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やってくる  作者: 百舌巌
3/7

第3話 生垣

次に見たのは小学校上がった頃だった。


この時の事は夢を見た後が印象が強かったので良く覚えている。


学校に通い始めていた俺は近所だけでなく、色々な友達が増えていき、学校でも家でも友人たちと遊ぶのに忙しかった。


それまでは近所の幼馴染と家の周りで遊ぶのがせいぜいだったが、学校の友人を通じて様々な場所に自転車で遊びに行っていた。


その日も友人と遊び回り時刻も夕方になったので、帰ろうとしていた時にいつもと違う道を通って帰って見ようかと冒険心を出した。


もちろん、知らない道だったので少しワクワクしながら自転車を漕いでいると小さな公園の横を通った。


自分の家の近所にこんな公園があるのを知らなかった俺は、何とはなしに公園を覗き込んだ。


公園には誰も居ない。 広場と公衆トイレと木製のベンチがあるだけだった。


すると急に催してしまった。 きっと遊びに夢中になっていてギリギリまで我慢してしまったのだと思う。 子供には良くある事だ。


自宅に着くまでに間に合わないと思った俺は、その公園に有った公衆トイレを借りる事にした。


その公園に自転車を止め公園のトイレで用をたして、さあ帰ろうかと思った時に、公園のベンチの脇に学習帳が落ちているのに気が付いた。


表紙が虫の写真になってる自分も持っている普通の奴だ。 何の学習帳だったかは覚えては居ない。


その場所に落ちてから、かなり日にちが経っているらしく、表紙は日に焼けていて何の虫なのか判別が付かない位だった。


その学習帳を何の気なしに蹴ってみると、1匹の虫のような物が学習帳の裏から這い出て来て、カサカサッとかなりの速度で逃げていく。


いきなりの出現に少しビクっとして後ずさったが、その虫のような物が逃げて行くのを目で追いかけた。


虫はずんぐりと面長な感じで、全体的に白い色をしていたように思えた。 というか何の虫なのか分からなかった。


その様子に俺は気味が悪くなり、家に帰ろうと公園の出口に向かって歩き出した。


ちょっとだけ公園を振り返り誰も追いかけて来て無いのを確認して、そのまま自転車に乗りダッシュで家に帰った。




そして、その夜に悪夢を見た。


場所はあの小さな公園だった。 公園のベンチも出て来ているが学習帳は無かったと思う。


何だろうと思って公園の中を歩き回ってみるも何も無い。 寄った時もそうだったが誰も居ない公園だった。


広場とトイレとベンチぐらいしかない公園なので人気が無いのかも知れない。


だが、目の端に違和感を感じ始めた。 自分が歩くのに従って何かが生垣の中を移動しているような感じがしたのだ。


たけど、小学生だった俺はビビってそちらを見ることが出来なかった。


公園の生垣に大きな目が生えているような気がしたからだ。


枝を揺する激しい音がした。 なんだと思って俺は目だけでそちらを見てみた。  一枚の葉っぱがハラリと落ちるのが見えたが何も無い。


怖くなったので公園の外に出ようと、視線をうっかり生垣に戻してしまった。


生垣の中に目玉があるのが見えた気がして、驚いた俺は急いで自宅に戻ろうと公園の出口に向かって歩き出した。


しかし、何かが音を立てながら生垣の中を移動している、生垣が移動に合わせるかのように揺れているのだ。


俺はさっき見た目玉が、出口に向かって歩いていく俺を、追って来ているように思え震えてしまった。


気づかないフリをしながら歩いていくと、目玉が生垣の中を”ガサガサ”と音をたてながら木から木へと飛 び移っている。


俺は確信した。 明らかに目玉は俺を追いかけてきている。


出口を出て自宅に向かう街角を曲がると目はそれ以上は追ってこなかった。


恐る恐る街角から顔を出して振り返ると、そいつは生垣の中に見え隠れしていた。 白い縁取り、頭に付いている角、カッと開いている口。


般若の面だ。




そこで目が覚めた。


その頃には両親とは別の部屋で寝るようになっていたので、枕と毛布を抱えて両親の部屋に行き、母親の蒲団の中に潜り込んで寝た。


次の日の朝。学校に登校している途中での出来事。 通学の途中で友人が自分を見つけて駆けて来ようとした。


そこは田舎に良く見かける無駄に広い道路で、見通しも良く車はたまに通るくらいの道路だった。


ニコニコと笑いながら”おはよー”と言いながら手を振り掛けて来る友人。


自分も”おはよー”と返事をして手を振り返す、そして友人は通りを渡ってこちらに向かって走って来る。


通りには車は通行して居ない、友人も自分もそれは確認していた。左右を確認するのは学校でしつこいぐらいに言われていたからだ。


しかし、通りを渡り始めた友人は横合いから来たトラックに跳ねられて、俺の視界から消えてしまった。


覚えてるのはそこまでで友人が即死だったのは、葬儀の後に親から聞かされた話だ。


今でも不思議なのは、あのトラックはどこから現れたのか? という事だ。



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