詩とはいつしか遺書に似て
詩とはいつしか遺書に似て
残されるのはわたしの欠片
午後も遅くアスファルトの
のめり込むような眩暈の果てに
いつか記憶の期限切れの死者となり
言葉たちは紙くずになっても
切り裂いて射す光の放埓に
明らかにされる生々しさとして
ヘマタイトの鏡面を裏側に持つ
欠片は確かにわたしにあるから
点描画で描かれているこの世界の
無数の点の一つとして
かつて幼子の瞳に輝いた
色付きのカットガラスの一つとして
まだ試作品の朝の目覚めに訪れる
微かに瞬く予感の光となって
拡散していく言葉の粒子たちの
ひと時の止まり木となって
誰ひとり拒むことのない
ライブラリの片隅に置かれる
一篇の詩集の中で
木の芽のさいしょの息を
輝く海を青く染めるものを
色づきを止められない木々を
凍りつく眠さのさみしさを
書き留めるわたしの欠片
お読み頂いてありがとうございます。