第2話 ドラメルス教徒
なんとか投稿。話が変になってないだろうか。
「こいつは何時になったら終わるんだ?」
その視線の先にはアースドラゴンが走ってできた道が延々と続いている。
「もう結構な距離を走ってますよね」
「この先に砂漠があるみたいだから、そこから来たんじゃないかな。というか、そうであって欲しい」
彼らはアースドラゴンがどこから来たのか調査するために、早朝からアースドラゴンが造った道をたどっていた。しかし、1000km近く走っても終わりが見えず、疲れ始めていた。
「しかし、何故アースドラゴンはこんな長距離を移動した? ここに来るまでにも、安全に食糧調達が可能な場所が多くあったというのに」
「だよな、する理由がねえ」
「なら、何者かが意図的に移動させたというのは?」
「テンブルクの近くに来たことを考えると、ドラメルス教の連中かな」
ドラメルス教とは、滅びの神ドラメルスを信仰する宗教のことだ。ドラメルスは神代に10体の分身を生み出し、世界を滅ぼそうとした黒い巨人だ。それを阻止するため、大地の神ハーティアが戦い、彼が植えた3本の神樹によって封印されている。ドラメルス教徒はドラメルス復活のため世界中で活動しており、その危険性から見つけ次第、軍などが殲滅していた。
「だとしても意味わかんねえけどな。連中だってアースドラゴンだけでテンブルクをどうにかできると思ってねえだろうし」
というのも、テンブルクにはハーティアの神樹が1本あることから、ドラメルス教徒に狙われている。しかし、テンブルクの冒険者達は魔族の国、ガンボルトとの戦いで鍛え上げられた強者が多く、アースドラゴン1体程度なら瞬殺されて、冒険者達の晩飯になるだけだ。
「何をするか分からないのが彼らの恐ろしいところです。注意しておいて損は無いでしょう」
そう話している間に砂漠に入っていき、彼らは走り続けた。
そして、アースドラゴンの造った道が終わる。
「何もねえな」
周りを見渡しても、離れた場所に魔物が数体いるだけだ。
「一応周囲を調べたら、すぐに町に戻るぞ」
その時、4人に魔法通信が入った。
「よぉーしてめえら、メシ食いに行っていいぞー」
ジャンの声を聞いた新人冒険者達は、重い足取りで鍛練場を出ていく。
「よし、教えたことはちゃんと出来てる。あとは度胸がつけば何とかなるか」
今日はオークでも狩りながら山を登る予定だったのだが、昨日の事件で新人達が不安そうにしていたので、気分転換がてら基本訓練をさせていた。
「頑張っとるようじゃの」
槍を持った筋骨隆々の老人、テンブルク冒険者ギルド長のブランが話しかけてくる。
「兄貴達に頼まれたんで。それにみんな頑張ってるから、教えがいがありますぜ」
ジャンは嬉しそうに笑う。
「ちょっと前まで、オークに泣かされてたヤツがよく言うわい」
「泣いてねぇです。それにここの魔物がおかしいんです。普通のオークは音速で動かねぇです。」
ちなみにガンボルトのゴブリンは、衝撃波で遠距離攻撃ができる。
「それを言うなら、普通の人間は魔物と戦えんよ。種族で多少差があっても、鍛えれば変われるということじゃ。神代の英雄が神を倒したようにの」
そんな話をしていた2人だったが、
「ジャンッ!」
「分かってるっ!!」
周りを衝撃波で吹き飛ばさない、ギリギリの速さで町の外に向かって駆け出し、他の冒険者達も慌ただしく動き始める。
「何だありゃ!!」
その視線の先には、黒い何かが蠢いていた。それは凄まじい速さで膨れ上がり、巨人に変貌する。
他の場所でも次々と巨人が出現し、計10体が町を取り囲んでいた。
「黒い巨人が10体……まさかドラメルスの分身か!?」
「何でそんなのが!?」
「分からん。とりあえず奴らを倒すぞ!!」
周りの熟練冒険者達も、黒い巨人を倒すため武器を持って走り、新人達は住民の避難を急いでいた。
黒い巨人達は拳を振るい、魔導防壁を破壊する。
「クソったれ!」
ジャンは拳銃を引き抜き、黒い巨人に向かって跳躍する。
黒い巨人はジャンを叩き潰そうと、腕を横薙ぎにする。しかし、ジャンはその腕を足場にしてさらに跳躍し、黒い巨人の顔面に
「死にさらせぇ!!」
と罵声と魔弾を浴びせかける。
閃光が黒い巨人の頭部を消し飛ばし、衝撃波が撒き散らされる。しかし、首元が膨れ上がり、再び頭部を形成していく。
「頭吹っ飛ばしても死なねぇか」
ジャンの視界の端で、黒い巨人が宙を舞う。それは黒い巨人が跳躍したのではなく、冒険者に投げ飛ばされたものだった。
黒い巨人は飛ばされている間も攻撃を受け、数km先に落下する。その直後、閃光と衝撃波が撒き散らされ、黒い巨人が跡形も無く消し飛ぶ。
大穴が開き、大地が溶岩化した地獄の中心には、槍を持った老人がいた。
黒い巨人が再生する様子は無い。
「全身を消し飛ばす、かぁ。難しいぜ」
最大出力で2丁同時に撃てば可能だろう。しかし、それでは町に被害がでる。そうならない為には、先に黒い巨人を遠くまで運ぶ必要があるが、銃という武器は弾が当たっても、吹き飛ばす前に貫通してしまう。
「やりづれぇなぁ」
そう言いつつ、黒い巨人の攻撃を宙返りして避ける。
その時ジャンは目撃する。人々が避難する町の中、そこを凄まじい速さで走る黒い人影を。
数は8、逃げ遅れた人々を轢き潰し、町の中心へと向かっている。その先には広場がある。ドラメルスを封印する、ハーティアの神樹が植えられた広場が。
狙いに気づいたジャンは、目の前の黒い巨人を無視し、ドラメルス教徒に魔弾を放つ。数十発の魔弾は確実にドラメルス教徒の命を消し飛ばした。しかし、別の方向から現れた、3人のドラメルス教徒が自爆し、魔導防壁ごと神樹を吹き飛ばした。
もう少し町に冒険者が残っていれば、早く黒い巨人達を片付けていれば。そんな意味の無いことを、ジャンは考えずにはいられなかった。
しかし呆けている暇は無い。1秒でも早く、黒い巨人を倒さなければならない。
「やるか」
そう呟くと彼は再び跳躍、銃の連射で首と四肢を消し飛ばして軽量化。そして胴体を掴み、全力で投げ飛ばす。
数百m先で落下する頃には再生するが、町から離すことに成功する。それを何回か繰り返し数km離れると、最大出力で2丁同時に撃つ。放たれた2つの閃光は大気を焼き、黒い巨人を跡形も無く消し飛ばしても止まらず、その先にあった大地を削り、遥か彼方へ飛んでいった。
町の方でも、投げ飛ばされた黒い巨人が空中で爆砕されたり、再生を上回る速さで魔法を連射され、削り切られたりしていた。
「終わったな」
その言葉を裏づけるかのようにまた1体、黒い巨人が消し飛んだ。