バイカーギャング
どのくらい経っただろうか。
あたしたちは山を抜け、草原の中を爆走していた。
「おねえちゃん! みてみて! 野生の動物がいるよ!」
ミリィが遠くの動物を指差して、嬉しそうな声を上げた。
(……まるで、サファリパークね)
あたしは、小さい時に親に連れていってもらった、サファリパークの平和な光景を思い出し、少しだけ心が和んだ。
「ミリィさま、あれは動物ではありません。モンスターですわ」
後ろからリナが、落ち着いた口調で訂正する。
(え? モンスター?)
ミリィの発言に、ほのぼのと思い出を重ねたのも、束の間。
そんな感情も一気に醒め、ここが危険な異世界だと思い知らされた。
「スズネ様! 右後方から、何かが接近してきます!」
カイルが後ろから声をあげる。
ふと、目線を横のサイドミラーに映すと、あたしたちのバギーに近寄ってくるかのように、巨大なダチョウのような生き物がものすごい勢いで迫ってきていた。
「……危ないっ!」
このままではぶつかると思ったあたしは、慌ててブレーキを踏んだ。
キィィィィーーーーッ!!
耳をつんざくようなブレーキ音と共に、バギーは急減速する。
あたしたちは前につんのめりそうになりながらも、何とか静かに車を停止させた。
「びっくりした! みんな、大丈夫?」
あたしは車内を見渡し、みんなの安全を確認した。
「問題はございません……、が、お嬢様。あれがこちらを見ています」
リナが、乱れた髪を直すように座り直しながら、ダチョウのような生き物に視線を移した。
「……」
ダチョウのような生き物は、こちらを横目でチラッと見ると、フッと鼻で笑うかのような仕草をみせた。
まるで、あたしを挑発するような生意気な態度。
「なんなのあいつ? なんか顔がムカつくんだけど?」
「お嬢様。あれは、『バイカーギャング』というダチョウのようなモンスターですわ」
まるであたしの質問を予期していたかのように、間髪入れずにリナが答えた。
「バイカーギャング……?」
聞き慣れない単語をなぞりながら、あたしはサイドミラーを凝視した。
「ええ。動くものを見れば並走し、どちらが速いか白黒つけたがる。……困ったことに、そういう手合いなんです、彼らは」
リナが淡々と解説する横で、ダチョウの化け物は長い首をしならせ、こちらの運転席を覗き込んできた。
大きく見開かれた鳥類特有の無機質な眼球が、らんらんと好戦的な光を宿している。
奴はこれ見よがしに、太い脚で地面を蹴った。
乾いた土埃が舞い、バギーの車体にバラバラと音を立てて降りかかる。
「……っ、この野郎。今、鼻で笑ったわね?」
くいっ、くいっと顎を動かして先を促すその仕草は、どんな言葉よりも饒舌に「お前、遅いな」と告げていた。
(……な、なんなの、この生意気なダチョウは……)
あたしは、ワナワナと肩を振るわせる。
……いいわ、売られた喧嘩は買ってやろうじゃないの。
その余裕な面、絶対に吠えずらかかせてやるわ!
「……このダチョウ野郎に、テレビゲームで鍛えたあたしの実力を見せてやるわ!」
「お、おねえちゃん!?」
「スズネさま!?」
周りで何か言っているが、もはやあたしの耳には届いていなかった。
「みんな。舌噛まないように、しっかり掴まってるのよ!」
あたしは目を吊り上げ、シフトレバーを握りしめる。
(……絶対に負けられない戦いが、ここにはあるのよ)
頭の中でレース開始を告げる「3・2・1・GO!」のシグナル音が響き渡ると同時に、あたしはアクセルを床が抜けるくらい力一杯踏み込んだ。
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