プロローグ
始めに、こんな物語を書いていますが、和久名は変人ではありません。それだけははっきりと1話前書きにて伝えたかった。
「榛名君って……可愛いよね」
「えー……そうか? ……って、かっこいいって言われたかったんだけどなぁ……ハハ」
またその『誉め言葉』か。心のなかでそう思いながらも、笑顔を作りながらその言葉に相槌を打つ。
何度目だろうか。そんな悪意のない心無い言葉をぶつけられたのは……
「ホント、肌もスベスベー」
「いいなー羨ましいなー」
「え、ちょっ……いきなり触んなよな!」
……この子達、半年は一緒のクラスメートなのにオレが思春期の男の子だって忘れているのではなかろうか。半年一緒だったクラスメートだからこそ、自然に女の子として扱ったという線もあるだろうが。
まあ、生まれてこのかた十四年と半年強、毎日のように可愛いと言われ続け……五歳のオレへの可愛いと十四歳のオレへの可愛いは同じ「可愛い」でも意味合いが異なるが……
そんな些細な日常の出来事から半年と少し……こんなことを思い出したのは、高校生活一日目……一生忘れることのないであろう、衝撃的かつ意味不明な始まりであった……自己紹介フェイズにて起こった事件が原因だろう……
あまり可愛いと言われずに、平穏な日々を過ごしたいというオレの切なる冀望は速攻で壊されることとなった……腐れ縁予備軍にして最凶の女装男子、妙義 優季の、とてつとない爆弾発言によって……