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殺人鬼さん。  作者: 空狐
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君と出逢った一日目

昔おじいちゃんによく、世界は裏と表で二つで一つなんだよ、という難しい話を聞かされたことを覚えている。表舞台にいる自分がピンチになった時は裏舞台にいる自分が引きずり出されるという、まるで身代わり人形のような話だった。おじいちゃんは「わしゃあ昔は表舞台で活躍してたんじゃがなあ……」なんていっていたのを鮮明に覚えている。そのときの私はまだ幼かったから難しいその話は到底理解できずにはいたのだけれど、私は表と裏どっちの人間なのかなあなんて暢気なこともいってたんだけども、今やっと理解できた気がするのだ。


本音をいうと一生理解したくなかったんだけど。


簡単に言ってしまば、簡単に言えるような内容でもないのだけれど、私は裏舞台の人間で、表舞台の人間が絶賛ピンチ中ということで引きずり出されたらしい。

表と裏での違いはあるが自分であることに変わりはないわけだが、迷惑以外の何者でもない。こちとら花盛りの10代エンジョイ中にこんなことされちゃたまったもんじゃない。入試に合格して大学に入学する前夜でやっと楽しくなってきたのだ。なのに誰が好き好んで表舞台にでなきゃいけない。


誰が裏と表の世界なんてつくったんだ、ふざけるな、なんて考えても現実は変わらないのだ。

そう、表舞台の私はピンチだったから裏舞台の私が引きずり出され位置交換という形になったらしいので、まあハッキリいってしまえば?私は今非常にピンチな状況なのだ。私はすごろくでゴールがもう少しで楽しい時期にスタートに戻るマスをふんでしまったような気分だった。


ということで絶賛ピンチな私、何がピンチかっていわれても困る。私だって表舞台に引きずり出されたばかりで現状をすべて理解しているわけではないのだから。

一つだけ確かなことがあるといえば、目の前にガガガガと危険な音を鳴らすチェーンソーを構えている男が今にも私を殺そうとしている、ということだけだった。


アレ、私すごくピンチじゃないのコレ?


私って不憫だわー、ピンチに参上したヒーローは見るも無残に殺されましたとか子供泣くよ。

ヒーローもののアニメみてる子供が泣くよ。チェーンソーで切断されて死ぬとか親御さんから苦情くるよ。

そういえばR指定のつくグロテスクなゲームでゲームが下手くそな私はよくチェーンソーで首を掻っ切られて死んでいたななんて思い出した。

まさか生きるのが下手くそだったらチェーンソーで首掻っ切られて死ぬとか。リアル人生ゲームね、笑えないわ。


そんな風に思考を張巡らせている間にもチェーンソーは私の首に近づいて……こないわけで、私は目の前にいる多分男、名前はわからないので彼とでもいっておこう、彼が何をしたいのかわからなかった、わかった時点で私はもう駄目だと思う。


私は意を決して彼に話しかけてみようと思う、だってこれ死亡フラグもうたっているでしょう?きっと。


「あの」


返事はない、ただの屍のようだ。じゃなくて私が屍になりそうだの間違えだ。

ガガガガガと煩わしいチェーンソーが出す騒音のせいで聞こえていないのかもしれない、そう思って今度は先ほどよりも大きな声で「あの」と彼に言った。


「……」


その結果、彼は無言で私の前にチェーンソーを向けているではないか。自ら死亡フラグを私は回収しに逝ったらしい。字が間違ってるって?これで正しいよもう。

本当に私は首を掻っ切られて死ぬのね、ヒーロー惨殺されちゃいますごめんねヒーローもののアニメみてる子供達よ。


よく見れば騒音を出す煩わしいチェーンソーには赤い液体がこびりついており、私に現実を突きつけるのはいとも容易いことであり、これから私は殺されるということを、これから身をもって教えてくれるらしい、ノーセンキューだよといってもチェーンソーにそんなものは通じないわけだ。

まあ要するに赤い液体がこびりついているということはこのチェーンソーの餌食となった何かが前にもいるということで私もそうなるよっていうことだ。所謂私は目の前にいる殺人鬼に殺されるのだ。


「名前はわからないから、彼、いや、彼って呼ぶのは変。そう、殺人鬼さん」


どうせ殺されるなら顔をしかとこの目に焼き付けてみたいきもするわけだが、生憎殺人鬼さんは黒いフードを被っていて顔が見れない。悔しい。それならせめて、ということでですね殺人鬼さん。


「声ぐらい、聞かせてくれても良くありません?」


だってずっと無言だし、と付け加えて。ああ、私なんて自殺行為してるんだろうとも思いながら。


殺人鬼さんの口はゆっくりと開いた。


「死ね」


「あら、素敵な声してるじゃない」


表舞台にたって初めて言われた言葉は死ねだった。


殺人鬼さんの腕が振りあがる、同時にチェーンソーも振りあがる。

ぎゅっと目を閉じて、痛みがくるのをまつ。


痛みはいつまでたってもこなかった。

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