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【7000PV感謝 & 4章スタート】異世界★魔法少女― 転生初日に聖女扱いされましたが、変身が罰ゲームすぎます! ―  作者: もりやま みお
第3章 氷の魔女と氷雪の王女 【水の都アクアヴェーネ編】
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さよなら、水の都

 翌朝――

 あたしたちは、アクアヴェーネの巨大な氷の門の前に立っていた。


 雪もある程度溶け、柔らかな日差しが街を溶かし始めていた。


「また連絡しますね!」と目をキラキラさせて、ひと足先に旅立ったレオを除き、見送りには、セレナをはじめ、警備団の人たちや、多くの市民が集まっていた。


 昨日の今日で、ゼノさんがどうなったのか……。


 気にはなるけれど、あえて聞かないことにした。

 あのあとの彼の憔悴しきった背中を見れば、彼がこれから償いの日々を送ることは想像に難くないし、それを決めるのはこの街の人たちだ。


(あるじ)様。……本当に、なんと御礼を申し上げればよいか」


 セレナが、包帯の巻かれた体で深々と頭を下げる。

 その顔色はまだ悪いけれど、憑き物が落ちたように穏やかだった。


「……主様が取り戻してくださったこの水の都、私たちが必ず復興させてみせます」


 セレナの言葉に、市民たちからも「ありがとう!」「氷雪の王女様万歳!」と温かい声が飛ぶ。


(……ああ、よかった)


 あたしは心の底から、安堵のため息をついた。


 伯爵領では夜逃げ。

 ポルターナでは朝逃げ。


 行く先々で指名手配犯みたいに逃げ回ってきたけれど、今回は違う。


 こうして惜しまれながら、笑顔で見送られて旅立つことができる。


(やっと……やっとまともな、ハッピーエンドを迎えられたのね!)


 あたしが感無量の面持ちで、街を出ようとした――その時だった。


 ズズズズズズ……ッ。


 地鳴り?

 いや、これは――。


「……え?なに?」


 あたしが振り返った瞬間。


 ドォォォォォォォォンッ!!


 腹に響くような爆音とともに、街の背後にそびえる山脈の頂から、凄まじい噴煙が上がった。


「キャァーーーッ!?」

「な、なんだ!?」

「噴火したぞ!?」


 次々と悲鳴を上げる街の人たち。


 しかも、爆発音は一つじゃなかった。


 ドォン!ドゴォン!


 連鎖するように、周囲の山々から次々と白煙と火柱が上がり始める。


「ちょ、ちょっと待って!魔族!?まだ敵が残ってたの!?」


 あたしが慌てて身構えると、肩の上でアルが「あちゃー」と前足で顔を覆った。


『……なるほどね。まあ、そうなるよね』


(ちょっと、どういうことよ!)


『スズネ、君の魔法で街の直下にあった火脈を完全に塞いだろう?行き場を失った火脈――つまり、高圧力のマグマや熱エネルギーが、地下で逃げ場を探して……』


 アルはそこで言葉を切り、噴煙を上げる山々を短い前足で差した。


『一番近くの抜け道、つまり周囲の山々から一気に吹き出したみたいだ』


「えええええええええ!?」


 嘘でしょ!?

 それってつまり、あたしのせいで火山が噴火したってこと!?


 見れば、山肌からは溶岩……ではなく、大量の熱湯と蒸気が滝のように溢れ出し、川となって街の方へ流れてきている。


 水路の水温が一気に上がり、街全体が真っ白な湯気に包まれ、まだ溶け残っていた氷が一気に溶かされていく。


「……こ、これは……」

 セレナが呆然と呟き、水路の水に手を浸した。


「……温かい。いや、熱いくらいです。これでは、水の都どころか……」


「……温泉街、ね」

 あたしは遠い目で呟いた。


 涼やかな水路が自慢の観光都市は、一瞬にして硫黄の香りが漂う、湯けむり温泉郷へと早変わりしてしまったのだ。


「おお!素晴らしい!」

 空気を読まないカイルが、感極まった声を上げる。


「凍てつく街に、大量の暖を与えられるとは!これでもう二度と、この街が寒さに震えることはありませんな!さすがはスズネ様!」


「違うから!これは完全に予定外だから!」


 街の人々も、「お湯だ……」「温かい……」と、困惑している。


 あの美しい景観は、もう二度と戻らない――ような気がする。


(……逃げよう)


 指名手配されるような悪いことはしてない。

 してないけど!


「水の都を温泉街に魔改造した女」として伝説になる前に、立ち去るに限る!

 そうと決まれば、善は急げだ。


「あ、あの!そういうことなんで!あとはセレナ、任せたわよ!温泉饅頭とか売り出せば、きっと復興も早まるんじゃないかな?じゃあ、またね!」


 あたしは早口でまくし立てると、逃げるように街の外へ向かう。


「あっ、主様!?」

「いってらっしゃいませ、氷雪の王女(アイス・プリンセス)様ーっ!」


 湯気にかすむセレナたちの声を背に、あたしは競歩の選手のように速度をあげた。


 逃げているわけじゃない。

 ただ、ちょっとばかり、気まずいだけ。


「リナ、カイル、ミリィ、さあ行くわよ!」


「御意」

「かしこまりました」

「はーい」


 あたしの後ろで賑やかに、返事が聞こえた。


 こうしてあたしたちは、硫黄の匂いと新たな伝説を置き土産に、湯けむりの向こうへと旅立つのだった。


 ――第3章 完――

ここまで読んでいただきありがとうございます。

これで第3章完結となります。


第3章いかがでしたでしょうか?

序盤からかなりふざけつつも、スズネの未来が大きく動く章となりました。


4章は、さらにふざけつつも、シリアスに物語が進んでいきます。


よろしければ、ブックマーク、評価、リアクション絵文字、感想、なんでも構いませんので、4章にむけて応援いただけると執筆の励みになります!

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