ある死兵の哀歌
どうも。初投稿となります。一応これはどこかの誰かの思考であり、「小説」とは言い難く、少々読み難いと思いますが設定とかはきちんと考えていますので。あと、練習作でもあり、今後はこういう捻った文脈ではあまり書かないと思われます。
私は生まれる。名前は無いけど私には番号がある。
水の様な世界から何時しか机のある部屋にある。私の隣には番号がある。祖国には名前がある。偉大なる王にも名前がある。先生には番号しかない。
我々には裏切りの罪がある。我々の祖先は祖国を裏切った。だが、裏切らなかった名前を持つ祖先達は裏切った祖先たちを皆殺しにした。だけど大地は疲弊して住めなくなった。慈悲深き王は忠義ある者達に生きる術を賜った。ああ、だが我々は罪を犯した。祖国を裏切った。罪は償わなければいけない。血を持って罪は償われ、我々は救われるのだ。それが裏切らなかった者たち、そして我々への慈悲深き偉大なる王の救い。
ライフルに番号がある。だけどこれは我々より高価なもの。罪に汚されなかった、祖国の敵を滅するもの。我々も番号。伍長も軍曹も番号。時々少尉も大佐も番号。だけど将軍は名前がある。彼らの命令は王の御命令。前も後ろも右も左も全て王の御心のままに。我々は顔を覆う、背嚢を背負う、歩く、しゃがむ、走る。廃墟の中へ、泥の中へ。ライフルを撃つ。銃剣を刺す。点検。食べる。寝る。起きる。点検。だけど罪は償われない。何か無くしたら痛い。遅かったら痛い。当たらなかったら痛い。だけど何時なのか痛くなくなって場所が変わった。我々に下賜された裏切らなかったあの旗は重要。その旗の下、我々は戦い、価値がライフルと同格となる。我々は罪を償える。
違うところ。隣が罪を償った。後ろも罪を償った。同胞が前に行かない。名前があるのに腑抜けな。我々は進んだ。もっと進めば罪を償える。もっと殺せば罪を償える。もっと死ねば罪を償える。戦えない我らは必要ない。違う隣の足が無くなった。王の慈悲が与えられたから罪を償った。だけど隣にはもうライフルも服も長靴も鉄帽もいらない。罪を償うために罪を償う者にあげられた。
進んで、殺して、死んで罪を償った皆。今はもう皆が違う。あの先生と一緒だったのはもういない。顔はもう分からないから同じ。番号が変わるだけ。命令を出して先に進んだ。皆がついてきた。褒められた。皆の数が増えた。もっとついてくる。もっと進めば、もっと殺せば、もっと死ねばもっと褒められる。皆がもっと増える。うれしくなる。罪はもっと償われる。時々痛くなるけど、まだ進める。だからもと褒められる。胸に輝くものが増える。皆の数が増える。
色々な所を見た。何も無いところ。人が沢山いるところ。雪が降るところ。雨が降るところ。緑がいっぱいなところ。青がいっぱいな所。だけどやっぱり泥が沢山あるところがいっぱい。赤いのはどこにもある。掘るのは疲れるけどもっと殺せるから。少しだけ死んだらもっと殺せる。時々皆死ぬけど、また新しい皆が来る。そしてもっと掘って、もっと進んで、もっと死んで、もっと皆が来て、もっと進んで、沢山殺す。
時々、名前のある裏切らなかった同胞から色々聞かれる。なぜ顔を隠すのか。それは我々には罪がある。同胞であり、同胞ではないから顔はいらない。なぜ恐れない。恐れとは何。偉大なる王の下何も恐れることは無い。訓練以外のことは無いのか。我々は罪を償うのだ。ただ血を流すことしか我々には価値が無い。名前のある同胞たちは我々を避ける。だけどいい。我々には罪がある。それだけだ。
何時からか、我々は孤立した。殺しても、殺しても数が減らない。番号の我々は少しずつ減っていった。だけど我々はあの丘を取らなければいけない。痛いし、疲れたけど先に進んだ。
我々は進んだ。
我々は殺した。
我々は守った。
我々は死んだ。
少し痛かった。
他の皆がやってきた。だけどもう進めない。戦えない。王の慈悲が与えられる。
陛下万歳。祖国万歳。
やっと罪が償われた。痛みが無くなってきた。
我々の。いや、私は何を。何の為に。どこへ。
私は生まれる。名前は今は無い。誰かが私を持ち上げた。
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