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cUbE(キューブ)  作者: 天瀬 はじめ
2/2

CaSE.002

『よりにもよって何で二連続でJKの依頼を受けちゃうかねえ。

 そもそもお金ないない言ってるの、シズ姉でしょ。

 どうして時々そんな人道的になれるのか。俺には理解できないよ』

「わたしこそ何でこんなクズ野郎が弟なのかが今でも信じられないくらいよ。アンタが所長じゃなかったら今頃とっくに東京湾に沈めてるわ」

『そんな滅多な事言うもんじゃないよ。

 で、依頼主とは?』

「明日学校終わりですぐに“回収”に向かうわ。

 話を聞いている限り相当マズい部分まで踏み込んでそうだから」

『わかった。任せる』

 静は依頼主との電話を切るとすぐに継比古に連絡を取った。

 案の定継比古は色好い返事をしなかったが、その話を耳にした途端電話の向こうでも声色だけではなく顔色が変わっているのがよくわかった。

『へえ。じゃあアイツが一口絡んでいる可能性が大ってワケか。

 そういう事だったら話は別だよ。受けるよ、その依頼』

「了解。じゃあ詳しくは明日、鳴神さんから」

『はいよ』

 携帯を切った瞬間継比古のポケットから取り出されたのはタバコでも、よもや懐中時計でもなくまだ出会った事がないはずの依頼主の写真だった。何故それを彼が持っているのか。

 それは全ての情報を事前に把握しているからだ。

 特に継比古がアイツと呼んだ男が関わってそうな話なら尚の事だ。

(しっかしわかんないもんだよなあ……

 声だけ聞いたら育ちが良さそうなナイス美少女なのに、まさかご実家がそんな厄介なトコだとはねえ。しかも面識あり、と来たもんだ)

 事務所の電話でさえ盗聴をしている徹底ぶりだ。

「さてどうしよう?

 いとしの蒼汰クンをくるくる回しながら案でも練りますかね」

 ぼそっと呟くと携帯の電源を完全にオフにし、継比古はぶらぶら歩き始めた。だがすぐに殺気を感じ、嫌な予感はすぐに確信に変わる。

 背中に突きつけられたナイフは寸前の所で止めた。

「へえ……」

「案外お早い挨拶だね。でももうそろそろ顔を出す頃合いだと思ってたよ。『復讐させ屋』さん」

「……タナベェェェ」

 継比古の目の前には狂気で目を血走らせた男が一人、前のめりになりながら立っていた。手には決して人は殺せないだろう果物ナイフが握られていた。殺す気は発していても本当に殺す気はないのがありありとわかった。だから尚更厄介と言えた。

 成田 隼。彼は元々同級生で友人でもあり、ライバルでもあった。

 しかし今は最悪の商売敵だ。

「まあクライアントがその手の人だと君が出てくるのはわかっていたけど正式に依頼を受ける前に恫喝っていうのはあまり感心しないねえ……」

「こうでもしないと絶対にお前は引かないだろうからな」

「ご名答。

 でもこうでもしたって俺がヤマから降りない事も君はよく知っている。何故なら……

 君は俺の事が憎くて憎くてしょうがないし、大嫌いだからね!」

「黙れ。今回は忠告だ。

 次はないと思え……」

(それが君の優しさでもあり最大の弱点なんですけどね)

 隼は無表情で笑い声をあげるとすっと闇に溶けていった。

 相変わらず自分の存在を隠すのが巧い。

 継比古は彼の事を深追いしようとはしなかった。決してこのままの関係が互いにとって良いとは思わないのだが、各々の存在があって商売が成り立ってしまっているのもまた事実だ。

「ま、最大の弱点は俺自身なんだけどね」

 ぼそっと誰が聞いているでもない虚空に継比古は語りかけると笑みを浮かべ、電灯が煌々と輝く路地を進み家路へと着いた。


 明くる日。

 某ハンバーガーショップに男は佇んでいた。

 スタンバイし始めたのは十三時半頃からだから気づいたら二時間になる。もうお腹はおかわりしまくったコーヒーでダボつき胃が痛いくらいだった。静より貰ったクライアント、鳴神 美呼吐のプロフィールを目で追いつつ独自ルートの資料にも気を配る。

 なまじ彼女が幼い頃を継比古は知ってしまっていた。だから例え彼女がどのように変容していようとも協力はする。

 おそらくその頃の話をしても彼女に記憶はないだろうが、田名部家にとっては間接的に世話になっている。

「ここです。さ、あそこにいるのがウチの所長です」

「ありがとう。すみません急に呼び立ててしまって……」

 髪の毛はややセミロング。高校生の割りには胸もあり、声も優しい。

 ただその魅力とは反比例するかのように美呼吐の右頬は腫れ上がり、眉は何かで切られたような痕が見える。

(何て事だ。か弱い思春期の女の娘をこんなにまでするなんて……)

 思わずため息が漏れる。だが仕事は仕事だ。

 すぐに継比古は切り替える。

「何か飲み物は?ああ、シズ姉も」

「じゃ、わたしはコーラ」

「……わたしはバニラシェイクを」

「了解」

 最初電話での態度を聞いた感じではもっと怯えながら来ると踏んでいたが、少なくとも継比古の目の前にいる彼女からはそんなものを微塵も感じさせない程落ち着き払っており、むしろ自分が浮ついているくらいに感じられた。

「ありがとう…… ございます」

「いいえ。美呼吐ちゃんだっけ?

 じゃ、話を聞かせてもらいます」

「あ。はい」


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