始まりは変人を呼んで
主人公は榛名君です。ヒロインは……どうしようかなぁ?
「オレの名前は榛名 晴明、字は……あー、書いた方が手っ取り早いので書きます!
……中学の時の部活は吹奏楽部で、トランペットのセカンドパート……あ、分かりやすく言えばラッパ吹いてました。中学時代可愛いと男女問わず言われむていましたが、流石に高校生にもなって男に可愛いは勘弁してください。それと、疑われる前に言っておきますが、オレはホモじゃありません! これだけははっきりと最初に……」
「「「残念ながらホモはNG」」」
「ちょっとそこの野球部っぽい男子3人組! 確か……金本と愉快な仲間達! KBSトリオ! ハモらせるのやめろ! あと、誰がホモだ!」
オレへの熱い風評被害やめろ。泣いてるオレだっているんだぞ。
「私、榛名ちゃんになら人生捧げていいかも」
「霧島先生(28)はあたかも女子生徒みたいな声でさりげなく生徒に求婚しないでください! さっき通りかかった教頭先生に睨まれたばかりじゃないですか!」
「俺、榛名になら掘られてもいい♂」
「アッー! ああもう! 埒が明かないのでこれでオレの自己紹介は終わります!」
入学式の後のホームルームで、右も左も分からない新入生同士の無難……にしたかった自己紹介を済ませた後、出席番号では次の男子……のハズだが、何故かそいつは女子の制服を着ていた……と入れ違いに席に座った。
平坦を通り越して虚無の領淵なバスト、隠しきれず僅かに外股気味な歩き方、女の子としては短めの髪、格好良い男子には目もくれず……ただしオレは見られていた……クラスの可愛い子を探す目線、etc……
俺は姉のせいで鍛え上げられてきた直感と観察眼で面倒事の匂いを感じとり……神に祈った。ただし日本式無宗教であるが故に、近所の神社にお参りするような感覚だったが。
そんな祈りも虚しく、彼は口を開き、後に伝説の序章となった自己紹介演説を開始した。
「僕はミョウギ ユウキ、漢字は妙義山の……え、わかんない? 妙寺のほうは妙高山の妙に正義の義。それに、《優》しい《季》節で優季です。ちなみにこんな格好にこんな顔ですがこれでも生物学的な性別は男の子です。榛名君と同じでいわゆる男の娘ですね。」
ここまでならまだよかった。おそらくあの制服は手違いだったのだろう。そんな安堵したような空気が流れた。実際、オレも胸をなで降ろした。
だがその直後、続けてこう言い放った……
「ちなみにこの制服は僕の趣味です。ちなみに下は仮性です。それから……ただの人には興味がありません。厨二病、廃人手前、不幸体質、人間じゃない方、、事件を呼ぶ方、普通じゃない特技を持つ人、ヤンデレさん、榛名君、もしくは元男の可愛い子は僕のところに来てください! 変わった人が大好きなんです!」
唖然としていた……クラスメート全員、どころか担任(28)さえ唖然としていた……某スズミヤさんのパクりセリフだったからではない。それすら気にならなくなるほどに何をいっているのか理解出来なかった……
何故か名指しで指名されたオレの方を見る余裕が無いほどには、皆が呆然としていた……
「ちなみに僕はホモじゃないです。 レズでも ないです。僕は変わった人が大好きなんですよ。本当に、本当に、大好きなんですよ。でもホモは嫌いなのです。昔の嫌な思い出が甦ってくるんですよ。僕は変人が好きなんです。好きなんです。大好きなんです。」
もはや誰にも止められないのかと思われた彼の凶行、しかしそれは……
「那緒キック」
彼と同じくセーラー服を着た一人の少女によって止められた……少女による、目を逸らしたくなる一発のキックによって……
「………………あぉぅん」
優季君は股間をおさえながら意味不明な悲鳴をあげて後ろの黒板に寄りかかるように倒れた。
「……すみません。時間超過していたので次の私の番です」
どうやら変態から変人にバトンタッチしただけのようだ。
「ボ……じゃなかった、私は赤城 那緒です。見ての通り女の子です」
前のやつが女装男子だったからなのか、女子のトップバッターである赤城さんがれっきとした女子であることを強調して、笑顔で自己紹介を始めた。
気絶した優季君をよそに、この後は順調に自己紹介が進んでいった。3、4人にひとりは明らかに変な人が混じってはいたが、まあまあ順調に進み、何事もなかったかのように終わった。