女海賊は拳で語る
「さあ、こちらの反撃の時間よ、カイル!」
「はっ!!」
あたしは黄金のサーベルステッキを拾い上げ、鋭く命じた。
「とりあえず二人の縄を解くから、時間を作って!」
「ーーその必要はありませんわ」
背後から響いた涼しげな声に、あたしは思わず二度見した。
そこには、いつの間にか拘束を解き、涼しい顔でミリィの手を引くリナの姿があった。
「この程度の縄など、拘束されたうちに入りませんわ。
……全く、これだから素人は。
本当の『縄』の使い方、そして愛のある縛り方というものを全く分かっていませんもの……。
お嬢様、後ほどわたくしが、本当の『縄』の使い方を手取り足取り教えて差し上げますわーー」
「いいから少し黙ってて!」
呆れるあたしを余所に、リナは手慣れた手つきで懐から暗器を取り出し、カイルと並んで前へ出た。
……まあいいわ。これで、守るべきものはなくなったわけね。
「リナ、カイル!雑魚は任せたわよ!」
「かしこまりました」
「御意!!」
二人が影のように飛び出し、瞬く間に周囲の兵士たちをなぎ倒していく。
あたしはその中央を堂々と突き進み、腰を抜かして震え上がるゾルグへと詰め寄った。
「な、なな、なんだお前は!くるな、来るなァ!」
ゾルグが必死に剣を振り回すが、そんなスローモーションな動き、あたしの敵じゃない。
あたしは一歩、また一歩と、パステルピンクの放電を纏った拳を握りしめた。
拾い直したステッキ?
……あんなの、今は左手で握りしめてるだけで十分よ。
この煮え繰りかえるような羞恥心と、爆発寸前の怒りをぶちまけるなら――ステッキを通した魔法なんかじゃ、まどろっこしい。
あたしのこの拳で、直接その顔面にぶち込まなきゃ、気が済まないんだから!
「ま、待て!金だ、金ならいくらでも出す!命だけは――」
その言葉、聞き飽きたわよ。
あたしは地を蹴り、ゾルグの鼻先へと肉薄した。
「金で済んだら、海賊はいらないのよ!!」
あたしの羞恥心と怒りが凝縮された、渾身の右フックをゾルグの横っ面へ叩き込んだ。
ボッッッ!!!
衝撃でゾルグの巨体が浮き上がり、独楽のような、きりもみ状の回転を加えられながら、後方へと吹っ飛んでいく。
脳天がそのまま壁にぶち当たり、砕け散るかと思ったその時――あたしを「人殺し」にさせないための、アルの過保護なシバリが発動した。
「え!?ちょ……何!?」
岩盤に頭から突っ込んだゾルグは、淡い光に包まれ回転を緩めるどころか加速させた。
それと同時に、遠心力で左右にだらしなく広がった両手が、まるでトンネル掘削の回転刃のようにーー
ギャリギャリとパステルピンクの火花と火薬のような粉塵を撒き散らしていく。
ズガガガガガガ……ドッシャアァァァァンッ!!
岩盤を、巨大な円形にくり抜いて突き進んだ「人間掘削機」は、奥の部屋に到達し、壁に激突してようやく停止した。
あとに残されたのは、精密な土木工事を施したかのような、ゾルグの回転半径に合わせた見事な「トンネル」だけだった。
「ええええええええ!?」
物理法則を完全に無視した、掘削にあたしは顎が外れそうになった。
その光景――ボスが「人間掘削機」なった現実を目の当たりにした残党たちは、戦う意欲を完全に消失したようだった。
「ば、化け物だ……」
「無理だ、あんなのと戦えるわけがない……!」
部下たちは武器を投げ捨て、ヘナヘナとその場に崩れ落ちる。
静まり返ったアジトで、あたしは自分の右拳と、その先に開通したトンネルを交互に見つめ――ようやく、短く息を吐いた。
いつもご愛読いただきありがとうございます!
昨日は一気に2つもブックマークをいただき、驚きと同時に感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございます!
現在、第3章の執筆を進めているところなのですが、実は展開に少し悩んで筆が止まりかけていた瞬間がありました。
ですが、こうして目に見える形で応援をいただけると、「ちゃんと楽しんでもらえているんだ!」と自信が湧き、一気にモチベーションが回復しました。
PV数ももちろん嬉しいですが、やはりブックマークなどのリアクションをいただけることが何よりの原動力になります。
完結までしっかり、そして勢いよく書き抜きたいと改めて気合が入りました!
これからも『異世界★魔法少女』の応援、どうぞよろしくお願いいたします。




