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【6500PV感謝 & 4章スタート】異世界★魔法少女― 転生初日に聖女扱いされましたが、変身が罰ゲームすぎます! ―  作者: もりやま みお
第2章 魔法少女は海賊の夢を見るか?【貿易都市ポルターナ編】
42/70

キャプテン・サクラ、推参!

 煙が晴れた広間。


 そこには、突然の扉の破壊と「人間砲弾」の飛来に、腰を抜かさんばかりに驚いている男たちの姿があった。


「リナとミリィを返してもらうわ」

 あたしはパステルピンクの煙を切り裂き、広間の中央へと堂々と踏み出した。


「あ、あいつらの仲間だと……?貴様、何者だッ!?」

 ボスのゾルグが、震える声で叫ぶ。


 それに対し、あたしの肩でアルが楽しげに声を弾ませた。

『スズネ、教えてあげなよ。

 君が本当は何者なのかをさ。さあショータイムだ!』


「……っ!ちょっと、アル、何を――」

 制止しようとしたときには、もう遅かった。


 足元から噴き出した魔力の光が、あたしの意思を完全に無視して、勝手にあたしの(ポーズ)を作り上げていく。


(……ああもう!嫌だって言ってるのに、なんで勝手に手が動くのよ!)


 あたしは心の中で全力で拒絶した。

 けれど、魔法少女の呪い(?)は容赦なく、あたしの喉から「最高に可愛くて凛々しい声」を強制的に絞り出した。


「風を呼び、嵐を呼び、荒波を越えるは乙女の正義!

 魔法海賊少女(マジカル・パイレーツ)、キャプテン・サクラ!ここに推参!」


 キラキラと舞う桜の花びら(どこから出たのよ!)。

 黄金のサーベルをバシッと正面に突き出し、あたしは片目を瞑って完璧なウィンクを決めていた。


 ……死にたい。

 今すぐこのアジトと一緒に自爆したい。


「……っ、ぷっ……はっはははは!なんだそのふざけた名乗りは!」

 恐怖していたはずのゾルグたちが、一転して爆笑し始めた。


「わっ、笑いたければ笑えばいいわ!それよりも、リナとミリィはどこよ!」

 あたしは羞恥心を無理やり怒りに変換して、プルプルと震える手でサーベルを突きつけた。


「こいつらのことか?」

 ゾルグがニヤリと下卑た笑みを浮かべ、顎で背後の扉を指し示した。


 重苦しい音を立てて開いた扉の向こうから、屈強な兵士たちに荒っぽく引きずり出されてきたのは、無残にも縄で縛り上げられた二人の姿だった。


「おねえちゃん……っ!うっ、ううぅ……!」

 ミリィは小さな体を震わせ、溢れそうになる涙を必死に堪えていた。


 恐怖に引き攣った顔で、けれどあたしの姿を見つけた瞬間にぱっと表情を明るくさせ、助けを求めるようにその小さな手を伸ばそうとする。


 それに対して、もう一人のほうはといえば。


「ああ……っ!お嬢……いえ、キャプテン・サクラ様!

 その御名に相応しい、敵陣を蹂躙し、ゴミを見るような冷徹な眼差し……。

 まさに、至高を超えた『究極』ですわ……っ!」

 ……リナである。


 口を塞がれていないのをいいことに、彼女は縄の食い込みすら「ご褒美」と言わんばかりの恍惚とした表情で、頬を紅潮させていた。

 恐怖心なんて微塵も感じられない、いつもの全開バリバリな変態的称賛。


 泣きじゃくるミリィと、悶えるリナ。

 あまりにも対照的な二人の姿を目の当たりにして、あたしの心の中の「怒り」と「呆れ」の比率が、危険なレベルで混ざり合っていく。


 その背後で、ゾルグの部下がミリィの喉元に冷たい刃を突きつけた。


「さあ、どうするんだい?

 キャプテン・サクラさんよぉ!少しでも妙な動きをしてみろ。

 このガキの細い首がどうなるか、分かってるんだろうな?」

 卑怯者のテンプレみたいな煽りに、あたしは静かに目を伏せた。


(……さあ、どうしようかしらね?)


 正直、あたしの力なら一瞬でこいつらをなぎ倒せる。

 けれど、ミリィに指一本でも触れられるリスクは冒せない。


「分かったわ」

 あたしは手に構えた黄金のサーベルステッキを、前に放り投げた。


「ククク……ずいぶん物分かりがいいじゃねえか」

 ボスのゾルグが、下卑た笑みで表情を緩める。


 あたしが物分かりがいいですって?……はぁ?

 学校じゃ補習と赤点がお友達のあたしに向かって、よくもまあそんな冗談が言えたものね。

 それに、勘違いしているようだけど、はっきり言って、武器(ステッキ)なんてただのお飾り。

 あたしには、(これ)があるんだから。


 油断して、一瞬でも隙を見せなさいよ。

 全員まとめて、その顔面を「お掃除」してあげるから――。


 あたしが爆発寸前の怒りを拳に込めていた、その時だった。


「スズネ様ぁぁーー!!あなた様の第一の騎士、カイルが参りましたぞぉぉぉーー!!」

 突然、別の扉から場違いな絶叫が響き渡る。


 喚きながら突っ込んできたカイルは、「人間砲弾」の残骸で派手につまづいて激しく転倒した。


 一瞬。本当に、一瞬。

 敵の視線が、滑稽に転がったカイルへと釘付けになった。


 ……その隙、見逃すほどお人好しじゃないわよ!


 あたしは放り投げたサーベルを拾うことさえしなかった。


 ドンッ!! という衝撃音が遅れて聞こえるほどの、超速。

 地面を蹴った瞬間に距離を詰め、ゾルグの部下がミリィに突きつけていた右腕を、下から素手で跳ね上げた。


「が……っ!?」

 何が起きたか理解できず、間抜けに口を開けるゾルグの部下。


 宙を舞うナイフ。

 あたしはミリィを左腕で抱き寄せると、そのままの勢いで右拳を固く握りしめた。


 ――ここからは、あたしの時間よ。


 さらに、一歩。

 踏み込んだ床が魔力の余波で爆ぜ、あたしの体は文字通りの「残像」と化した。


 返す刀――ならぬ「返す拳」で、リナの背後にいた敵の横面に、目にも止まらぬ速さの右ストレートを叩き込む。


「がふっ!?」

 衝撃波だけで敵をまとめて数メートル先まで吹き飛ばすと、あたしはそのまま右脇にリナの体をひっ掴むように抱え上げ、一瞬で元の場所へと引き返した。


 瞬きをする間さえなかったはずだ。

 敵からすれば、あたしが消えたと思った次の瞬間には、左右に二人を抱えて涼しい顔で立っているように見えただろう。


「……っ、この、バケモノがぁッ!」

 ゾルグが引き攣った顔で叫ぶ。


 花の18歳に向かってバケモノとは心外ね。


 まあ、それはさておきーー。

「カイル!よくやったわ、お手柄よ!」


「は、はひっ!?

 転んだだけで何が起きたかよく分かりませんが……ありがたきお言葉にございます!」


 顔面を床に強打して鼻血を出しているカイルを、あたしは珍しく素直に褒めてやった。

 実際、あのマヌケな転倒がなければ、この隙は生まれなかったんだから。


「おねえちゃん……怖かったよぉ……っ!」

「ミリィ、もう大丈夫よ。怪我はない?......本当によく頑張ったわね」

 左腕の中、震えるミリィの頭を優しく撫でる。


 その一方で、右脇に挟んだままの「もう一人」はといえば。


「お、お嬢様……!

 脇の下に伝わるお嬢様の体温……そしてこの乱暴な扱い……っ!

 ああ、全神経が悦びに震えておりますわ……!」


「……リナはちょっと黙っててくれる?」


 脇に抱えた変態の頭をギュッと締め上げると、あたしはまだ立ち尽くしている敵の残党たちを、氷のように冷たい眼差しで射抜いた。


 さあ、お掃除の時間よ。


 あたしの羞恥心の分まで、まとめて地獄へ叩き落としてあげるから。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

本作、累計2,500PVを超えることができました!


正直、ここまで読んでいただけるとは思っていなかったので、

一話一話積み重ねてきたものを、こうして見てもらえているのが本当に嬉しいです。


これからも

笑えて、たまに真面目で、

そして相変わらず「変身が罰ゲーム」な物語を続けていきますので、

引き続きお付き合いいただけたら幸いです。

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