探し物は何?
初投稿です。
読んでて 合わない! っと思われたら逃げてー!超逃げてー!!無理はダメよー!!
私、サキ 17歳。
伯爵家のメイドをしていました。
そう、”していました。”
うっかり階段から足を滑らせて死んじゃった☆
・・・明るめに言っても、現実は変わりませんねぇ(実感中)
伯爵家の裏庭。
華やかに伯爵家の人々を、訪れる方々の目を楽しませる表の庭ではなく、こちらは、伯爵家の使用人たちの庭。
洗濯物や、料理長の育てるハーブや野菜。
休憩をするメイド。
当たり前に見ていた風景。
当たり前にその中に混じっていた私は、空中からぼんやりと眺める。
誰もこちらに気づくこともなく、私は何かを探すように辺りをゆっくりと眺める。
何を探しているのかしら。
自分のことなのに、どこか遠く感じる思考。
自分の名前も、階段から足を滑らせる時に持っていた物も、驚き目を開くお嬢様の姿も覚えている。
けれど、自分が何故ここに浮かんでいて、何をしようとしているかはわからない。
何かを、探しているのよ・・・ね?
日が登り、日が沈む。
数回繰り返した間も、裏庭を眺める。
何かを見落とすまいと、辺りを探りながら。
・・・上から見ているから見つけられないんじゃないかしら。
ぼんやり としつつも、そう考えて地上に降りた。
なんなく降りれたことに、少し驚きながらも歩く。
周りには誰もいない。
さざめくように聞こえてくるはずの屋敷内の声も遠い。
ゆっくり歩きつつ、辺りを眺める。
たまにしゃがみこむ。
朝焼けに染まっていた空は、気付いたら青く晴れ渡っていた。
「何を探しているんだ?」
声が聞こえた。
「何を探しているんだ?」
もう一度つぶやかれた言葉に、自分に向かって言われているのだと気づいた。
どこ?
周りを見ても人はいない。
きょろきょろ とする私に、くすり と小さく笑った声がした。
「上だよ。」
見上げると、そこには柔らかな栗毛の青年が窓を開け、窓枠に両肘をついてこちらを見ていた。
「どうしてそこにいるんだ?」
栗毛が日の光に透けて綺麗だなぁ と見つめていたら、少しだけ苦しそうに笑って青年は訪ねた。
「どうして?そう、どうしてかしら。私、死んじゃったのに・・・」
うつむいた先にあった花壇を、そこに答えでもあるようにじっくりと見つめる。
「死んだ?・・・・・へぇ。」
ぞくり と背筋が凍るような声が上から降ってきた。
何故、あの栗毛の青年は怒っているのだろう。
こんな透ける身体、死んでいるからに決まっている。
誰にも見られず、誰にも私の声は聞こえなかったのだから。
「で、何を探しているんだ?」
少し、少しだけ優しさが滲んだ・・・・・滲んでいると思いたい。
まだ怒っているのだろうか。
トゲトゲが残っている気がするが、私はあえてそれを無視しようと思う!
精神の安定のために!!
「・・・また、変なこと考えているだろう。」
「いえ、そんなことは、ありません。」
花壇の黄色い花は、微風に花弁をわずかに揺らした。
「ふぅん。で、まだ答えを聞いてないけど。」
納得いっていない と、こちらにもビシバシ伝わってくる、麗しいお声。
栗毛の青年の声は、いつも通り涼やかで甘い声だ。
「・・・何を・・・探して、いるのでしょうね。」
「・・・わからないのに、そこにいるんだ?」
「・・・わからないから、ここにいるんです。」
見上げると、眉間に皺を寄せた栗毛の青年。
あぁ、また、皺が寄っている。あとが残らなければいいけど・・・。
「皺、また寄っていますよ。」
自分の眉間を指差し、はにかむように声をかけると、青年は がばり と窓枠に持たれていた身体をあげ、目を見開いてこちらを見た。
なんで、そんな、泣きそうなの?
「君が、そこで探しているのは・・・」
「探しているのは?」
泣かないで。
私の前でしか泣けないあなただけど、私はあなたの笑った顔の方が好きなのよ。
笑って欲しくて、私は彼に微笑む。
「・・・・・・俺、だろう。」
あぁ、そうだ。
思い出した。
あの時、私は急いでいた。
彼が久しぶりにこの屋敷に顔を見せたから。
私は、仕える伯爵家の傍系の出だが、彼は私よりも少しだけ伯爵家の方に血筋が近く、そして、少しだけ伯爵様に目をかけてもらっていた。
そんな彼が、久しぶりに屋敷にやってきた。
仕事の合間を見て、彼に会いに行こうとして、階段から足を滑らせたのだ。
あぁ、また、足元をおろそかにするな と怒られてしまう・・・。
「待たせて、しまったわね。」
謝るように苦笑すれば、彼はうつむき何も言わない。
うつむかないで、屋敷の影に入ってあなたの顔がよく見えないわ。
伝える前に宙を浮かび、彼のもとへ。
「あなたに、言われていたのにね。」
『お前は慌てると、すぐに足元がおろそかになる。気をつけろ!
何回家具で足をぶつければ・・・!!』
「でも、もう、あなたを心配させないから。」
だって、私はもう
「馬鹿かっ!!今現在、心配させている身で何を言っている!!」
顔を真っ赤にさせて怒鳴る彼に、間近できらめく、その緑の瞳に、いつも通り優しい彼だと、思わず笑みを浮かべてしまった。
「へらへら笑うなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私の頭をこづくはずの拳は、私を通り抜け、彼はまた痛みをこらえるような顔をした。
やめて、そんな顔は、見たくない。
「び、びっくりしたぁ。まだ、レディを殴る癖、治ってなかったのね。」
「・・・・・。」
「そんな乱暴な人、社交界に出たら、誰も相手にしてくれないわよぉ?」
「・・・・・。」
「社交界は、それは、噂と噂と噂とお酒と猥談で出来ているそうよ。」
真面目なところのある彼は、からかわれるに決まっている。
「その癖直さないと、貴族の可愛いお嫁さん、もらえないわよ?」
「・・・ついてこい。」
笑って欲しかったのに、なんで怒るの。
前を歩く彼の背を追うと、着いたのは私の部屋。
何故? と思う前に、ノックをした。
え。私がいないんだから、今は空き部屋じゃ・・・
「はい。」
返 事 が 返 っ て き た ! !
えっ とか思っているうちに、彼は答えて扉を開けた。
毎日、見ていた顔。
もう少し、大きくてもいいと思う胸。
クリームを塗りこんで塗りこんで、ぱっと見、そんなに荒れていない と評価をもらえる手荒れのある手。
うん。私です。
・・・なんで、胸が、呼吸しているように、動いているの?
尋ねるように彼を見ると、扉が パタン と動いた。
私の部屋にいたのは、同僚のリィナで、彼の姿を見て席を外したのだ。
「サキ、お前、まだ死んでいないからな。」
えっ。
「だが、目を、覚まさない・・・。」
ちょ、ちょっとそんな風に、私の頬をなぞらないで!!
目の前で、ベッドの上で横たわり眠る私の頬をなぞる彼。
ゆっくり ゆっくり 上体を私の身体(眠っている方)に傾けて・・・
恥ずかしさのあまり両手で顔を覆い、指の間から様子を覗き見る私を ちらり と見た。
「お前が身体に入れば、意識も戻るだろう。何かの本に書いてあった。」
「私が、入れば?」
「それとも、王子様のキスで、目覚めさせてやろうか?」
にんまり と笑う彼の瞳は本気で、思わず喉の奥からひねるような悲鳴をあげながら自分の身体へとダイブした。
「起きた?」
重たいまぶたを開ければ、至近距離で彼の顔。
えっ。
久しぶりの血肉を持つ身体は弱っているらしく、とても重く、数回瞬くことで答えた。
「そう・・・。」
「っ、ごほっ、げほっ」
声を出そうとしたら喉が張り付いたように感じるほど、喉が渇いていた。
すぐに上体を抱きかかえるように起こされて、水の入ったコップを口元に当てられた。
口を開けると、ゆっくりと傾けられるコップ。
飲み干せず、口の端を溢れる水。
首筋に落ちる前に、抱えられている方の手で拭われる。
いや、そんな見せつけるように、水を拭った手を・・・って、何、口に含むのやめなさい、それ、私が飲めなかったみ・・・・!!!!
思考が途中で途切れるような程、衝撃的でした。
「俺に会いたくて、会いたくて、仕事中だけは冷静なお前が慌てるほど急いで待ち合わせの裏庭へ行こうとしてたんだろ?」
何故彼は、恥ずかしいことを言っているのだろう。
「ミリナ様がおっしゃっていた。俺が来たことを伝えたお前は、とても喜んでいたと。」
伯爵家ご令嬢のミリナ様は、私がお仕えしている方だ。
ミリナ様、体調が戻ったらミリナ様の苦手な栄養満点苦味も満点なお野菜のマイヤ・・・こっそりと増やします。
「こんなに思われているなら、俺もお返しをしなければいけないよな?」
そうだろ?
耳元で囁かれる言葉に赤くなる。
なんて恥ずかしいことを言っているんだ。
でも、一番恥ずかしいのは・・・
全て本当のことで、そして、とても喜んでいる私だ。
最後に栗毛の青年の名前を出すつもりが出ないというまさかの展開 ←
というか、最初は、優しげな青年が少女の探し物を手伝う話を思いついた話が、なんか、こう、ガツガツする青年に変身したんですがどういうことですか!
そのせいで最初の口調を直さなければいけないとか・・・。
書いているうちに全く別のものができるとか通常仕様ですよね。仕方ない!(言い切った!)