通話
オーブ君は一応私たちの住んでいる世界出身です。ちょっと、暮らしていた時代が古いですが。オーブ君は設定的に丁寧語を使う子です。リブレリアが近未来型(?)携帯電話で話している画面の向こうの彼女は、きっと謙譲語を使っているハズ・・・
リブレリアはに口の前に人差し指を立てられ、オーブは静かにした。
どういうことだ、科学文明が遅れている?ブリテンは世界一発展を遂げた国であることは、若輩者の俺だってわかっていることです。事実、あんなにブリテンを嫌っていた海を挟んだ隣国も下手に出てきていたくらいなのだから。
「ああ、はいはい。リブちゃんよぉ。あらぁ、アナタが私にかけてくるなんて珍しいこともあるのねぇ。」
リブレリアは世間話をするかのような口調で画面の向こうの少女に話しかける。
彼女は向こうに意識が言っているようです、これを見て
『いやはや、最近ちょっと、ポーデンレームが代替わりで揺れていましたので、連絡を怠ったのは、許してもらえませんか。』
一歩下がる、彼女が気付いている気配はない。
「まぁ、別に怒ってなんかないからいいけどぉ。」
また一歩下がる、今度は少し大きく下がった。彼女はまだ気づいていない。
そろそろ、ダッシュで走ってもいいでしょうか。彼女には失礼だが、走って彼女が付いてこられる可能性は低いでしょう。
『そうですか。そちらの保護結界が揺れたそうですね。イスカーからの報告も承っておりませんので、何があったのか、公正な判断で、ご報告ください。』
オーブが走り出そうとした瞬間。
リブレリアはオーブを一瞥すると、少し微笑み。
「逃げちゃだめよ」
と言った。
オーブは自分とさほど歳の離れていないであろう彼女に、恐怖を感じた。
このまま彼女の行ったことを無視して走って行ってしまったら、どうなるのか、わからない。
『どうしましたか。もしかして、話中でしたか。なら、申し訳ないことをいたしました。』
「うぅん、気にしなくていいわよぉ。えっとぉ、結界が揺れた原因っぽい人がいるからぁ、その子連れてくねぇ。」
「え、あ、あの俺その、魔族?とかじゃありませんし、そんな大層なことも考えてもいません。大人しく暮らすと誓ってもいいです!そ、それでも駄目ですか?」
もう、世界を的に回そうだとか、そんな変なことも望んでないし、大人しく暮らすから見逃してもらえないだろうか。というか、神様っぽい人よ。俺は静かに暮らしたい、って言いませんでしたっけ?しょっぱなから全然静かじゃないんですが………。
『あー、えっと、原因究明のためなんですが、一応伺ってもらえないでしょうか?』
「取り合えずぅ、くるだけでいいのぉ。」
『ほんと、ちょっとだけでいいんで、ほんのちょっとだけ!』
「むしろそんな怪しい誘われ方したら行く人も行きませんよ!?」
行かなければならないというなら行くのに何故この二人は怪しい誘い方をしたのでしょうか。ああ、さっきの発言から駄々を捏ねると思われたのでしょうか、心外です。
『アハハハ、ではお願い致します。今、ムタチオンにおりますので……。できればイスカーに意見をいただきたいと存じておりますので、取り敢えず彼処に伺っていただけたいです。』
「テレポーター使っていいのぉ?」
『はい。勿論構いません。むしろ使ってください。こちらも要件がありますので、ではお気を付けて。』
テレポーター……?
なんなんですかね、それは
◇◆◇◆
ムタチオン王國__首都シング__王宮内_とある廊下
通話を終えた少女はフェイト__”携帯型高度データ処理端末”通称”フェイト”__の新しく小型化された指輪型の端末の性能に満足していた。
指輪の装飾品のように付けられた美しい石は全て高純度の魔結晶石が使われており、見た目も可愛らしい。この魔結晶石によるエネルギー供給も、かなり研究費を使ったが、エネルギー効率も悪くなさそうだ。後は高純度の魔結晶石を使うから、価格が高くなるが、一般人が全く手を出せないような値段ではない。石を少なくすれば安価に収まるが、それでは直ぐに充電切れになってしまう。
その辺が問題ですね……。
先程までリブレリアと通話をしていた少女__メディカは思案に暮れていた。
コツ、コツ、
メディカは人が近づいて来るのを知っていたが、無視して思案を続けていた。
「メディカ様。御用件は終わりましたか?急かすようで申し訳なく思いますが、何分ボクもまだ仕事が残っているんですよ。」
メディカに話しかけたのは、ゆったりとした上品な服を着た穏やかに笑う人物。一目見ただけで、それなりの身分であることが伺える。その人物の声は、男としては少し高い、だが、女としては低すぎる、そんな声だ。どこまでも、どこまでも中性的なその人物。
「御時間取らせてしまい、申し訳ありません。ですが、この指輪何に見えますか、アシーディア様。」
アシーディア、と呼ばれた人物は眉をひそめ、深海のような暗い蒼い瞳は不快を写した。この世界で天性的に青い瞳を持つ者は少ない。いや、少ないと言う言い方はおかしい、生まれながらの青を持つ者は限られた一族しか持っていない筈である。その一族の血縁でもなく、生まれながらの青を持つ人物。そんな稀有な生まれをした人物。
「あぁ、申し訳ございません。フェクダ様。」
「ええ。その指輪ですよね。魔結晶石がかなり付いてますし、魔力の補助でしょうか。ですが、そのような物はもうありふれていますし、メディカ様が紹介するぐらいなのですし、画期的なものなのでしょう?」
「はい。これは新型のフェイトです。付いている魔結晶石からエネルギーを供給している次第ですよ。まだ、試作段階ですが満タンに魔力が宿っている状態なら、このタイプの場合、三日ほどもちます。」
「へぇ。それはそれは、オシャレを目指しながら実用性もあるんですね。うちのこの夏からデビュー予定の新人達をコマーシャルに出させてもらいたいものですね。」
ムタチオン王國は、シュトーデル首長国連邦に含まれる小さな國。そんな國の一大産業がタレント業である。古くから、人魚の遊び場として栄え、多くの美姫伝説を出している。今は人魚たちは世界を跨ぐ麗しのアイドルとして大活躍、という訳だ。國は人魚の生活を保証し、人魚たちは國に利益をもたらす。そんな関係だ。
「わかりました。そういうように手配いたしましょう。」
そして、二人は廊下を渡りながらまた別の商談を開始した。
誤字脱字、設定がおかしければご報告お願いします。一応いくつかのサイトで調べてはいますが、あくまでネットの知識なので偏っている場合もあると思いますので、気軽にご指摘ください。///ポーデンレーム・ムタチオンは国です。今後全く話に出てこないでしょう。ムタチオンはもしかしたら出るかもしれませんが。
なんか出てきた機器は小型軽量化、容量増加、画面を中に映し出すことが可能になったスマホとでも思っていただけたら結構です。まぁ、進んだスマホです。