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異世界★魔法少女― 転生初日に聖女扱いされましたが、変身が罰ゲームすぎます! ―  作者: もりやま みお
第2章 魔法少女は海賊の夢を見るか?【貿易都市ポルターナ編】
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マジカルクリーン大作戦

「イメージよ、イメージ……。

 隅々まで、徹底的にピカピカにするイメージ……!」

 あたしは自分に言い聞かせるように呟くと、半分ヤケクソで黄金のサーベルステッキを振り抜いた。


 直後、先端の宝石から暴力的なまでのピンクの閃光が放たれる。


 光は瞬時に収束して実体化し、薄く丸い「光の円盤」へと姿を変えた。

 その塊は、目に止まらぬ速さでピンクの軌跡を描きながら、通り道の汚れを根こそぎ消し去っていく。


 右へ左へ、壁から床へ。

 猛烈な勢いで往復を繰り返すと、数分のうちに地下水路は鏡のように磨き上げられてしまった。


「……地味すぎる。魔法っていうか、ただの自動掃除機ルンバじゃない……」


 いや、感心してる場合じゃないわ。


 床は綺麗になったけど、鼻をつくこの「地下水路特有の臭気」までは消えていない。

 あたしは再び、黄金のサーベルステッキを構え直した。


「……床の次は、この空気と水よ。

 とにかく、この不快な匂いと濁りを全部消し去るイメージ......」


 あたしがステッキを一閃させた瞬間、先端の宝石が脈動するように光り輝いた。


 直後、宝石を中心に猛烈な「吸引の渦」が発生した。


 狭い水路に澱んでいたドブ臭い汚気が、まるで巨大な掃除機に吸い込まれるようにズズズッ!と光の中に吸い込まれていく。


 そして、光の中で「何か」が処理されたかと思った次の瞬間、反対側から驚くほど透き通った空気が爆風となって吹き出した。


「わわっ!?風が強すぎ……っ!」

 まさに超高性能な空気清浄機の排気口の前に立たされた気分だ。


 凄まじい気流が狭い通路を吹き抜け、あたしのフリフリしたスカートを容赦なく捲り上げる。


「きゃっ!?ちょっと、この風止めて……っ!」

 必死に手でスカートを押さえるあたしの横で、なぜかリナが神妙な面持ちで膝をつき、祈るように両手を合わせていた。


「……おお、これぞ浄化の奇跡。

 お嬢様の放つ聖なる風に舞う、桃色の聖域……。

 このリナ、一生の宝として、この光景を目に焼き付けましたわ」


「あんた、毎回何してんのよ!!」

 あたしの怒号も、ゴーゴーと鳴り響く空気清浄の爆風にかき消される。


 そうしている間にも、浄化の余波は足元の水路にまで及んでいた。


 濁った泥水が光の粒子に触れるたび、不純物が消滅し、一瞬で底まで見通せるほどの透明な水へと書き換えられていく。

 爆風が収まったあと、そこには鏡のように磨かれた床と、水晶のような清流、そして肺の奥まで洗われるような完璧な空気が残されていた。


「……地味にハイテクなことになっちゃったわね」


 あたしは新品の空気で満たされた地下水路で、捲れたスカートを整えながら、深いため息をついた。


 ふと、その透き通った水底で、何かがキラリと反射した。


「ん?あんなところにゴミが。これじゃ『完璧な清掃』にならないじゃない」


 あたしはサーベルの先で、その「泥が落ちて不自然に輝きだした古い金属の棒」を拾い上げた。


 奇妙な意匠が施されているけれど、今のあたしにはただの掃除の残骸だ。


「はいはい、不燃ゴミね」

 あたしはそれを、海賊服の大きなポケットに無造作に放り込んだ。


「……はぁ。やっと、やっと終わったわ。変身解除(ディアクティベート)!」

 光と共に、あの重苦しいドレスも帽子も消え去り、あたしはようやくいつもの姿に戻った。


 解放感に浸りながら、あたしたちはギルドへの報告を済ませ、宿へと続く細い路地を歩いていた。


 だけど、あたしは気づいていなかった。

 ギルドでミリィを連れていた姿が、奴隷商の息がかかったものたちの目に「高級な商品」として映ってしまっていたことに。


「おい、止まれ。……そのガキをこっちへ渡してもらおうか」

 路地裏の影から、禍々しい殺気を放つ男たちが五人、あたしたちを包囲するように現れた。


「あ……ああ、あのおじさんたち、ミリィを……」

 隣で、ミリィの体が恐怖でガタガタと震えだす。

 あたしは震える彼女をそっと、けれど力強く抱き寄せた。


「……うちの妹になにか用かしら?」

 腕の中のミリィを優しく包み込みながら、あたしは冷ややかな視線で男たちを射抜いた。


 その低い声に合わせて、二人の従者が静かに一歩前へ出る。

「リナ、カイル。邪魔よ。片付けて」


「御意」

「はっ!」


 それは戦闘と呼べるものでもなかった。

 カイルは抜剣すらしない。

 鞘に収めたままの剣で男たちの鳩尾みぞおちを正確に突き、瞬時に三人を悶絶させる。

 残る二人が怯んだ隙に、リナが影のように踏み込み、手刀一つで意識を刈り取った。


 わずか数秒。

 地面に転がる男たちを見下ろしながら、あたしは「さ、帰りましょうか」と歩き出そうとした。


 その時。あたしの裾を掴むミリィの手に、指先が白くなるほどの力がこもった。

 ミリィは地面に倒れた男たちと、それを一瞬で退けたカイルたちの背中を、何度も交互に見つめていた。

 まるで、今見た圧倒的な強さを信じていいのか確かめるみたいに。


「……おねえちゃん」

 震える声だった。ミリィは顔を伏せ、必死に言葉を絞り出そうとしていた。


 あたしが屈みこんで目線を合わせようとすると、ミリィはバッと顔を上げた。

 その大きな瞳からは、溜まっていた涙が溢れ出していた。


「おねえちゃん、お願い……っ!

 まだ、あの中に……暗くて、冷たいところに、みんなが残ってるの!」


 その必死な瞳を見て、あたしは悟った。

 この子は自分だけが助かったことをずっと悔やんでいて、今のカイルたちの強さを見て、ようやく希望を見つけたんだって。


「ミリィのお友達……みんなを、助けて……!

 おねえちゃん、お願い!!」


 あたしは天を仰いだ。

 目立ちたくない。平穏に過ごしたい。大司教から逃げ切りたい。

 あたしの脳内にある「安全第一プラン」が、ミリィの涙という決定打によって粉々に砕け散っていく音が、はっきりと聞こえた。


 それと同時に沸々と怒りが湧き上がる。

 ミリィはもうあたしの妹だ。

 妹を泣かせるやつはなんであろうと赦しはしない!


「わかったわ。……やるわよ、リナ、カイル。

 あたしたち『桃色海賊団(ピンクパイレーツ)』は、これより奴隷商人から奴隷を開放し、

 ミリィの仲間たちを救出する!」


 うちの妹を泣かせた奴らに、たっぷり後悔させてやる。

 この街のゴミ掃除の始まりよ!


 あたしが掲げたのは、誰よりも不本意で、そして誰よりも輝かしい『桃色』の反旗だった。

いつもこの作品をお読みいただき、ありがとうございます。


スズネたちのふざけたドタバタ劇を

引き続き楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。


少しでも面白いと思っていただけましたら、

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