第1話 冒険者の災難
初投稿、そして見切り発車。
4人の男が森の中で木々を吹き飛ばしながら走っていた。その後ろ、大地をえぐりながら翼の無い巨大なドラゴンが追いかけている。
「今日はやけに調子が良いと思ったらやっぱりコレかよ!」
大剣を担いだ男、マークが叫ぶ。
「何で新人教育がこうなるかなぁ」
杖を持った男、ウィルが嘆く。
「頑張ってください」
鎧を着た男、サイオンが励ます。
「この先に谷があった。そこであれを叩き落として先手を取る」
無手の男、ジョンが指示を出す。
各々それに返事をし谷へと疾走する。
「ところで、何でこんな場所にアースドラゴンがいるんだろ?」
アースドラゴンというのは、空を飛べないが、地面を走ることに長けたドラゴンのことだ。馬の代わりに輸送に使われることが多い。
「確かにおかしいですね。普通は乾燥した場所を好むのですが」
「食うもんが無くなったか、自分より強いヤツに追い出されたんじゃねえの」
「そもそもここから数百km以内に、アースドラゴンの生息地は無い」
「異常事態ですね」
「なら早く片付けてギルドに報告したほうがいいんじゃねえの?」
「焦ってうっかり地形変えたらギルド長に怒られるよ。丁寧にやらないと」
そうしていると広い谷が見えてくる。するとジョンが、
「先に行くぞ」
と、そのまま空中を駆け、向こう岸に着くやいなや上に跳躍する。それを追い、マークとサイオンが地面を砕く勢いで、向こう岸に向かって跳躍し、ウィルが重力など無いかのように飛翔する。
一瞬遅れて、ドラゴンがマーク達に向かって跳躍するが、
「ふんっ!!」
上から降ってきたジョンが、谷底に蹴落とした。
ドラゴンが地面に叩きつけられ、地面には轟音とともに亀裂ができる。それでもまだ元気そうだ。しかし、
「喰らえっ!」
ウィルが追い討ちに魔力砲を放つ。
人にとっては広い谷もドラゴンには窮屈なようで、まともに動けず、指向性を与えられた赤い魔力の砲弾が胴体に直撃する。反撃に口から炎のブレスを放つが、
「おっと、危ない」
と、サイオンがその鎧と左手の盾で防ぐ。
そして飛び降りたマークに眼球を切り裂かれ、ドラゴンは視力を失う。
再びウィルが魔力砲を放ち、アースドラゴンの胴体を貫く。畳み掛けるようにジョンが顎を蹴り上げ、上から降ってきたサイオンがメイスで後頭部を殴る。頭を揺さぶられたアースドラゴンは、うつぶせに倒れ、
「もらったァっ!」
マークがその首を切り落とした。
「いやぁ、重たいねコレ」
そう言うウィルの背中には分割されたアースドラゴンの一部があった。
「しょうがねぇだろ。拡張空間に入り切らなかったんだからよ」
拡張空間は大抵のものを格納できる便利な魔法なのだが、アースドラゴンのような巨体を丸々入れるほどは広くできなかった。なので分割して入れられるだけ入れてあとは担いで町に帰っているのだった。
「帰ったらギルドに、森にアースドラゴンがいたことを報告しないといけませんね」
「明日までには調査依頼が出されるだろう。それで原因が分かればいいのだが」
「なら早くテンブルクに帰ろうぜ。流石に疲れた」
テンブルクとはアーケルンという国の端にある、彼らが住む町のことだ。
「もう少しで着くから頑張って」
戦いの後とは思えないほど和やかな雰囲気で彼らは歩いていくのだった。
そしてジョン達は町の冒険者ギルドで報告を済ませた後、ギルドの食堂で食事をしていた。
「とりあえず一段落つきましたね」
「でも早速調査依頼出たよね」
「報告が終わったらすぐに押し付けられたよな。仕事が早いぜ」
「しょうがないだろう」
話し合う四人、そこに一人の男が話しかけてくる。
「お疲れ様です、兄貴達」
そこにいたのは腰のホルスターに2丁の魔導拳銃を収めた、ジョン達の後輩のジャンだった。
「疲れてはいない。お前こそ大丈夫か? あの後オークの集団に遭遇したと聞いたが」
「ソイツは心配しすぎじゃないですかい? オークくれぇ新人がいくらいても楽勝ですぜ」
「初めて会った時のことを考えるとな」
「オークの集団に袋叩きにされてたよな」
「そのことは言わねえでください。それより明日調査に行くみてぇですが、オレでよけりゃ手伝いますぜ」
「いや、それよりお前は中断された新人教育の続きをしておいてくれ」
するとジャンは笑顔で、
「まかせてくだせぇ、全員簡単には死なないように鍛え上げてみせますぜ」
と言った。