような世界にしますから」
魔王を抱きしめ返しながら落ち着かせるように言い聞かせる
「ありがとうございますした、それとお騒がせしました」
「構いませんよ。美しい人には優しくしろって言われていますからね」
「え?あ、ありがとうございます」
「そういえばなんですけど、あなたの名前を聞いてもいいですか?」
「私に名前はないんですよ。よかったら私の名前を付けてくれませんか?」
「僕がですか?」
「ええ、私の世界を変えてくれるあなたに付けて欲しいんです」
そう言われてもなー
「なんでも、いいですか?」
「変なのでなければね」
変じゃない名前..まずい、思うつかない
「じゃあメアリス・トーラでどうですか」
「メアリス・トーラですか。確か過去にドラゴンを退けたっていう英雄の名前ですよね」
「すいません。強い女性ってそれぐらいしか思いつかなくて」
「いいえ、うれしいです。これからはメアリスって呼んでくださいね」
その時の笑顔は魔王というより天使の方があっていると思うぐらい可愛らしい笑顔だった
「どうしました?」
「なんでもないです」
首をかしげながら聞いてきたので顔をそらしてしまった
「それよりも、これからどうするか決めてるんですか?」
「まぁ多少は」
「なんですか、なにをするんですか?」
興味津々な顔で近づいてくる
「あの~メアリスさん、近いです」
「大丈夫です気にしません」
「いやいや、僕が気にしますから」
肩を押して何とか距離を離す
「まず確認したいことがあるんですけど、魔族はもう人間と争う気はないんですよね?」
「んー、私は無いんだけど一部の貴族とか実力者がまだ今までのことを根に持ってるかもしれないわ」
「それじゃあ、争う気がない人たちを集めてくれませんか?」
「いいけですけど、何人ぐらいですか??」
「50人は欲しいですね。人族領で暮らしてもらって危険がないことを確認してもらうんです
ですから本当に穏やかな人を選んでくださいね」
「わかったわ、なるべく早く揃えとくわね。それと、これを持っていって」
渡されたのは一つの指輪
「これは?」
「ワープゲートの魔方陣が組み込まれてる指輪です。その指輪に空間魔法が使える人が魔力を流せば魔法が発動します
ワープゲートの魔法は一度いったことのある場所になら行くことが出来るんです
それがあればいつでもここにこれますね」
「ありがとうございます。こんな凄いものを貸していただけるなんて本当に嬉しいです
ではまた2週間後に来ますね
その時に人数を集められるだけ集めておいてください」
「わかりました、出来る限りのやってみます。それではまた会いましょう」
「はい。よろしくお願いします」
メアリスに頭を下げてから指輪に魔力を流し、ワープゲートで帰る
「は~、まだまだ先は長そうですね。どうしたら好きになってくれるんでしょうか」
ショートがいた場所を眺めながらメアリスは呟く
ワープゲートで戻りすぐに王城に向かった。事情を説明したら王様も魔族と交流をもちたかったそうだ
王女様も自室で気絶しているところを保護され無事だそうだ
それからは大忙しだった
魔族を危険視する人たちを説得して、今度呼ぶ魔族の方が暮らす場所を用意した
その他にもいろいろ用意することがあってずっと動き回っていた
そして二週間後
ワープゲートで以前行った場所へ行く
「ようこそ、英雄さん。魔王にお主を連れて来いって言われてな、おっと今はメアリスだったか?お主が名付けたんだろう?やるではないか」
「はあ、ありがとうございます。あの、あなたは?」
やるではないかって僕ってなにかやったっけ?
「俺はギールよろしくな」
「ギールさんですね、よろしくお願いします」
「自己紹介も終わったな。それではついてこい、メアリスの所まで案内しよう」
「お願いします」
後をついて歩くこと五分
「ここが謁見の間だ、礼儀は気にすんな。中にはお主の指示で集められた50人がいるからな」
すごいなもう50人集まったのか、やっぱり人望あるんだな
「それでは入るぞ」
「はい」
大きな扉を開けるとそこには
「いらっしゃーい」
沢山の魔族の方達がパーティーをしていた
「えっと、これは」
「ようこそ、ショート様。ぜひこの門出のパーティーにご参加していってください」
「門出のパーティー?」
僕って名前言ってないよな?
「はい、今日は人族と魔族が争いをやめる日なんですから」
「そうなるように頑張りましょう」
「はい。ところで、人族の方は準備出来たんですか?」
「安心してください。小さないざこざはまだあるかもしれませんが、ほとんどの人たちがあなた方魔族と協力関係になりたいと思っていましたよ」
「そうですか、よかったです」
心底安心しているのだろう。先程まで少し固かった表情が柔らかいものになっている
「このパーティーが終わり次第移動しましょうか、あんまり遅くなるとちょっと困りますが」
「大丈夫ですよ、このパーティーは昨日からやっていましたから。今回協力してくださる50人はもう準備が出来ています
いつでも出ることが出来ますよ」
2日間このパーティーはやっているのか。よく疲れないな
「ではすぐにでも行きましょう。出来れば早い方がいいと思うので」
「ショート様はご参加しないんですか?」
「また次の機会にってことでお願いします」
「わかりました、では今日のところはお開きにして、協力してくださる方たちのところに行きましょうか」
「お願いします」
メアリスについて行くとパーティー会場より少し離れたところにある部屋に入っていった。後に続き入室する
「英雄さんが入ってきたぞ。みんな挨拶しとけ」
入室すると脇に控えていた甲冑を来てる大柄の人が大きな声をあげた
「あれが英雄か」
「以外に小さいな」
「結構可愛いかも」
「一戦やってみたいな」
やっぱりまだ人族が珍しいのだろうか?よく聞こえないけどいろいろ言われてる気がする
「こんにちは、ショートさん」
プランさん改めライラさんだった
「この前は騙したりしててごめんね。こんなに優しい子ならあんな事もしないで良かったのにね」
ライラさんは後ろめたいのか困った顔をしている
「別に気にしてませんよ、あれも魔族のことを思っての行動なんですから仕方のないことです」
「ありがとうございます。そう言っていただけると気が楽になりました」
「ライラちゃんと謝れましたか?」
「魔王様、はい。謝罪の機会をいただきありがとうございます」
「ライラ、魔王ではなく私のことはメアリスと呼ぶように言ったはずですよ」
メアリスは頬を膨らませてそんなことを言っている
「そうでしたね。申し訳ありませんメアリス様」
「メアリスここにいる人たちが協力してくださる方達ですか?」
「ええ、そうですよ。ここにいるのは全員人族と仲良くしたい人たちですから」
良かった。魔族にもこんなに協力してくれる人がいたなんて、これなら何とかなるかも
「ショート様皆に挨拶をしていただけますか?」
「そうですね、協力してもらうんですから当然の礼儀ですよね」
「ではこちらへどうぞ」
案内されたのは一段高くなっているステージだった
「ではお願いします」
マジか。こんな人前で話すなんて初めてだから緊張するな
「えーと、ショート・ブランチです。この度魔族と人族の交流に協力してくださりありがとうございます。既に人族領では皆さんの受け入れ態勢が整っています、皆さんには人族領でこちらの技術を伝えてほしいんです
魔族の魔法科学の技術は人族を遥かに上回ります。その他にもいろいろなものをお互いに得られるものがあると信じています
これからどうかよろしくお願いします」
深く頭を下げて挨拶を終える
「お疲れ様でした。素敵でしたよ」
ステージを降りるとメアリスが労いの言葉を掛けてくれた
「変じゃなかった?」
「全然大丈夫でしたよ。むしろ格好いいって思いましたもん」
なんだろう、そんなにはっきり言われるとなんだか照れる
「そ、そっか。なら良いんだ
この素晴らしい日に変なミスはしたくないかなさ」
これから始まるんだな二百年続いた戦争が終わり皆が楽しく暮らせる。そんな素晴らしい未来が
「そろそろ行きましょうか、向こうも待っていると思いますから」
「そうですね。それでは皆さんワープゲートのところまで移動してください
さすがにこの人数を魔法で移動させるのは難しいので扉を使います
ライラは人族の王国に行っていたから道は分かりますね?
皆を案内してきてください」
おー、やっぱり魔族の王ってだけはあるな
的確に指示を出してやっぱりすごいな
「それでは私たちは先に行ってますね。ショート様お願いします」
指輪を使い王城へ転移する
その後、無事魔族の方達も王城へつき王族や魔族と共存関係を築きたいと思っている貴族などと挨拶を交わし無事に50人に暮らす場所が提供された
あるものは王国一の大商会で新しい魔道具を製作したり、高い身体能力を使い冒険者をしている
各々が得意なことを仕事にして人族と良い具合に馴染んでいる
そして、他の国でも魔族と共存しようとするところが現れ始めた
当然反対するもの達もいたが協定を結んで得られる益に比べれば些細なことらしくことごとく無視されるか全く別の場所に飛ばされるようなことがあった
僕は二百年続いた戦争を終了させ世界を変えた英雄として崇められた
王国には銅像なども建てられ外を歩くのも恥ずかしい
しかし、なぜこんな簡単に出来たことが今まで出来なかったのか疑問に思い人族の英雄の情報と魔族にある魔王の情報をメアリスの力を借り調べた
そしたら、有ることがわかった
英雄神の加護を授かったあの日、僕の肩に全く現れた
そして同じ日に魔王もま魔法陣が現れたと言う
僕の魔方陣とメアリスの魔法陣を近付けると共鳴するかのように光だす
他にも情報がないかと調べたら映像を残す魔道具の中にそれはあった
それは三十年ほど昔の映像だった。英雄に選ばれた女性と、魔王に選ばれた男性が戦っているところが撮影されていた
戦いは圧倒的なものだった。女性の攻撃はほとんど届かずに魔王が一方的に攻撃している
そしてとうとう止めをさした
誰がどう見ても魔王が負ける要素など何処にもなかった。そもそも攻撃はほとんど当たっていないのだ
しかし、次の瞬間信じられないことが起こった
英雄の魔法陣が光始めたと思ったら魔王の魔法陣も光始め魔王が血を吐き始めたのだ
そして、光が収まったとき二人は死んでいた
他にあった映像を見ても賞盃はどうであれ片方が死ぬと必ずもう片方も死んでいた
つまり、英雄と魔王は一心同体だったのだ
それが判明したのは戦争を終わらせた時から数えて七年目だった
七年目掛けて導きだした真相ははとても簡単なことだった
お互いが相手を殺すことを目的としていたから起こっていた悲劇
だからこそ今回は僕だったのかもしれない。臆病者であり争いが苦手な僕なら相手を殺すようなことなく協定を交わせるのではないか
そんな希望を込めて神は僕に英雄の加護を与えたのではないだろうか。そんなことを考えていた
「ショート」
「どうした?」
一緒に調べていたからか、七年も一緒にいるからかメアリスの僕の呼び方は呼び捨てになっていた
「私たちのこの魔方陣って消せるのかな?」
「どうだろう、加護は与えられたらそれは一生ものだ。なら俺の英雄神の加護は消えないと思うぞ」
ショートの一人称も僕から俺に変わっていた
「やっぱりそうだよね」
メアリスは残念そうに突っ伏した
まぁ無理もないな。俺が死ねばメアリスも死んでしまう
そんな状態で普通に過ごせって言う方が無理ってものだろ
「ねえ、ショート」
「どうした?」
その時のメアリスの表情はなにかを決心しているような、そんな表情だった
「こんな状況でいって良いのか分かんないんだけどさ、もしよかったら私と「待って」え?」
多分今言おうとしていたことは女性から言われたらいけないものだろう。なら
「それは俺から言わせてくれよ
メアリス、俺と結婚してください」
いつでも渡せるように買っていた指輪を差し出しながらプロポーズする
「え?え?いきなり結婚だなんて」
「でもさっき俺に何か言おうとしてたじゃないか」
しまった。焦りすぎて段階を踏まずにやってしまったらしい
「あれは、私付き合ってくださいって言おうとしただけよ
付き合ってから結婚ってのが普通でしょ?それなのにいきなりプロポーズしてくるなんて」
「やっぱり駄目か?」
「そんなこと言ってないでしょ
まったくしまらないわね。でも私もすっごく嬉しい
そのプロポーズ受けるわ。結婚しましょショート」
「本当か!?ありがとうメアリス
正直断られてたらなにやってたかわからないレベルで混乱してたから助かった」
「まったくしょうがない人なんだから」
ショートとメアリスは無事に結婚し、二人で宿屋を経営しながらほのぼの暮らしていた
ショートの肩からは魔法陣が消えていた
結婚初夜、初めて二人が肌を重ねた日に魔方陣が消えた
これで魔法陣の効果が切れたのかは不明だがある意味二人で同じタイミングで死ねるのは少しばかりラッキーな気もする
そして数年後
今、ショートとメアリスの子供が産まれようとしていた
「あなた、必ず元気な赤ちゃんを産むからね」
「ああ、メアリスなら必ずできる。こんな時どうしたら良いのかわからないからこんなことしか言えなくて申し訳ないんだが
頑張れ」
言葉は少なかったが死ねるのはの気持ちは痛いほどメアリスに伝わっていた
「それだけで十分よ。ありがとう」
そう言ってメアリスは魔法で作って清潔な空間に入っていった
しばらくして中から赤ちゃんの鳴き声が聞こえてきた
もう中にはいっても良いと言うのでメアリスに会いに行くとその横に赤ちゃんがいた
「元気な赤ちゃんだな」
「ええ、あなたにとってもよく似ているわ」
「少し固かった抱いても良いかな?」
「必ず優しくよ?」
「分かってるって」
赤ちゃんをゆっくり抱き上げる
「本当に頑張ったな。元気な赤ちゃんを産んでくれてありがとう」
「喜んでもらえたなら頑張ったかいがあったわ」
「はははは」
「ふふふふ」
「ん?」
二人で笑っていると不意に赤ちゃんから何か光が見えたような気がした
「どうしたの?」
「いや、何か今.......な!?」
「どうしたの?」
「マジかよ。ありえないだろ」
「だから何だあったの?」
「これを見てくれ」
ショートは赤ちゃんのお腹が見えるようにメアリスに向ける
「え?」
そこにあったのは消えたはずの魔法陣だった