作戦の名は海の王
「……いい?まずは情報を集めるわよ」
あたしは皆を集めると、テーブルに手を突いて作戦会議を開始した。
「敵の本拠地、通称『元宝島』と呼ばれているアジトの場所を特定するのが先決よ。
上陸のための正確な海図も必要になるし、あと、ターゲットの名前も知っておきたいわ。
リナ、準備を――」
「お嬢様。海図ならびに宝島の正確な座標はこちらに。
ついでに潮流のデータ、首領ゾルグの経歴から誕生日まで――把握済みですわ」
あたしが言い終わるより早く、リナが懐から完璧に書き込まれた羊皮紙をスッと取り出した。
(……リナ、あんた一体いつの間に。怖いわ。有能すぎて逆に怖い!)
内心の戦慄を抑え込み、あたしは地図を指でなぞる。
前回の失敗は、あたしの力が目立ちすぎたことと、致命的な準備不足。
今回は二の舞にはならない。
「前回のように空を飛んで突っ込むのは論外。
目立ちすぎるし、狙い撃ちにされたら終わりよ。
かといって、普通の船で近づいても、アジトに届く前に沈められる可能性が高いわね……」
海賊のアジトなんて、守る側が絶対的に有利な地形に決まっている。
正攻法じゃ返り討ちにあうのがオチだ。
まあそれでも、なんとかなってしまいそうな気がしないこともないが、それはそれだ。
あたしが唸っていると、肩の上の毛玉がひょいと耳を動かした。
『じゃあさ、海中から行くのはどうだい?』
「海中から?あんた何言ってるのよ。
泳いで行けってわけ?溺れ死ぬわよ」
『あはは、まさか!そこで魔法道具の出番だよ。
こんなこともあろうかと思って入れておいたのさ。
ブレスレットの中に入っている「アクアシール」。
これを船に取り付ければ、船全体を魔法の膜が包み込んで、
そのまま水中を自在に進めるようになるんだ。空気も切れないし、水圧も無視できる。
これなら探知魔法にも引っかからないはずさ』
「あんた……最近、青い猫型ロボットみたいになってきてるわね……」
『心外だなあ。僕のは魔法道具だから問題ないよ』
アルがふんっと鼻をならす。
「……それ、本当に大丈夫なの?途中でパリンとかいって割れたりしないでしょうね?」
『僕を信じてよ。まあ、これを使うには「小さな船」が必要だけどね』
あたしはリナとカイルを見やった。
「……決まりね。まずは誰にも怪しまれずに徴用できる『小さな舟』を確保しましょう。
海賊の目を盗んで、海からカチコミをかけるわよ!」
「ーーお嬢様、船の手配につきましても、既に『ちょうどいい漁船』を確保してあります」
「……リナ、あんた最高よ。一生ついていくわ」
あたしが深々とため息をつきながらそう言うと、リナはどこか誇らしげに胸を張った。
あたしはビシッと地図を指差し、宣言する。
「これで作戦は決まったわ。
作戦名は――『プロジェクト・ポセイドン』。
海の底から忍び寄って、あのゴミ共を根こそぎ洗い流してやるわよ!」
「御意!」
「了解しました、お嬢様」
二人の気合の入った返事が、部屋に響く。
ポセイドン。
海の支配者の名を冠した、ちょっと格好良すぎるくらいの作戦名。
あたしの現代知識とアルのインチキ臭い魔法道具、それにリナの有能すぎる情報網を詰め込んだ、前代未聞の奇襲計画だ。
(……ま、実際は潜水艦ごっこなんだけど。名前くらいハッタリかまさないとやってらんないわよね)
こうして、あたしたちは、『プロジェクト・ポセイドン』を発動させたのだった。
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